台湾のスタートアップカンファレンス「InnoVEX 2024」に、世界から集まったスタートアップ入賞7社をご紹介

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Image credit: Masaru Ikeda

6月に開催された台湾を代表するスタートアップカンファレンス「InnoVEX 2024」の模様はその際にもお伝えしているが、ここでも他のイベントの多分に漏れず、ピッチコンテストが毎年開催されている。イベント時に詳細をお伝えすることができなかったが、類まれな興味深いスタートアップが集まっていたので紹介してみたい。

今回のピッチコンテストでは、台湾、日本、ウクライナ、ドイツ、ベルギーなど、世界各国から革新的なスタートアップが集結した。台湾政府や欧州復興開発銀行(EBRD)なども支援を行い、国際的な交流の場となった。ピッチコンテストには15カ国から選ばれた15社のファイナリストが登壇し、5分間のプレゼンテーションと3分間の質疑応答を行った。

審査員は、以下の方々が務めた(決勝のみならず、予選からはじめ、ピッチコンテスト全体で)。本稿では、入賞した7社に絞って、彼らのビジネス内容や今後の戦略を詳しくお伝えしたい。

  • Fabian Faul 氏 – NXP Semiconductor
  • Jerry Yang(楊建銘) 氏 – General Partner, HCVC
  • Jason Lu(盧志軒)氏 – Director, Darwin Ventures/Darwin Ventures 達盈管理顧問
  • Wilson Khoo 氏 – co-pace GMBH(中国アジア太平洋責任者), Continental AG
  • Edward Lee 氏 – Senior Director(台湾投資担当), JAFCO Asia
  • Steve Pan(潘本閎)氏 – Director, UMC Capital/宏誠創投
  • 甲斐田裕史氏 – 副委員長, ResorTech EXPO in Okinawa 実行委員会
  • Sheng-Ta Lee(李昇達)氏 – NVIDIA(台湾 VC スタートアップパートナーシップ担当)
  • Men Feng Wu(呉盟分)氏 – 会長, 台湾車聯網産業協会
  • Ronald Wu(呉栄煌)氏 – Executive Assistant for Chairman, HwaCom Systems/華電聯網
  • Bill Yu 氏 – Partner, Management Consulting, PricewaterhouseCoopers
  • Joyce Lee 氏 – WI Harper Group/美国中経合
  • Steven Lee(李一平)氏 – Taiwania Capital Management/台杉投資
  • Mike Lee(李國任)氏 – WK Innovation/普訊創新
  • Hans Lee 氏 – BE Health
  • Guden Garcia Pablos 氏 – Criteria Caixa
  • Yinglan Tan 氏 – Insignia Ventures Partners
  • Ronnie Tseng(曾亭瑞)氏 – AppWorks Ventures/之初創投

【優勝】Taiwan Polymer Material Company(TPMC)/台湾高分子工業(台湾)

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TPMC が開発した廃タイヤのリサイクル技術の特徴は、従来25%程度だった再生ゴムの活性率を50%以上に高めたことだ。これにより、リサイクル材料をタイヤ製造プロセスに10%以上添加できるようになり、規格をクリアすることができる。具体的には、ウォータージェットカッターでタイヤを切断し、ゴム、繊維、金属に分離した後、熱分解によってゴムを再生プラスチック化する。同社の CSO は「最大で4,200トンの生産能力と60メッシュの粒子サイズを実現しました。競合を大きく上回る性能です」と述べた。

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TPMC は、リサイクル事業者からの投資を呼び込み、ゴールデンバッチの製造とターンキーソリューションの提供を通じて市場価値を高める戦略を描いている。各ゴールデンバッチは年間1億米ドル、各ターンキープロジェクトは15万米ドルの収益をもたらすという。同社は2027年までに生産ラインの確立と環境保護認証の取得を目指している。2028年には最初のターンキープロジェクトをグローバル展開し、2031年までに年間売上高11億米ドルの達成を見込んでいる。

【Future Star Award】Watasumi(日本)

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Watasumi は、食品・飲料業界の中小企業向けに、生物学的廃棄物処理システムを開発した。これは、企業の廃棄物処理コストを大幅に削減し、環境に優しいソリューションを提供するものだ。Watasumi のシステムは、企業の敷地内で廃棄物を処理する分散型ソリューションだ。濃縮された有機物を生物学的処理システムに投入し、バクテリアのコミュニティが廃棄物を分解する。また、システム内の電極が分解プロセスを促進し、同時に廃棄物からエネルギーを回収する。

