家計簿プリカ「B43」、後発スマートバンクの勝ち筋はどこに

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先週金曜日に発表があった家計簿プリカ「B43(ビーヨンサン)」について、会見で同社代表取締役CEOの堀井翔太氏が語った内容を元に、彼らが後発ながらどのようにして勝ち筋を見出しているのか、また、彼らが見据えているビジョン・未来について私見・考察含めてまとめてみたいと思います。報道発表とサービスの概要についてはこちらの記事を参照ください。

競合に劣る機能、なのに高いユーザー評価のワケ

家計簿プリカ「B43」が提供するのはVisaプリペイドカードを使った家計簿管理サービスです。Visaで支払いができるので特に首都圏の日々の生活費についてはほぼカバーされていると考えて良いでしょう。会見でも利用されている場所の51%以上がスーパー・コンビニということでしたので、カード経由の明細は詳細に記録されることになります。ちなみに現金利用の記録はできないので相当に割り切った仕様です。

家計簿アプリはご存知の通りかなり前から先行しているプレーヤーが存在していて、主なものとしてマネーフォワードMEやZaim、Moneytreeなどがあります。ただ、Visaプリペイドカードと連動したものはkyashと三井住友銀行のかぞくのおさいふがあり、B43含めて今回、発表された家族で利用できる共用口座の開設が可能になっています。

機能面での大きな違いとしては入金面があり、銀行口座の紐付けを前提としているkyash・かぞくのおさいふは、連携している口座からの振替がスムーズで、プリペイドカードの宿命とも言える「チャージ」で使い勝手がやや異なります。

また、支払いについてもkyashやかぞくのおさいふはApple Pay・Google Payに対応するなどスマホでの非接触利用ができるようになっていたり、ポイントバックや他のポイントを支払いに回せるなど、やはり長年サービスを提供している分、ユーザー提供体験には一日の長があります。

Kyashはポイントを活用できるなど機能面で充実している

私の家族も家計管理で試行錯誤した経験があり、B43について尋ねてみたのですが入金チャージで口座を紐づけられない点がマイナスと評価していました。これは後述しますが利用シーンがやや異なることが理由としてあって、チャージを頻繁にする場合には手間に感じてしまうようです。

じゃあB43は他と比較して使えないのか、というと全く様子が異なります。会見に先立ってアプリ(iOS)の評価を見てきたのですが、4.3とユーザーからは好意的なフィードバックが多かったのです。この理由について堀井さんは自分たちが描いている正しいユーザーに正しく届いたからでは、と回答していました。

では、彼らは誰の何を解決したのでしょうか。

N1インタビューで浮かんだ「封筒家計簿」ユーザー

少し話を戻します。堀井さんたちはB43を生み出すため、当然ながらMoatを強く意識して臨んでいます。この戦略論についてはDCMベンチャーズの原健一郎さんの論がすばらしくそちらの一読をお勧めしますが、後発企業が加熱する成長市場に参入する際に考えるべき差別化の方法、といったところでしょうか。

B43がチャレンジする市場はズバリ「キャッシュレス社会」です。現金が色濃く残る日本は、今後のデジタル化によって個人の家計管理に課題が出てくることが予想されます。というのも、デジタルとアナログの併用は相性が悪く、会見でも今回のコロナ禍によってECやデリバリーなどのデジタル決済が増えた結果、現金中心の家計簿を付けていたユーザーは支出管理が難しくなったという調査結果を報告していました。

会見で示された封筒家計簿のデジタル化におけるペインがポケットにつながる

コロナ禍によって一気に進んでしまったキャッシュレス社会におけるユーザーペインを見つけ出したのが、B43が実施したN1インタビューの方法です。複数のアンケートではなく1人のユーザーに深堀してシーンを聞き出す手法で、これにより、B43は多数の家計簿アプリが存在する中にあって、まだ解けていない課題を発見していきました。

彼らが発見した課題を機能に落とし込んだもののひとつが「ポケット」機能です。これは他のプリカ系家計簿管理サービスにはない、B43独特の機能で、ユーザーはあらかじめ決めておいた使途(旅行や食費、ファッションなど)に応じて予算を分配することができます。

