元ザワットの原田氏、NFTを使った実物を配送しないC2Cマーケットプレイス「Unikura」をβローンチ

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「Unikura」
Image credit: Velvett

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

約10年前から、数度にわたってブランド品オークションサイト「スマオク」について取り上げたのを記憶している読者がいるかもしれない。この C2C マーケットプレイスは日本国内のみならずアジアへも展開を図るなど快進撃を続けたが、2017年2月には同業のメルカリに買収され、ザワット代表取締役だった原田大作氏はメルカリに参画することが明らかにされた。

その1年半後、2018年4月には、原田氏がメルカリの新規事業子会社ソウゾウの代表取締役に就任した。ソウゾウは、実際に会って商品取引ができるアプリ「メルカリ アッテ」や自転車シェアリングの「メルチャリ」などを生み出したが、2019年6月に解散した(メリカリアッテはサービス終了、メルチャリはチャリチャリとして neuet が事業を継承している)。

そんな原田氏がメルカリグループからの退職を明らかにしたのは、約1年前の2022年7月のことだ。個人投資家として、あるいは、千葉道場のフェローとして活動するのを垣間見ることもあったが、年内に新たな事業を立ち上げることを明らかにしていた。今年の初めにはシンガポールに移住し、本格的に Web3 ビジネスに着手することを明らかにしていた。

そうして今日、クローズドβローンチを迎えることになったのが Web3 を使った C2C マーケットプレイス「Unikura(ユニクラ)」だ。確かめてはいないが、Universal と Kura(商品を預かる「蔵」の意)を組み合わせた造語だと思う。バーチャルアイテムではなく、リアルなモノを取引するマーケットプレイスに Web3 を持ち込んだ点が画期的と言える。

配送しない C2C マーケットプレイス

原田大作氏

原田氏がこのアイデアを思いついた発端はコロナ禍のリモートワークだ。Zoom や Teams 越しのやりとりが続く中で、自分のデスクの背景に飾るものが欲しいと考えて、アートを買ってみたという。しかし、希少価値のあるアートというのは、何かと管理が面倒だ。子供の手の届くところにあると傷つけられたり、クローゼットに保管しておくと高温多湿な環境ではカビが生えたりしてしまう。

この種のコレクティブルというのは資産でもあるし、市場との需給関係で価値が増えることもあるので投資にもなるが、結局のところ、所有という権利行使や、所有欲が満たされることが大事であって、多くのモノを集めるコレクターであればあるほど、身近に置いておくことに煩わしさを覚えたり、あるいは、配送されたものを受け取り、それを開封することさえ面倒に感じたりするのだという。

原田氏がそこで考えたのが実物を預かり、その所有証明だけを NFT で取引できるマーケットプレイス Unikura だ。ユーザは日本やシンガポールにある倉庫に実物を送ると、Unikura はその保管証明(所有証明)を Ethereum ベースの NFT としてユーザに返却する。ユーザはその NFT を売買することで他のユーザと取引ができる。買ったユーザも実物を手にする必要はない。

もっとも実物を手にしたいというユーザは、その保管証明(所有証明)を一度消し込む(NFT をバーンする)ことで、倉庫から自分の手元に送ってもらうことができる。また、本当に適切に保管されているのか自身の目で確かめたいというユーザのために、Unikura では年に何度か、コアユーザを招いて倉庫に案内するツアーなどの開催も検討しているという。

オタクのためのサードプレイスを創る

Unikura が預かった商品を保存している倉庫
Image credit: Velvett

インターネットが生んだロングテールの結果とも言えるだろうが、人々の嗜好は多様化し、あらゆるものが収集の対象となる。一般的には見向きもされないニッチなものが、ある一部のコア層、もっと言ってしまえば、オタクの人々にとってはエンゲージメントの高いものになる。しかし、この種のコレクティブルは、ニッチであるがゆえに、共に思いを共有できる仲間を見つけることが簡単ではない。

酷暑や台風の最中でも多くの人々がコミケ(コミックマーケット)に集まるのは、自分が欲しい希少なコレクティブルを見つける以外に、それについて語り合えるコミュニティを求めてのことだろう。Unikura では同じようなアイテムを所有するコレクター同士が語り合えるコミュニティを Discord 上に構築しており、これが Unikura で取引を行うユーザにメリットの一つとして提供される。

また、Unikura での取引の多くは二次流通となるが、一連のやり取りの履歴は Ethereum 上に記録される。Unikura ではこの履歴を頼りに、直近のセラーのみならず、過去のセラーにも一定のリワードが還元される仕組みを構築したという。こうすることで、物理的なモノの移動を伴う取引と比べ、Unikura を使うメリットが実感でき、二次流通を活性化することにもつながるという。

Unikura で扱われる商品は今のところトレーディングカードが多くを占めているが、原田氏は、より多様な商品が取引されるよう機能を充実させる考えだ。リアルなコレクティブルを NFT 化するというアイデア(physically-backed NFT)は、Y Combinator が支援する Courtyard なども提供しているが、他社制作のデザインをそのまま NFT 化している点で著作権侵害を指摘される可能性があり、Unikura はこの点で法的に問題が無いよう熟慮してシステムを構築したという。

これまでボラティリティの高いトークンの価値を安定させるために、リアル、つまり、法定通貨(fiat)とペッグしたステーブルコインや、金と兌換性のあるトークンなどは数々紹介されてきたが、価値のあるリアルなモノをトークンで流通させようとする考えは非常に面白いと言えるだろう。

Unikura の開発・提供元で、原田氏が率いる VELVETT は今年4月、シードラウンドで300万米ドルを調達したことを明らかにしている。このラウンドには、千葉道場ファンド、Kanousei Ventures、HIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)、W、mint、F Ventures、FLICKSHOT らのほか、名前非開示の複数の個人投資家が参画した。

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