
Image credit: Venteny
ジャカルタに本社を置き、企業に対し従業員向け(B2B2E)福利厚生・短期ローンのサービスを提供する VENTENY が、インドネシア証券取引所(IDX)に対し上場申請を行い、それが承認されたのは既報の通りだ。同社は12月15日に IDX に上場し、取引が開始された。VENTENY は株式の15%に相当する9億3,900万株を、1株あたり316ルピア(約3.17円)で売り出した。これに対し、投資家からは募集株式の12.58倍に上る応募があったという。
株式は現在、売出価格の2割増程度にあたる390ルピア(約3.44円)前後で取引されている。現在の株価を元にすると、同社の時価総額は2.4兆ルピア(約210.5億円)となる。この金額は、親会社にあたる CARTA HOLDINGS(VENTENY 上場前段階で、VENTENY 株式の24.77%を所有)の時価総額約413億円の約半分に当たる。目論見書によれば、VENTENY は調達資金目標額3,383億2,000万ルピア(約30億円)のうち、30%に相当する1,014億9,000万ルピア(約8.9億円)を事業拡大に使う予定だ(残りは運転資金などに充当)。
なお、その事業拡大に充当される1,014億9,000万ルピア(約8.9億円)のうち、40%をアプリケーション(VENTENY スーパーアプリ)の開発、30%を請求書発行システムなどの会員専用機能の開発、残りの30%を現在の(本社ジャカルタのある)ジャワ島に加え、スマトラ島南部、スラウェシ島、バリ島および東南アジア各国への進出と駐在員オフィス設立に使う予定だ。同社は、フィリピン、タイ、ベトナムへの進出計画を表明している。
東南アジア諸国では、学資保険や健康保険などの未整備から、従業員が家族の進学や医療ケアなどの事情で急に資⾦が必要となる状況が⾮常に多い。一方で、個人が容易に融資を受けられるような金融サービスが提供されておらず、企業の従業員は、仕事内容や働き甲斐などではなく、単純に給与の⾦額のみで転職をする傾向が多く⾒られる。こうしたお金のペインの解決を狙う Financial Inclusion(金融包摂)は、東南アジアのフィンテックスタートアップがアイデアでしのぎを削っているにぎやかな事業領域だ。
VENTENY は2015年4月、シンガポールに本社を置く形で、日本人起業家の和出潤一郎氏により創業。当初は、フィリピンで企業向けの福利厚⽣アウトソーシングサービス事業を開始し、フィリピンでは地元大手銀行などとの提携が功を奏し、200社以上がこれを導入するまでに成長した。導入企業では、従業員が市中の施設や店舗で特典・割引が受けられるほか、給料支給日を前に短期の貸付を受けることが可能だ。言うまでもなく、企業にとって、社員になるべく長く働き続けてもらうモチベーションを与える有効な手段になる。
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