「10分即解凍ケーキ」がカフェの課題を解けたワケーーDNPとCake.jpが実施したサステイナブルなコラボの内幕

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。

ケーキを中心とするスイーツ専門ECを手掛けるCake.jpは昨年10月末、大日本印刷(DNP)とそのグループ会社アットテーブルとの取り組みを発表しました。フードロス問題を啓発する狙いで、DNPが都内で運営するDNPプラザ内の「問いカフェ」でCake.jpが提供する人気スイーツ「10Mineets」を提供しています。

問いカフェは社会課題に向き合う場をコンセプトとしたスペースで、頭に浮かんだ疑問などを投稿・共有することができるコーナーや解決のヒントとなる書籍などを手に取ることができるのが特徴です。一方のCake.jpが提供する冷凍ケーキは、完全受注生産のため廃棄ロスが少なく、また通常の冷蔵ケーキよりも長期保存が効くことから今回のフードロスを考えるきっかけになるとしています。

特に今回、問いカフェで提供されているCake.jpの冷凍ケーキ「10Mineets(テンミニーツ)」は、出願中の特許技術を用いて開発されたもので、10分で解凍できるのが特徴になっています。長期保存もできることから1年間で2万7,000個を販売したヒット商品です。KDDI∞Laboでの出会いをきっかけに話が進んだこのコラボレーション企画、どのような内幕だったのか皆さんにお話を伺ってきました。

10分で解凍できるケーキが「解いた」問題

Cake.jp 取締役副社長 曽根直人氏

さて、このコラボレーション、カフェがスイーツを提供するという一見すると「当たり前」の話題に聞こえるかもしれません。しかしこの「10分で即解凍」という技術が実はある問題を解決してくれるのです。それはフードロス(食品廃棄)です。

DNPではオープンイノベーション的な発想から、一般の方々に参加しやすい場を提供する目的でカフェという形態を企画運営されています。一方、飲食を運営すれば避けられない点がこのフードロスです。生鮮食品であれば需給バランスを考えて仕入れるノウハウやデータが必要になりますし、一方の冷凍は保存が効くものの、解凍までに長時間かかります。

その点、Cake.jpが提供する10Mineetsはわずか10分で提供ができるため、この難しい問題を解決することができたのです。カフェ運営の課題について、DNPでカフェの運営企画に携わる坂元美穂氏は次のようにお話されていました。

もちろん冷凍された状態で仕入れることは以前にもあったのですが、通常のものですと例えば次の日に出すためには半日時間をおいて提供する必要があったり、そこも『読み』を間違えると翌日にすごい廃棄がでてしまうこともあるんです。(10Mineetsは)冷凍したまま、すぐにお客様に提供できるということで本当にロスがなくなる稀有な存在、DNPとしてもですが、このような小売一般の抱える課題を解決できる商品だと思っています。(DNPコーポレートコミュニケーション本部 プレゼ・コラボ推進室 坂元美穂氏)

両社の取り組みはそこに留まらず、これをきっかけにフードロスそのものの啓発にも繋げようと今回のプレス発表に至りました。

取り組みイメージ

一方、今回コラボレーションしたCake.jp側にもひとつのチャレンジがありました。それがリアル店舗での提供です。彼らはECを中心とした展開を進めていたため、リアル店舗への販路を拡大する上でのノウハウや経験は乏しかったそうです。思惑が一致した両社のコラボレーションはトントン拍子で進むものの、問いカフェへの提供にあたりいくつもハードルを超える必要がありました。

やはり手土産やギフトで販売されているものと『その場で食べるもの』は扱いが違うので、例えばどのように提供するのがいいのかとか、プライシングとか、その辺りはちょっと悩みました。それと私たちもある意味チャレンジでやってますが、やはり利益が多少なければお客様に紹介できない部分もあるので、そこも踏まえて実際に卸していただく値段や、お客様がいくらだったらその場で買って食べてもらえるのかという部分を検討しましたね。(アットテーブル ビジネスデザイン室リーダー 古川和男氏)

ECで販売されている商品を店舗で提供するにあたり、近隣の店舗などを回ってどのような価格や提供方法なのかをリサーチし、現在の提供方法に辿り着いたそうです。ケーキを冷凍するスタートアップの技術が普段、当たり前と思っている社会課題を解決してくれるかもしれない。世界的にもESG・SDGsなどを中心とした持続可能な社会づくりには関心がどんどん集まっています。

トラックが二酸化炭素を出しながら毎日毎日ケーキを運んで、その売れ残りを廃棄するというサイクルがずっと続いているんです。今回の技術を使って冷凍のまま在庫をもちながらも、すぐに食べることができれば廃棄はそもそもなくなりますし、配送も毎日送らなくてすみます。こういう世界観をビジネスとして作っていけると本当に面白い世の中になるんじゃないでしょうか。(Cake.jp 取締役副社長 曽根直人氏)

アットテーブルを中心にDNPとCake.jpが繋がったコラボレーションでは「10分で解凍できる」という価値をうまくカフェのフードロスという課題にマッチングさせたことが重要なポイントになっています。これと同様に、社会にある当たり前と思っている課題も実はどこかのスタートアップ技術が解決しているのかもしれません。

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