リアルとバーチャルで子供たちを魅了、レゴジャパンとリトプラの共創はどのように実現したか

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

ブロックトイでお馴染みのレゴジャパンと、次世代テーマパーク「リトルプラネット」を運営するリトプラ(旧社名:プレースホルダ)が協業し、新たなデジタルアトラクションを2022年9月29日(木)~10月31日(月)の期間限定で提供しました。一部地域ではテレビCMも放映されているため、読者の中には、この協業について見聞きしたり、実際に現場を子供達と訪れたりした人もいるかもしれません。

手で触って考えながら遊べる、リアルの象徴とも言える知育玩具を展開してきたレゴジャパンと、それとは対極的にバーチャルな遊戯体験を子供達に提供するリトプラは、どうして協業することになったでしょうか。その背景、これまでの成果、今後の展望について、両社の担当者に話を伺ってみました。

<話し手>

  • レゴジャパン シニアブランドマネージャー 橋本優一氏
    2019年入社。「Rebuild the world – 創造力が、世界を変える」キャンペーンを含む、ブランドキャンペーン及び日本市場のレゴブランド製品のマーケティング、ブランド担当。
  • リトプラ(旧社名:プレースホルダ)取締役CCO 鈴木匠太氏
    2016年に創業メンバーとして入社。1984年東京都生まれ。同社の開発する次世代型テーマパーク「リトルプラネット」のクリエイティブを総指揮する。

まず、このアトラクションの仕組みですが、子供達が作ったレゴ ブロックがスキャナーで取り込まれて大画面で躍動感たっぷりに動き、最後はその写真を撮れるという仕組みを両社で作られたと理解しています。

橋本:はい、その通りです。補足させていただくと、レゴグループとしては、毎年、この時期にグローバルでキャンペーンを展開しています。そういう機会を通じて「レゴブロックっていいな」「久しぶりにやってみたいな」「初めてだけど、やってみたいな」ということを想起してもらえるよう、全世界で基本的には同じコミュニケーションメッセージのもとでキャンペーンを展開しています。

今、レゴグループは130カ国ほどで展開させていただいていますが、各国でビジネスオブジェクティブ(事業注力領域)やチャレンジ(課題点)は異なります。日本では、レゴ ブロックの躍動的なところ、革新的なところを訴求していきたいというのが目下のチャレンジです。製品はご存知の通りブロックなので、そのままでは広がり感が限られています。リトルプラネットさんのことは以前から存じ上げていましたし、一緒に取り組んでみると面白いのではないかとお声がけさせていただきました。

全くやったことのない世界でしたが、鈴木さんにはいろいろと尽力いただき、「1回作ってしまうと終わり」だったレゴ ブロックが、その後、動き出す体験をもたらすという、素晴らしい施策を提案していただきました。この施策は他の国ではもちろんやっていませんので、日本限定の展開であり、リトルプラネットさんがいたからこそ、実現できたことです。

技術的な課題はありましたか? 以前からリトルプラネットで展開されているデジタルアトラクションの仕組みが元になっているのですか?

鈴木:元からある仕組みをベースにしつつ、スクラッチで開発しました。子供達が創ったレゴ ブロックをスキャンして、デジタル上でそのまま表示するところが結構難しくて、最後の最後まで調整を続けましたが、一部のブロックで使えないものもできてしまいました。子供の創造力を考えると、どんなブロックでもスキャンできてそれが表示されるようにしたかったのですが、そこまで持っていくにはもう少し時間が必要でした。

子どもたちの反応は非常に良いと感じます。今はまだパークの上限来場者数にまでは至っていないものの、多くの人に来ていただいているなという印象はあります。

橋本さんは、現地でご覧になられていかがでしたか? 企画は、両社でどう進められましたか?

橋本:何度も体験させていただき、リモートでも鈴木さんとお話させていただきながら作っていったのですが、スクリーン上での細かい表現とかを相談させていただいて、「実際に現場ではこんな感じなんだ」「本当に動いてる」という感じでした。一般消費者としての驚きしかなかったですね。本当に短期間で、こちらの言いたい放題に対応いただいたんですよね。

リトルプラネット様と取り組ませていただく上で、声をかけさせていただいた基準の一つが、我々単独ではできない革新性をどう実現するかということでした。製品の軸を超えて、ブランドをアップリフトするような革新性のあるところに、どういう技術がお子様との親和性があるのかということをご相談させていただきました。

鈴木:そうですね、お話をいただいたのが7月末で、スタートしたのが9月末でしたから、すごいスピード感でした。我々はスタートアップですが、グローバルカンパニーのレゴジャパンさんの方がよっぽどスピード感があると感じました。他に進めさせていただいているプロジェクトと比べても、ものすごいスピードでいろいろ決まって進んでいくな、と。

橋本:一つ印象に残っているブレークスルーのポイントがあるんです。お子様が作られたものをスキャンし、それが投影されること自体すごいことなんですが、現代のお子様はゲームの体験などからそういったことに非常に慣れていらっしゃるので、お子様に驚きを持って楽しんでもらえるだろうか、という不安がありました。実際、お子様はレゴ ブロックで、とんでもないものを作られるんですよ。