これは古くからある封筒家計簿の再現で、実は私も20代の時に愛用していた方法でした。クレジットカードなどの後払いはどうしても使ったタイミングと引き落とされるタイミングがズレるので使いすぎに繋がってしまいます。一方、この方法であれば入っている現金以上は使えないのでシステム的に使いすぎを防止することができる、というわけです。しかしデジタル決済が増えた今、この方法が使いづらくなっているというペインが発生しているのです。

Moat攻略の考え方のひとつとして、非常にニッチではあるが高いユーザー熱量を得られるプロダクトで一点突破を狙うというものがあります。(こちらは令和トラベルの篠塚孝哉さんの考察が素晴らしく整理されています)

B43は前述した口座の紐付けをあえて「しない」選択肢を取っています。私のようなユーザーはやや不便と思いつつ、封筒家計簿のように月に一回、決められた予算を入れるような利用シーンであれば全く問題になりません。逆に口座を紐付けすることの方が面倒だったり、もしくはよく分からないサービスに連携させる不安など、別の課題があったのかもしれません。

B43は口座紐付け「しない」ことをウリにしている

いずれにしてもかなり、相当に厳しくユーザーを絞り込んで高い熱量を狙った戦略がぼんやりと見えてきます。思えば堀井さんたちが最初に大きくヒットさせた元祖フリマアプリ「FRIL(現・ラクマ)」も特定の女性をターゲットにし、サービス公開からしばらくはユーザーに男性を全く入れないという徹底ぶりでした。

ビジネスモデルと今後の戦い

堀井さんの会見を通じ、後発であるB43、スマートバンクの立ち上がり戦略がゆるやかに見えてきました。キャッシュレスという成長市場を選択し、ユーザーを徹底的に洗った結果、他社がまだ手をつけていない熱量の高いペインからひとつずつ攻略していく。

一方でこれらのユーザーはMoat攻略を一緒にやってくれる「最初のファン」であって、本当にビジネスとして広がりはその先にあるユーザー層になるのは間違いありません。ここからは私の考察ですが、同社の社名が「スマートバンク」である通り、彼らはおそらく主に欧米で広がったチャレンジャーバンク・ネオバンクの領域を目指しているのだと思います。

代表格のひとつで国内にも参入しているRevolutはつい先日、ソフトバンク・ビジョンファンドなどから8億ドルの資金を調達しています。また、国内では気になる動きとしてGoogleがメタップス傘下のpringを買収し、国内における金融事業を加速させるとしています。Googleはこれに先立って米国金融機関と連携したモバイルファーストな銀行サービス「Plex」も発表しています。

もう少し視野を広げて決済について言えば、国内はLINEとPayPayを傘下に持つZホールディングスが経営統合するなど、決済方面から全てを飲み込むダイナミックな動きもあります。ちなみにPayPayの技術基盤であるインド決済大手Paytmは22億ドル規模を調達するIPOを報じられていました。直近の評価額は160億ドル(CB Insigthts・1.76兆円)です。

資産管理についてはロボ・アドバイザーのWealthNaviが1800億円ほどの評価額(記事公開日時点)を付けていますし、後払いモデルも魅力的です。この分野の草分けであるAffirmや、スウェーデン発のKlarnaなどが主力プレーヤーですが、つい先日、Appleもこの分野のサービスが報じられるなど、混戦模様になってきています。

国内におけるチャレンジャーバンクやデジタル決済は海外と異なり送金ニーズが弱い、現金が強いことなどから立ち上がりを疑問視する声があったのは事実です。過去にはAnyPayがこのテーマにチャレンジして撤退しています。

しかしスタートアップはタイミングです。コロナ禍で大きく生活様式が変わった今、アーリーアダプター層で留まっていたキャッシュレス生活組がその次のマジョリティに広がるかどうか。スマートバンクが初期に大きく調達した資金をどのように使ってくるのかという点にも注目しています。

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