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この技術の特徴は、処理性能が非常に安定していることだ。プラントからの排出物が日々変化しても、処理性能は一定に保たれる。Watasumi は、沖縄の蒸留所や北海道、本州の日本酒メーカーなどですでに実績を上げている。今後はアジア全域への展開を目指している。同社の事業モデルは、処理装置のリースまたは販売と、性能に応じた課金、モニタリングシステムの提供だ。装置は沖縄で製造しているが、一部の部品は外注しており、今後は台湾での調達も検討している。

【Special Award】Fortune AI/智能科技(台湾)

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Fortune AI は、AIを活用したスイミングプール監視システム「SAFE SWIM」を開発した。同社によると、溺死は事故死の第3位の原因で、年間約24万件発生している。また、ライフガード不足が業界全体に影響を与えており、多くのプールが営業時間の短縮や閉鎖を余儀なくされている。同社によると、溺死は事故死の第3位の原因で、年間約24万件発生している。また、ライフガード不足が業界全体に影響を与えており、多くのプールが営業時間の短縮や閉鎖を余儀なくされている。

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SAFE SWIM はオーバーヘッドカメラを使用してあらゆる潜在的リスクを監視し位置を特定する。世界のスイミングプール市場は約375億米ドルで、世界中に2,500万以上のプールがあるという。台湾では設置と年間サブスクの総合ソリューション、海外では販売と設置に代理店を活用し、各代理店に最低50の商業用プールと個人用プールの導入を求めるとした。誤認識に関する質問に対し「精度は約95%です。通常の練習行動と実際の溺れを区別するために、あらゆる種類の行動に対するセンサーを設けています」と回答した。

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【Special Award】NanoWired(ドイツ)

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NanoWired は、従来の半田付けに代わる新たな接合方法として、直接銅接合技術を開発した。この技術を使えば、電子機器の接続における抵抗を低減できる。同社の技術は、室温で金属の微細構造(彼らは「芝生構造」と表現している)を成長させ、それらを接着することで接合を行う。この技術により、例えばパワーモジュールのサイズを4分の1に縮小しつつ、効率を向上させることができる。

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EV や通信、5G、IoTなど、多くの半導体材料を必要とする5つのメガトレンドに対応している。NanoWired は、顧客にこの技術を使用するためのトレーニングを提供し、機械を販売し、消耗品も販売するビジネスモデルを採用している。同社は2022年に設立され、現在10の主要プロジェクトを進行中で、2027年には1億5,000万米ドルの売上を見込んでいる。

【Special Award】台湾科技大学 資訊管理系(台湾)

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台湾科技大学 資訊管理系は、車両インターネット(IoV)に関する製品を開発している。彼らの目標は、安全な環境を改善し、従来の環境検証の計算コストを削減することである。同研究所は、ページ検証アプリケーションを提案し、単一検証の問題を解決し、計算コストを削減している。彼らの製品は、政府や通信事業者、交通機器管理者、学術機関をターゲットとしている。

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同研究所は、計算コストの削減、交通効率の改善、物理的無秩序を利用した乱数生成の改善を目指している。同研究所は、車両間通信(V2X)におけるセキュリティと効率性を向上させる新たな認証メカニズムを開発した。従来の単一認証方式に代わり、ページ認証アプリケーションを提案することで、計算コストの削減と交通効率の改善を実現している。

【Special Award】ReisenderTECH/黎聲科技(台湾)

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ReisenderTECH は、製造業、物流業者、設計会社などの潜在的顧客向けに、ロボティクスに関する包括的なソリューションを開発・提供している。彼らの主力製品は、ロボット用のスワーブドライブモジュール(ステアリング機構)で、専門家から最先端の重量物用全方向駆動システムとして評価されている。

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このシステムは、従来のタイヤの駆動力とメカナムホイールの平行移動能力を同時に提供する。高度な材料、ブラシレスモーター、洗練された制御アルゴリズムを使用し、非常に高いメンテナンスサイクル、軽量構造、低エネルギー消費を実現している。同社はアメリカに大きな可能性を見出しており、総対象市場を300億米ドルと推定している。現在エンジェル投資家から資金調達中だ。

【Special Award】SEEDiA(ポーランド)

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SEEDiA は、ロボット用の電子機器を製造し、分散型エネルギー源を提供するスタートアップである。同社は、ソーラー駆動のパークベンチ、バス停、太陽エネルギー源を開発している。これらの製品は、スマートシティにおいて太陽光で駆動するロボットを世界中に普及させることを目指している。

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同社のスマートベンチは、台湾の E Ink が製造する電子ペーパーディスプレイを搭載し、スマートフォンの充電、Wi-Fi アクセス、音楽再生などの機能を提供する。バス停も同様に、充電ステーションやスマート LED 照明を備えている。現在、Seediaの製品は24カ国259都市に導入されており、年間売上高は100万ユーロに達している。

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