
本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
今週の注目テックトレンド
GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。
親から子供へ投資を「贈る」習慣を根付かせようとしている、フィンテック企業「EarlyBird」が450万ドルの資金調達を発表しました。同社の資金調達総額は1,090万ドルに達しています。
EarlyBirdは、親が子供へ投資できるアプリを提供しています。米国ではUGMA(Uniform Gifts to Minors Act:未成年者への贈与に関する法律)が設けられていて、親が未成年の子供のために投資できる権利が認められています。親が代理投資家として有価証券の保管・管理等をするための「カストディアル口座」を作成し、株式や債券、投資信託へ投資できるようになります。子供の年齢が18歳(州によっては21歳)になると投資金は子供のものになります。この仕組みを使っているのがEarlyBirdです。
EarlyBirdの戦略ポジションは「一番最初の口座」になることです。過去10年で、未成年およびティーン層向けのフィンテック市場は様変わりしました。10代のうちから「Step」のようなデジタルバンクサービスを使ってクレジットを貯めたり、「Greenlight」を使って親が管理するデビットカードと預金口座を開いたりと、口座開設や金融カードの利用開始年齢が下がってきています。大学入学後、多くの人が大手銀行で普通口座を開きますが、その前に利用してもらう「最初の口座」の市場ポジションを狙っているスタートアップのひとつがEarlyBird、というわけです。
ただし、彼らのアプローチは独特です。
先述したStepやGreenlightは、子供が実際にお金を使いながら金融リテラシーを育んでいくことから、あくまでも子供が主体のサービス体験になっています。他方、EarlyBirdの場合は、生まれた時から継続的に親が子供へ投資をするため、あくまでもユーザー主体は親です。そのため、他のフィンテックサービスとは違う体験設計になっています。
具体的には、子供との記録映像や写真を親族や友人とシェアすることをモチベーションにした導線設計になっています。例えば入園、卒園などの記念行事があった時、その記念に投資をすると同時に、どのような想いでこの投資をするのかといった思い出を一緒にEarlyBirdにアップできます。家族の思い出と一緒に投資が積み上がるというユニークな設計で長く使ってもらおうとしているのです。
子供の物心がつかないタイミングからその子の人生設計が考えられて投資がされるため、EarlyBirdには利用する家族のことを深く知れるコンテンツが貯まるのも特徴です。かなり早いタイミングから金融接点を持つことで、大人になった後に開設する大手銀行への紹介や、そのほかファイナンシャルアドバイザーサービスへの繋ぎ込みなど、多角的に展開することができます。
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