セカイラボが中国最大のクラウドソーシング・プラットフォーム「猪八戒」と提携、中国のシステム開発需要をアジアのネットワークで受託

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セカイラボ 代表取締役の鮄川宏樹氏(右)と、PRマネージャーの椎葉育美氏(左)。

アジア各国向けにアプリ開発のクラウドソーシングを展開する「セカイラボ」がローンチしたのは昨年2月のことだ。同社は先ごろ、中国最大のクラウドソーシング・プラットフォーム「猪八戒(ジュバァジェ、英語名:Witmart)と提携、中国からのアプリ開発受託を本格的に開始したと発表した。

セカイラボは、アジアを中心に15カ国で、アプリデベロッパやシステムインテグレータ(SI-er)約100社が参加するシステム開発の受注プラットフォームを展開しており、これらの国々のリソースを活用することで、日本や海外で受注した案件について、比較的安価かつ高品質なオフショア開発を実現している。

セカイラボの代表を務める鮄川宏樹(いながわ・ひろき)氏は、今回の猪八戒との提携の理由について、次のように語ってくれた。

これまで中国はオフショア開発の拠点として、中国国外からの開発案件を受託してきた。しかし、中国のエンジニアの人件費が上がり、国内の市場も成長したことから、アプリの発注側の市場に変貌しつつある。

猪八戒には、クラウドソーシングを受けるユーザが約1,000万人参加していて、中国で最大の規模。モバイルアプリ、ECサイトなどの開発案件が数多く投稿されている。比較的小規模な案件は中国のフリーランサーが受注していくが、中規模以上の工数のかかる案件は彼らに手に負えないため残っていく。そのような中規模以上の案件を中国から受注し、セカイラボのプラットフォームで開発を受託していくことが、今回の提携の狙い。

中国をはじめ、日本内外から受注した案件は、セカイラボのプラットフォーム上でアジア各地のデベロッパにオーダーされる。発注主とデベロッパが直接開発契約を結ぶケースもあるが、実際のところは、管理の能力や日本企業としての安心から、セカイラボが一次受注し、開発を請け負うデベロッパをプロジェクト管理したり、顧客とのブリッジ SE の任を担ったりするケースが多いのだという。

例えば、中国発の開発案件であれば、日本にいるセカイラボのSEのほか、セカイラボの成都(四川省)や青島(山東省)の開発拠点などが顧客要件をヒアリング、セカイラボのプラットフォームを通じて要件をベトナム・ダナンのデベロッパに伝え、開発に着手してもらう、という流れだ。

以前は受注した案件を、プラットフォームに参加している100社全てのデベロッパに投げていたが、デベロッパにはそれぞれ、開発言語やフレームワークなど得意分野があるので、現在は選定チームが数を絞り込んで、案件ごとにある程度選んだデベロッパに見積依頼を出すようにしている。複数のデベロッパから見積依頼をとった上で、最終的にどこに頼むか、どういう契約形態にするかは、発注するお客さんに決めていただいている。(鮄川氏)

「猪八戒」上に開設された、セカイラボのページ。
「猪八戒」上に開設された、セカイラボのページ。

長年 SE をしていた経験から言えば、システムインテグレーション(SI)業界の下請け構造にもかかわらず、特に大企業は、情報管理という観点からシステム開発を下請けに出すことを避ける傾向にある。ましてや、それが日本の法律の及ばない海外への発注となると、二の足を踏む企業も少ないわけではない。

このような問題をどう解決しているのかを鮄川氏に聞いてみたところ、セカイラボが主に手がけているのは、基幹システムからは独立したウェブサービスやアプリの開発であるため、筆者が心配したような問題に出くわすことは少ないのだそうだ。セカイラボが取り扱う開発案件の、一件あたりの平均予算は400万円前後で、平均工数は14人月〜15人月程度。ターゲットとする案件の大きさが違うことから、大手の SI-er やコンサルファームなどと凌ぎを削る心配も無い。

顧客は、上場企業から個人に近い規模までさまざま。6〜7割は非IT系で、残りの3割がIT系という感じでしょうか。日本国外からの受注は業務系とかとかが多い。また、日本企業が海外に進出したい、海外企業が日本に進出したい、とか、そういうときのアプリのローカライズとかも多い。(鮄川氏)

オフショア開発と言えば中国、と言われていたのも昔の話。鮄川氏によれば、上海のエンジニアの労働単価は、今や日本のエンジニアのそれとほぼ変わらない。価格競争力が失われる中で、中国国内で高品質でアプリ開発できる企業は限られているのだと言う。仕事の評判は毎日の積み重ねの結果であるが、これまでの努力が功を奏し、セカイラボには、日本国内よりも規模が大きく数多くの開発案件が中国から寄せられるようになっているのだそうだ。

セカイラボは今月、15カ国目の開発拠点としてバングラデシュに進出する。展開している国の数から見ても、同社が社名に冠した通り世界市場を相手にしていることは名実共に疑う余地は無いだろう。

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