食品流通の川上〜川下を常時モニタし需給最適化、Siloがa16zらから1.3億米ドル調達——生産者の資金繰り支援にも進出

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Image credit: Silo

国連環境計画(UNEP)によると、2021年には世界で毎年10億トンの食品が無駄になったという。食品廃棄の原因は、過剰生産、取引業者による食品の流通リードタイム、さらに農家、取引業者、産業界、物流間のコミュニケーションギャップや情報不足にある。

スタートアップ Silo は、この問題を解決するために B2B サプライチェーン管理 SaaS プラットフォームを構築した。このプラットフォームでは、中間業者が小売業者の需要、農家の供給、物流業者の積荷を同日中にプラットフォーム上で直接確認することができ、電話や紙と鉛筆による記録、手作業による分配を行う必要がない。Silo は、リアルタイムのデータとコンピューティングによって、食品ロスを年間数十億米ドル削減することに成功している。

Silo は、食品をリアルタイムで流通させる卸売業者の支援に加え、新たな金融サービス「Silo Capital」を開始した。このサービスを使えば、卸売業者や農家などのオペレーターが、現在残高や売掛金の開始日と終了日などを知ることができキャッシュ・フローを一目で把握できる。

コーヒー取引から、農産物取引プロセスの問題点を見出す

Silo 創業者 Ashton Brown 氏

ソフトウェアデザインの経歴を持つ Silo の創業者 Ashton Brown 氏は、フェアトレードに常に情熱を注いでおり、2010年にシンガポール大学で学位を取得した後、そのままコーヒー取引に携わることを決意した。

東南アジアでの1年半の滞在中、彼は貿易プロセス全体が完璧ではないことに気づいた。農産物のサプライチェーン全体、すなわち農家、荷主、卸売業者、小売業者、消費者に至るまでが、いまだに紙でやり取りしていて、体系的でオープンなプラットフォームがないのだ。情報が不足しているため、荷主は物流会社やレストランとの連絡に手間がかかり、コミュニケーションに時間がかかるため、消費者の手に渡るまでの保存期間が短くなってしまう。

そこで彼は、農産物の取引プロセスを簡素化し、サプライチェーンの各リンクの情報を透明化し、リアルタイムで更新できるようにする方法を考え始めた。そう考えた彼は、故郷ボストンに戻り、この問題を解決するために起業することを決意した。

彼が最初に試みたのは、地元ボストンの漁師向けにアプリをデザインすることだった。漁師が漁をしている間に、その日の漁獲見込みを同期メッセージで消費者に通知し、売れない魚をたくさん獲ってしまうのを防ぐというものだ。しかし、この製品が完全なビジネスモデルを確立する前に、Brown 氏は友人の Adam Smith 氏の起業を手伝うためにカリフォルニアに渡った。彼はそこで、Kite の共同創業者としてチームを率い、AI でデバッグやコードメンテナンスを実行できるソフトウェアツールを開発し、ピーク時には月間50万人のアクティブユーザを獲得した。

Brown 氏は Kite での4年間で、経験豊富なテックスタートアップのチームリーダーになったが、農業サプライチェーンの複雑な問題を解決することを忘れなかった。Brown 氏は2018年、Kite を退社し、食品サプライチェーン事業を立ち上げる夢を続けるために Silo を起業することを決意した(編注:Kite は2022年11月に事業を終了)。

プラットフォームサービスを通じて、農産物の取引プロセスを簡素化するには

フードサプライチェーンにおける革新的なサービスは目新しいものではない。台湾を拠点とするスタートアップ TsuaiTung(菜蟲農食)も農産物の 2B オンライン取引アプリを立ち上げており、デジタルで食品の取引プロセスを簡素化し、IoT 画像認識デバイスの開発と組み合わせて農産物の検出と品質管理を行っている。ケータリング業者はアプリを通じて注文を行い、最も川上の農家に注文数量を通知し、川中の包装工場に最新情報を同期して知らせることで、農産物の品質と価格が期待通りであることを確認できる。

Silo のプラットフォームは、TsuaiTung とは異なり、川上の農家と川下の小売業者の需給を開示するだけでなく、ERP(統合基幹業務システム)のようなもので、同時に AI 機能も導入されている。各仕入先のリアルタイム需要をもとに、ディスカウント業者が最速・最安の輸送方法を算出し、最も利益率の高い取引相手とのマッチングを支援する。Silo は農産物の品質を直接管理することはないが、登録業者向けの認証メカニズムを持ち、情報をアップロードするすべての取引を検証している。

売掛金の管理を自動化することで貸倒れリスクを軽減する資金管理サービス「Silo Capital」
Image credit: Silo

さらに、新サービスの Silo Capital は、農産物の取引の過程で、生産者がすでに顧客に出荷しているにもかかわらず、商品代金の全額をまだ受け取っていないために資金繰りが悪化しているのを確認し、システムは自動的に生産者の売掛金を効果的に管理する。プラットフォームを使って直接取引を行えば、代金回収までの期間を30営業日から3日に短縮できるサービスを提供する。これは、貸倒れリスクの軽減にもつながる。

A16z は Silo の投資家の一社であり、彼らの公式な説明によれば、Silo のチームはソフトウェアと消費財市場を融合させており、その人材はソフトウェア技術だけでなく、農産物の公正取引に対する熱意も十分に持っているという。Silo が今年7月、シリーズ C ラウンドで1億3,200万米ドルを調達できたのは、こうした資質があったからだろう。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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