ディープテック発掘型起業支援「1stRound」、日米間で双方向進出支援を開始——第1弾は「Qlay」と「Tenza」

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ボストン・ケンブリッジの Cambridge Innovation Center(CIC)で、昨年5月に開催されたシンポジウムで「1stRound in Boston」の募集が発表された。
Image credit: UTokyo IPC

東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)は24日、同社が運営する起業支援プログラム「1stRound」において、日米間双方向運用を本格開始することを明らかにした。ディープテック分野を中心としたスタートアップについて、日本のスタートアップのアメリカ展開、アメリカのスタートアップの日本展開を支援する。

1stRound は2019年にスタートした起業支援プログラムで、東大 IPC が2017年から展開していた「起業支援プログラム」が前身。スタンフォード大学出身者向けアクセラレータ「StartX」をベンチマークとして立ち上げられ、起業を目指す卒業生・教員・学生などのチーム、大学関連のシードベンチャーに対し、活動資金、ハンズオン支援を提供している。

1stRound の最大の特徴の一つがノンエクイティ型の支援プログラムであることで、一般的なベンチャーキャピタルやアクセラレータのように、対象スタートアップからの株式の割当/出資引受の機会提供を求めない。将来的なスタートアップとのオープンイノベーションを展望する大企業とのパートナーシップがこれを可能にしている。

1stRound はこれまでに東大はもとより、スタートアップ予備軍を輩出する全国13の国立や有名私立大学が参加し、昨年9月にはコミュニティ拠点「1stRound BASE」を開設した。1stRound の国内での体制は、すでにこの時点で「ある種、仕上がった感じ(担当者談)」だったが、さらにここから国境/市場を越えた支援体制が運用を始めることになる。

左から:中田智文氏(Qlay Technologies CEO)、長坂英樹氏(東大 IPC パートナー、1stRound ディレクター)、山下徳正氏(Qlay Technologies COO)
Image credit: UTokyo IPC

具体的には、まず、日本からアメリカのケースで、先ごろ、XLIMIT で Audience Award を獲得し、 「LAUNCHPAD SEED 2023 Winter」でファイナリストに選ばれた、ジェネレーティブ AI を活用した消費財メーカー向け消費者インサイト定性分析ツール「Qlay」を開発・提供する Qlay Technologies のアメリカ進出を支援する。

Qlay Technologies の共同創業者2人は、CEO の中田智文氏がハーバード大学統計学部を卒業後にマッキンゼーに勤務、COO の山下徳正氏が MIT(マサチューセッツ工科大学)電気工学・コンピューターサイエンス学部を卒業後にシティグループ証券/デロイトトーマツに勤務、というアメリカネイティブで、以前からピッチなどでもアメリカ進出することを説明していた。

Qlay はアメリカ法人(デラウェア州登記)を設立しており、中田氏や山下氏は今後、サンフランシスコを拠点に事業展開を始め、日本向けの営業活動もサンフランシスコからリモートで行う予定だ。法人設立のプロセス、現地の調査、アメリカ進出に向けた今後のアクションプランなどの策定や実行において、1stRound が支援している。

左から:大堀誠氏(東大 IPC パートナー、ライフサイエンス CIO)、Anik Debnath 氏(Tenza CEO)、長坂英樹氏(東大 IPC パートナー、1stRound ディレクター)
長坂氏は「転座」と書かれたコップを手にしている。
Image credit: UTokyo IPC

アメリカから日本のケースでは、ボストン・ケンブリッジの Cambridge Innovation Center(CIC)で、昨年5月に東京大学、東京医科⻭科大、GTB(Greater Tokyo Biocommunity)と共催したシンポジウムで、東大 IPC は「1stRound in Boston」の募集を発表した。応募者の中から、合成生物学的プラットフォームを用いた新規治療法を開発する Tenza を採択した。

Tenza は、ハーバード大学医学部で、〝リアル版ジュラシックパーク〟とも称されるプロジェクトを手がける遺伝学者 George Church 氏の指導のもとで研究していた Anik Debnath 氏がスピンアウトして設立したスタートアップ。粘膜疾患に対する経口投与可能な生物学的製剤技術を開発している。

<参考文献>

同社の開発した遺伝子組換え乳酸菌を用いた新しい共生型薬物送達プラットフォームは、共生微生物が自然に生息する標的組織への曝露を制限することで、全身的な副作用を軽減しながら治療効果を高めるという、従来の薬物送達方法に代わる標的を設定した代替手段を提供し、より多様な細菌を操作してより高い収率の薬剤生産を可能にする。

Tenza の名前は日本語の「転座」に通じるらしく、2018年の創業当初から日本での事業展開を意識していた可能性はある。東大 IPC では、日本における基本特許の出願、日本の大企業との連携、ベンチャーキャピタルへの紹介などを支援する。メンバーの日本滞在中は、1stRound BASE などのコミュニティ拠点が活用される見込みだ。

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