東南アジア発、2023年注目のスタートアップ(9):発注者と建設業者をマッチング、インドネシアの住宅建設の透明化を図る「Arsitag」

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開会の辞を述べる、サイバーエージェント・キャピタル取締役の北川伸明氏
Image credit: Masaru Ikeda

これは、CyberAgent Pitching Arena 2022年冬版の取材の一部だ。

サイバーエージェント・キャピタル(CAC)は12月1日、東南アジアのスタートアップと投資家が参加するピッチイベント「CyberAgent Pitching Arena」の2022年冬版を開催した。新型コロナウイルスの感染状況をひと段落したのを受けて、今回は3年ぶりの対面型(in-person)での開催となった。東南アジアから10社が登壇し、約80名の投資家が参加した。

サイバーエージェント・キャピタルではかねてから国内スタートアップや投資家を対象に「Monthly Pitch」を開催しているが、その国際展開として、2019年にジャカルタで海外版 Monthly Pitch を開催。以降、2021年1月に第2回目となる東南アジア版では「Monthly Pitch Asia」として、2021年9月に開催された第3回から「CyberAgent Pitching Arena」として運営している。

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イベントでは、サイバーエージェント・キャピタルの取締役で中国法人代表を務める北川伸明氏による開会の辞に続き、インドネシア、ベトナム、タイからのスタートアップ10社がピッチを披露。続いて、投資家から寄せられた質問に対して回答する Q&A セッションが展開された。投資に関心を持った投資家は今後、各スタートアップの代表らにコンタクトすることになる。

今回は、ピッチ登壇したスタートアップ10社のうち、Arsitag を取り上げる。

Arsitag(インドネシア)

ピッチする CEO の Steven Gomedi 氏
Image credit: Masaru Ikeda

インドネシアでは、建設プロジェクトの2つに1つは、何らかの都合で予定通り完成していない。納期を守れないとか、予算をオーバーするといったことがしばしば起こり、これらは、いわゆる「なあなあ主義」で、十分な評価や比較をせずに、知り合いの建設業者に仕事を頼むという経済習慣が引き金になっている。物件の発注者、つまり、オーナーは建設業界におけるベストプラクティスの知識を持ち合わせておらず、国の消費者保護の不備から、オーナーは建設業者に全額を前金払いさせられる、ということも少なくない。

Arsitag は、オーナーと信頼できる建設業者を繋ぐプラットフォームだ。テクノロジーを活用したベストプラクティスを提供することで、2019年以降のサービス開始以来手がけたプロジェクト700件以上のうち、97.7%のプロジェクト完了率、5点満点で4.4のオーナー満足度平均を誇る。オーナーがプロジェクトをt投稿すると、Arsitag を通じて最適な3つの建設業者から相見積を受け取ることができ、コストや契約書のレビュー、費用のエスクロー、プロジェクト管理、専門的なデューデリジェンスなどの機能を提供する。

Image credit: Masaru Ikeda

Arsitag では今後、新たなサービスを追加することで追加的な売上を確保する考えだ。具体的には、建設業者と建材メーカーを結びつけるサービスだ。建設業者は、オーナーから頭金が支払われないと、建材メーカーから資材を購入できないというキャッシュフローの問題を抱えている。この問題を解決できているプレーヤーはインドネシアには存在しておらず、世界で4番目の人口を誇り年間40万戸の住宅が建設されるインドネシアで、Arsitag は大きな市場を手にすることができると考えている。

Arsitag は、Edward Harjanto 氏、Steven Gomedi 氏、Michael Gani 氏の3人により創業された。3人はもともと、サンフランシスコにある大学で知り合った。Gani 氏は Apple でエンジニア、Harjanto 氏は Boson Consulting Group のコンサルタントになり、Gomedi 氏はオンライン決済スタートアップを立ち上げたが、うまくいかなかった。3人はインドネシアで再会した時に互いのスキルセットがうまく補完し合うことに気づき、Arsitag を創業することを決意したという。

Image credit: Arsitag

Arsitag は2016年、East Ventures から調達額非開示でシード資金を調達している。現在は2,000万米ドルを調達中で、調達した資金は、エンドツーエンドのエコシステムの改善、雇用、ブランディング、マーケティングに使われる予定だ。同社では今後、建設資材と融資の分野に参入し、〝住宅建設分野のスーパーマーケット〟になることを目指すとしている。

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