お子様の表現の幅を狭めたくない。スクリーンの限られた枠の中で、どれだけ表現してあげられるだろうか、というところが一番苦労した点でした。そこで、空中、水上、水面下と、表現する空間に3つの選択肢を設けたんです。これにより、お子様がどんなものを作っても「君が作ったものが、ここで動き出すんだよ」と選択肢を与えることができ、我々の施策にとってブレークスルーでした。

プロジェクトがスタートしてからの2ヶ月間、システムを開発するエンジニアの方や鈴木さんと一緒に、レゴ ブロックが持つ「自由さ」は失わずに遊びに必要な「ルール」を設定していくという難しい調整を繰り返してきました。自由と制限のバランスをうまくとってアトラクションを作り出すという点は、非常に勉強させてもらったと思っています。

レゴ ブロックをスキャンしている様子

レゴジャパンは、これまでにもスタートアップとの取り組みや関わりを実施されてきたのでしょうか?

橋本:はい。まずパートナーシップという観点では、イベントなどの施策も多くさせていただいてるんですが、我々にとっては、組む相手がスタートアップがどうかは、実はあまりポイントではないんです。基本的に、誰と組むのが最善なのかという議論がポイントなんですよね。ただ、そのスタートアップとして組んだ例はレアだと思います。

我々はグローバルカンパニーということもあって、どういう実績があるかとか、特にお子様というセンシティブな存在をターゲットにビジネスをしているので、安全性は大丈夫かとかいうことはかなり厳しい観点で見ています。そんな中でリトプラさんとの取り組みが非常にスムーズに進んだのは、既にビジネスをされていて、お子様を向いてビジネスをされる上での考え方が非常に近かったからです。

我々と共通した価値観をお持ちで、それは、私が特に個人的にグローバル(レゴグループ本社)に対して説得した際に有効でした。もし、リトプラさん以外の会社と組んでいたとしたら、多分、この期間でここまでスムーズに事を進めるのは難しかったかなと思います。

先程も、現代の子供達はデジタルなものに慣れ親しんでいるという話がありました。日々、MinecraftやRobloxのような世界観の中で遊んでいて、リアルなものを外に出て触らない、という声もあるかもしれません。レゴさんはずっと同じ価値観を守ってビジネスをされていますが、そこにはどのような会社としてのこだわりがあるのでしょうか?

橋本:レゴグループは、今年90周年のブランドなんです。その長い間、実は製品としてはあまり変わってないんです。ですので、90年前に作られたレゴ ブロックが残っていれば、それを引っ付けて遊ぶことができます。非常に素晴らしいなと思うんですが、変わってない価値としては、子供のためにどうするか、ということで、これも90年間全く変わっていません。

長い間にはビジネスがうまくいかなかった時代もあるんですけど、その時は、子供の方は向いていたけれども本質的なところから少し離れていた、というのが社内のオープンなラーニングです。そこからかなり振り切って、90年前にやっていたことを今でも地道にやっています。しかし、我々の商品群を見ていただくと、実はすごく数が増えてます。IPパートナーさんとのコラボレーションもそうですし、我々はパッションポイントと呼ぶんですが、関心を持ってもらえないレゴ ブロックのシリーズは多分無いと思います。鋭意拡充しています。

一方、我々レゴブランドはご存知の黄色のブロックのイメージが強くて、その先にあるレゴ®スーパーマリオ™とか、今回のリトプラさんとの施策をやっているとか、奥の方までは入ってこられないお客様が非常に多いんです。強大な看板があるからこそ、奥まで入ってこられない。「レゴ ブロックのことはもう知っている」と思っていらっしゃる方が多いから、今回のような革新的なことをしないと入ってきてもらえないというのが課題です。ですから、リトプラさんとの共創は、我々にとっては大変重要な施策になっています。

実際にレゴ ブロックが画面に映し出されている世界

リトプラさんは、レゴジャパンさんに共感される部分はありましたか?

鈴木:「遊びが学びに変わる」というのがリトルプラネットのコンセプトですが、レゴジャパンさんも同じく、遊びが入り口になるという点が本当に同じだなと思いました。そうして、レゴ ブロックで遊んでいく中で夢中になって、自分のなりたいものとかを表現したりするようになる。そうした子供達の創造力を引き出すアプローチは、リトルプラネットとも本当に近いと思いました。

今回、実際に自分の子供をリトルプラネットに連れて行ったところ、レゴ ブロックのアトラクションを体験した後、すぐに自分から隣のレゴ®ストアに入っていったんですよ。今まではそういう動きをすることはなかったんです。子供の素直な気持ちでそう動くんだな、遊びを入り口にブランド体験につながるんだな、ということはこれまでは感じたことはなかったです。

リトルプラネットでは入場時に会員専用のリストバンドを付けてもらうんですが、そのバンドをした子がレゴ ストアにもいっぱいいて。先ほど橋本さんがおっしゃっていた、レゴ ブロックをリトルプラネットで知ってもらって、レゴ ストアに行って「おばあちゃん、これ買ってよ」みたいなやりとりも実際に見られたため、認知向上や購買行動につなげられているのかな、と思っています。

ありがとうございました。

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