B Dash Camp 2022 Fall in 福岡のPitch Arenaは、レガシー業界向け現場遠隔支援ツール「SynQ Remote」のクアンドが優勝 #bdashcamp

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Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、10月19〜21日に開催されている B Dash Camp 2022 Fall in Fukuoka の取材の一部。

札幌で開催中のスタートアップ・カンファレンス「B Dash Camp 2022 Fall in Fukuoka」のピッチコンペティション「Pitch Arena」には書類審査を通過した16社のスタートアップが予選に登壇、このうち7社がファイナリストに選ばれた。決勝では、レガシー業界向け現場遠隔支援ツール「SynQ Remote」のクアンドが優勝した。

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Pitch Arena ファイナルラウンドの審査員を務めたのは、

  • 青柳直樹氏(メルカリ 上級執行役員 SVP of Japan Region)
  • 清明祐子氏(マネックスグループ 取締役 代表執行役 Co-CEO 兼 CFO)
  • 武田純人氏(野村證券 企業戦略開発部 主任研究員)
  • 平尾丈氏(じげん 代表取締役 社長執行役員 CEO)
  • 宮田昇始氏(Smart HR 取締役ファウンダー)
  • 吉田浩一郎氏(クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO)
  • 渡辺洋行氏(B Dash Ventures 代表取締役 兼 CEO)

……の7人の皆さん。

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スポンサー賞として、Pitch Arena 参加者全員に、バクラク経費精算半年無料( LayerX 提供)、ファイナリスト全員に、ノビシロ1回無料(ノバセル 提供)、サッポロエビスビール3ヶ月分(AGS コンサルティング提供)、ディズニーペアチケット(テコテック提供)、HiPro Direct 3ヶ月間無料利用権(パーソルホールディングス 提供)、全国百貨店共通商品券1万円分、富士山祝盃(KPMG あずさ監査法人提供)、振込手数料1年間無料(上限50回/月、あおぞら銀行・GMO あおぞらネット銀行提供)、fincode by GMO クレカ決済金額累計500万円分まで手数料キャッシュバック + ギフトカード1万円(GMO ペイメントゲートウェイ 提供)が贈られた。

本稿では、ファイナリストの顔ぶれとピッチの様子をランダウンしてみたい。

【優勝】【AGS 賞】SynQ Remote by Quando

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<優勝副賞>

  • Fukuoka Growth Next コワーキング1年間利用権(福岡市提供)
  • オリオンビール1年分(野村證券提供)
  • サッポロエビスビール1年分(AGS コンサルティング提供)
  • HiPro Direct 1年間無料利用権(パーソルホールディングス 提供)
  • ヴィラージュ伊豆高原 5名2泊 or 10名1泊 宿泊権(住友不動産提供)
  • Echo Show 8(Amazon Web Services 提供)
  • NewsPicks Studio 優勝インタビュー取材・動画撮影・NewsPicks 公式 YoouTube チャンネルオンエア・NewsPicks 番組出演交渉権200万円相当(電通提供)
  • fincode by GMO クレカ決済金額累計1,000万円分まで手数料キャッシュバック +
  • ギフトカード3万円(GMO ペイメントゲートウェイ提供)
  • 歩行センシングインソール「A-RROWG」一足セット・「カラダケア」利用指名料付10回分(日本電気提供)
  • 富士通ゼネラル 加湿除菌脱臭機「プラズィオン(DAS-303K)」(富士通提供)
  • Google Pixel 6(Google Cloud 提供)
  • マルイ商品券10万円分(丸井グループ 提供)

<AGS 賞副賞>

  • 無償コンサルティング(AGS コンサルティング提供)

レガシー業界の現場では多くの技術者が働いているが、現場でトラブルが発生したり、解決策が見出しづらい課題に直面したりすると、彼らは先輩、すなわち、熟練技術者に頼ることになる。しかし、多くの現場では労働人口の高齢化も影響して熟練技術者の数は限られ、彼らは複数の現場からエスカレーションされてきたリクエストに応じるべく東奔西走することを余儀なくされる。かくして現場は課題を解決するまでに時間を要してしまい、熟練技術者は疲弊して、場合によっては辞職していってしまう。技術や技能の承継がうまくいかなければ、その企業の将来も危ういものとなってしまうだろう。

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Quando の「SynQ Remote」は、このような〝現場〟に最適化された「レガシー業界向けの Zoom」と言えるだろう。ビデオ通話でも十分に伝わるのではないか、と思う読者もいるかもしれない。例えば、何かの課題があり、バルブを閉めるという作業を熟練が若手に指示する場合、両者が現場に居れば相互のコミュニケーションに問題は生じにくいが、遠隔の場合、果たしてどのバルブを閉めるのか、間違いの無いように明確に伝えることは難しい。想定されていない問題も起こるため、事前にトラブル対処のマニュアルを徹底しても不十分だ。そこで、SynQ Remote では現場で撮影した画面を共有し、そこに熟練が遠隔で図や文字を書いて説明できるようにした。

<関連記事>

【準優勝】【野村賞】【UPSIDER 賞】Actaba & Detaba & Sagri by Sagri

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<準優勝副賞>

  • サッポロエビスビール半年分(AGS コンサルティング提供)
  • HiPro Direct 半年間無料利用権(パーソルホールディングス 提供)
  • ヴィラージュ伊豆高原 5名1泊 宿泊権(住友不動産提供)
  • マルイ商品券5万円分(丸井グループ 提供)
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<野村賞副賞>

  • Go Global! 野村 SRI イノベーションセンター@Menlo Park へ招待2名(野村證券提供)

<UPSIDER 賞副賞>

  • カード決済に使えるポイント10万円分(UPSIDER 提供)

