日本人創業で東南アジア初、従業員向け福利厚生・短期ローン提供のVENTENYがインドネシア証取に上場へ

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創業者で CEO の和出潤一郎氏
Image credit: Venteny

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

インドネシア・ジャカルタに本拠を置く VENTENY Fortuna International(以下、VENTENY と略す)は24日、インドネシア証券取引所への上場申請が承認されたことを明らかにした。日本人が創業したスタートアップの、東南アジアでの上場は初めてとなる。VENTENY は2017年2月にシードラウンド、同年12月にシリーズ A ラウンドで、VOYAGE GROUP(現在の CARTA HOLDINGS、東証:3688)と SV Frontier が運営する SV-FINTECH Fund などから資金調達し、後に CARTA HOLDINGS の持分法適用関連会社となった。

東南アジア諸国では、学資保険や健康保険などの未整備から、従業員が家族の進学や医療ケアなどの事情で急に資⾦が必要となる状況が⾮常に多い。一方で、個人が容易に融資を受けられるような金融サービスが提供されておらず、企業の従業員は、仕事内容や働き甲斐などではなく、単純に給与の⾦額のみで転職をする傾向が多く⾒られる。こうしたお金のペインの解決を狙う Financial Inclusion(金融包摂)は、東南アジアのフィンテックスタートアップがアイデアでしのぎを削っているにぎやかな事業領域だ。

VENTENY は2015年4月、シンガポールに本社を置く形で、日本人起業家の和出潤一郎氏により創業。当初は、フィリピンで企業向けの福利厚⽣アウトソーシングサービス事業を開始し、フィリピンでは地元大手銀行などとの提携が功を奏し、200社以上がこれを導入するまでに成長した。導入企業では、従業員が市中の施設や店舗で特典・割引が受けられるほか、給料支給日を前に短期の貸付を受けることが可能だ。言うまでもなく、企業にとって、社員になるべく長く働き続けてもらうモチベーションを与える有効な手段になる。

VENTENY のスーパーアプリ
Image credit: Venteny

万事うまく行っていたところに水を刺したのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。あらゆる企業が操業停止か超低空飛行を余儀なくされるようになる中、成長を見出せなくなった和出氏は断腸の思いでフィリピンの事業を閉じることを決断。インドネシアで一から VENTENY の事業を作り直し、インドネシア企業にサービス提供することで事業を拡大していった。インドネシアでの事業に舵を切ってから約3年半という早期での上場となった(インドネシアへの本社移管は2021年1月)。

インドネシアでは個人の与信情報を取ることが難しい。VENTENY の顧客である企業の与信があれば、その従業員に貸付ができるようにした B2B2E モデル にしたことで、このサービスは実現した。インドネシアでは、個人向けだけでなく、中小零細企業向けの無担保低利融資サービスも開始した。同社には現在、インドネシア国内に4ヵ所の拠点が存在するが、来年には15ヵ所にまで増やす予定。また、事業の出発点であるフィリピンでのサービスを再開するほか、タイやベトナムにも進出する計画だとしている。

<以下、24日午後6時追記>

目論見書によれば、Venteny は今回の IPO を通じて、同社株式の15%に相当する9億3,900万株を、1株あたり350〜450ルピア(約3.11〜3.99円)で売り出す予定で、最大調達額は4,230億ルピア(約37.5億円)。これらの値から同社の時価総額は2.8兆ルピア(約250億円)と推定される。

<以下、25日午前0時更新(従前に追記した内容に誤りがありました)

主要株主は、CARTA HOLDINGS(東証:3688)が24.77%、CEO 和出氏が24.51%、オーシャン・キャピタルが13.06%、SBI ホールディングス(東証:8473)が11.62%、KK Fund が10.37%、リロクラブが8.83%、SV-FINTECH が2.91%、Karya Bersama Bangsa が1.22%、高野真氏が0.39%、谷家衛氏が0.39%と続く。

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