ナラティブなスタートアップたち:エンパワメントの力(1/2)

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Photo by Jopwell from Pexels

ナラティブなスタートアップたちはスタートアップPRのケーススタディを伝えるシリーズです。毎週金曜日の公開取材の内容を会員向けCanvasにまとめていきます。スタートアップの広報・PRに関わる方で話題をお持ちの方はこちらのDiscordにご参加ください

スタートアップPRの強い武器「ナラティブ」

ここ2、3年、スタートアップPRの考え方にもナラティブというキーワードを耳にすることが増えました。一方、この言葉を説明すること、因数分解することは容易ではありません。

自分たちが「こうだ」と押し付けるのではなく、人々が共感して「こうなんだ」と自然と語りだす、このやさしい空気感のことを示すものなのですが、どうしても定性的な側面が強く、境界線は曖昧です。特に計画的な成長を求められるスタートアップにとっては変数が多すぎて扱いづらいものになります。

ただ実はこの「ナラティブ」、スタートアップには本質的に備わっている要素のひとつでもあります。正しく理解して日々のPR活動につなげることができれば、スタートアップにおける説明コストを劇的に下げる「魔法の言葉」になるかもしれません。私はこれこそ「認知ゼロ」のスタートアップのPR活動において最も重要な要素になると考えています。

本稿では「参加できるBRIDGE」の一環として開設したDiscordのコミュニティに参加してくれたスタートアップPR・広報の方々の力を借りて、このケーススタディをまとめてみることにしました。

ここで語られているスタートアップは存在意義が明確であり、かつ、プロダクトが革新的(もしくは人と企業にやさしい)であり、人々が語りたくなる物語を生み出す存在でもあります。

では最初のケーススタディからご紹介していきましょう。

エンパワメント

と、その前にひとつ、スタートアップをナラティブたらしめる要素としてエンパワメントの活動を挙げさせてください。なお、ナラティブについて体系的に理解したいという方は、戦略PRなどで知られる本田哲也さんが「ナラティブカンパニー(東洋経済新報社)」をここ最近上梓されているので、そちらをご一読いただくとより理解が深まると思います。

さて、このナラティブカンパニー。人々が語りたいと思わせるスタートアップの事例として次のようなものがあります。

  • メルカリやフリル(現在のラクマ)、BASEやSTORESは個人や小さな事業者のデジタル化を進めた
  • CAMPFIREやREADYFOR、Makuakeは資金集めの民主化を支援した
  • 食べチョクはコロナ禍で打撃を受けた産地を駆け巡った

もちろんまだまだ沢山あります。共通するのはどれもインターネットの力を使って小さな力を集め、困った人たちをエンパワメントした、ということです。特にこのコロナ禍においては困った人たちが世に溢れました。

CAMPFIREとKDDIは協力してクラウドファンディングの手数料を徹底的にゼロ円にしました。通常、決済にかかる手数料は代行会社に支払うコストの部分なので、実質的に持ち出し分まで負担した形です。食べチョクを創業したビビッドガーデンの秋元里奈さんは毎日のように打撃を受けた産地の方々に寄り添って息をするかの如くツイートしています。

これらの物語は今も現在進行形で続いています。

彼らはスタートアップとして、どちらかというと支援されるべき小さな対象です。その人たちが声を上げて困った人たちの代弁者となり声をあげる姿には多くの共感が生まれ、行動につながります。ナラティブはこうした彼らの活動をきっかけとして生まれる「語りたくなる空気」のような存在なのです。

そして重要なのはそのエンパワメントの活動が自分たちのミッションやビジョン(ナラティブの教科書的に言うとパーパス)と合致し、かつ、プロダクトがそこに連動することになります。つまり、人々をエンパワメントする活動そのものが声を生み、評判を広げ、プロダクトが躍進する源泉ともなるのです。単なる寄付などの支援活動とは異なる点でもあります。

では、ここからエンパワメントをキーワードに、スタートアップPRの文脈でケーススタディや考察をお伝えしていきたいと思います。最初に取り上げるのは10Xの福利厚生「10X Benefits」です。(後半につづく)

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