SAgri は衛星データにより土壌の状況(腐食含有量)を、また、農家からはスマホアプリから農作物や品種などの情報を取得し、ブロックチェーンを用いてデータベース化。これらを組み合わせることで、収穫量につながる情報を的確に取得するほか、生物性・化学性・物理性の観点から農家に対して土壌改良の提案も行う。実際に取得した土壌データと腐食含有量のマクロデータを元に、農地を評価するスコアリングの仕組みを開発している。

これまでにも土壌の窒素含有量を実測する方法はあったが高コストだった。衛星を使うことで安価な計測を実現、小麦・米・サトウキビに特化して、畑の状況に応じた収穫予測をしたり、肥料の必要投入量などをアドバイスしたりすることが可能だ。インドではこれらの情報を現地金融機関に提供することで農家への融資の実行を促したり、日本では政府のプロジェクトとして耕作を再開できるかどうかの休耕田の状態を見極めるのに活用されたりしている。

【テコテック賞】紡ネン(つむぎねん) by Pictoria

<テコテック賞副賞>

  • 富士サファリパーク 宿泊付ペアチケット(テコテック提供)

Pictoria は2020年から AI VTuber「紡ネン(つむぎねん)」を運営している。一般的に VTuber(Virtual YouTuber)は、演じ手や声優(なかのひと)が存在し、インターネットを介したファンとのやりとりでパフォーマンスを展開するが、AI VTuber ではこの受け答えがチャットボット化されている。VTuber のファンの中には、自分の推し VTuber を思ったように行動させようとする人がいて、行動を指示・強要されることでストレスを感じる「なかのひと」も少なくなく、中には辞めてしまう人もいるそうだ。

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VTuber が AI 化されることで、VTuber のマネジメントコストが極小化され、24時間の運用も可能になる。ファン個人個人の好みに合った紡ネンを作り出すことさえ事実上可能だ。Pictoria では6月にも紡ネンをテーマにした NFT 3,000個の販売を開始する計画(プロジェクト「NEN」)。NFT 一つ一つには、紡ネンの好みやバックグラウンドといったプロパティを設定できる権利が付与されており、ファンは NFT を購入することで、紡ネンを自分好みの女性へと書き換える権利を入手できる。NFT は二次流通も可能だ。

<関連記事>

【ノバセル賞】Scanat by nat

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<ノバセル賞副賞>

  • ノビシロ12回無料(ノバセル提供)

日本では40.6%もの人々が住居のリフォームを経験しており、全国では毎日1万件のリフォームが実施されている。注文主は相見積もりも取るので、リフォーム1件に対してその3倍量以上の見積が作成されている。しかし、見積を作成する工程は厄介だ。営業担当者以外にも現場施工のプロら巻き込んで現況図や計画図を作成する必要もある。見積もりを1件作成するのに、5万円以上のコストと2週間以上の時間がかかることになるが、施工会社は受注前なので、見積もりに関わる一連の作業は無料で提供している。

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見積もりでは計測が必要になるが、2次元計測や3次元計測において、これまで便利なツールが無かった。nat が開発した iOS アプリ「Scanat」は、スマートフォンかタブレットを使って、誰でも簡単に計測できる計測アプリだ。LiDAR センサーとカメラにより、点群データと深度写真を取得、作成されたデータから独自アルゴリズムで計測精度を向上し、実測値との誤差1%以内を実現している。ローンチから9ヶ月で100社が利用中。将来は、コンシューマ向けのリフォーム関連プラットフォームにも進化させる。

Symview & Kakarite by LAYERED

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日本では、医療において、医療の DX(デジタルトランスフォーメーション)とかかりつけ医が推進されている。高齢化社会が進むにつれ医療費が膨れ上がる中、政府は医療提携体制を治療を中心とした「キュア」から重症化予防する「ケア」へとシフトさせようとしているのだ。例えば、人工透析にかかる医療費は1.5兆円かかっているが、人工透析患者の4割は糖尿病の重症化が遠因だ。さまざまな疾病の重症化する前の患者を診られるのはかかりつけ医であり、彼らの役割は極めて重要なものとなる。

しかし、クリニックの医師は忙殺されている。平均的なクリニックには1万人の担当患者がいて、1日80人が来院するが、医師は診療よりも、その診療のデータを記録することに忙しく、そのデータは分析できるような情報にはなっていない。LAYERED の Web 問診「Symview」と PRM(医療版 CRM)「Kakarite」はデータ収集を自動化し、医師がデータを活用しやすくする。症状から治療効果までを一貫して捕捉できるため、医療機関向け SaaS としてのみならず、製薬会社向けのデータ販売事業も始めている。

Yucleaner by Yuimedi

医療データの流通が促進され利活用が進めば、患者により適した治療が提供できたり、新薬の開発に向けた研究が進んだりする効果が期待できる。しかし、実際にはデータの利活用は進んでいない。その理由の一つは、医療現場においてはデータの入力形式が整理されておらず構造化されていないからだ。データをクレンジングするには ETL ツールが存在するが、医療従事者が使うには操作難易度が高い。そこで、Yuimedi では、医療データに特化した AI ノーコード ETL ツール「Yuicleaner」を開発した。

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実際に、新型コロナウイルス関連の医療データを医療従事者が整理していた作業時間を、Yucleaner 導入で500分の1に短縮できた事例があるという。データ保有者(病院など医療施設)に対してはデータ量や設定数に応じた従量課金で、また、その統計情報を預かってデータ利活用者(主に製薬会社やバイオ企業)に販売するデータマート運営やマッチング手数料でマネタイズする。データ保有者にとって、現場の労働効率化に加え、共同研究費を増やしたいことが Yuicleaner 導入のモチベーションになっているそうだ。

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