4月より開始した「Lab.」では毎月課題を設定し、課題解決に関する勉強会形式のミートアップを開催している。7月のテーマは「食糧危機・フードロス問題」。本テーマに関して1カ月間にわたり調査やミートアップを実施してきた。
今回は食料・フードロス問題に詳しいプラネットテーブル代表取締役の菊池紳氏に監修していただき、この分野に役立つテクノロジーについて整理を進めた。課題調査やレポート作成、スタートアップとのミートアップ実施にあたってはこちらの協賛パートナー企業に協力をいただいた。改めて御礼したい。(レポートや連携企業との取り組みに興味ある方はお問い合わせください)
7月28日には今月のテーマに関連するスタートアップ8社がピッチ登壇してくださったのでその様子をレポートさせていただく。
食料危機・フードロス問題に取り組むテクノロジー企業8社レポート
<ピッチ登壇企業>
- 生産者と消費者を繋ぐ流通支援プラットフォームの「SEND」
- 急速冷凍技術のコンサルティングでフードロスを解決するデイブレイク
- 農家や漁師と消費者を繋ぐコミュニケーションEC の「POCKETMARCHE」
- データから資源の有効活用を実現する農業センサー「SENSPROUT PRO」
- 米びつのセンサーで常に新鮮なお米を届けるアプリ「米ライフ」
- 月1回から自宅にレストラン料理の材料が届くミールキット「Tastytable」
- 飲食店の予約管理・顧客管理で効率の良い飲食店経営を目指す「トレタ」
- 廃棄されそうな食べ物のシェアリングサービス「TABETE」
生産者と消費者を繋ぐ流通支援プラットフォームの「SEND」
生産者・産地支援を実施するプラネットテーブルが運営する「SEND」は、飲食店などの消費者と農畜水産物の生産者の間の流通を支援するプラットフォーム。
生産者から消費者に生産物を届けるまでには運送業者や市場、卸業者など多くの中間流通を挟むのが現状の仕組みだ。この仕組みの中で、時間の経過や卸・市場の生産物の確保などの要因により多くのフードロスが発生してしまう。
また生産物を収穫してから消費者に届くまでは、通常5日〜1週間程度かかり鮮度が落ちてしまう。にも関わらず、生産物の値段は約2.5〜3倍に上がる。この値段の上昇は生産者には反映されず、むしろ圧迫することに繋がっていく。
こういった問題を解決するため、同サービスは生産者から一定量の野菜や果物といった生産物を買い取り、東京都心部を中心とした3000店以上の登録飲食店へロスやタイムラグなく振り分け配送を実施する。生産者側はあらかじめ同社が3000店の登録飲食店の需要を予測したデータに基づいてある程度の生産予測も可能になるという。同社代表取締役の菊池紳氏によれば「ロス率は約1%程度」ということだ。
急速冷凍技術のコンサルティングでフードロスを解決するデイブレイク
特殊急速冷凍技術を用いてフードロスをなくし、飢餓問題の解決に取り組むデイブレイク。
特殊冷凍は生産された食品の温度をマイナス1℃から5℃まで急速に下げることによって、氷の結晶を小さいまま凍らせ、細胞を破壊せずに品質を保ちながら凍結することができる技術。この技術によって、時間のかかる配送時に鮮度が下がってしまうことによる食品のロスや飲食店での保管食材のロスを減らすことができる。
さらに今後は同技術を使ってフードロスをなくすだけでなく、高品質の食材を海外や遠方に届けることで美味しい食材の提供にも注力していくことを目指している。
農家や漁師と消費者を繋ぐコミュニケーションEC の「POCKETMARCHE」
全国の農家や漁師から直接食材を購入することができるアプリ「POCKETMARCHE(ポケットマルシェ)」。同サービスは生産者と消費者が直接アプリ上でやり取りすることができるのが特徴だ。
出品が出来るのは農家、漁師といった生産者に限定されており現在300人の生産者が出品している。出品商品は水揚げされたばかりの魚や収穫したばかりの米などで、消費者は市場で流通されない数量限定の旬の食材を購入することができる。
フードロスや食料危機といった社会課題を日常的な行動で解決していくにはどうしたら良いのか、という問いから生まれた同サービス。生産者と消費者がコミュニケーションをとることにより、生産者から送られてくる食べ物を消費者が大切に消費する。こういった繋がりを増やしていくことが同社の取り組みだ。
データから資源の有効活用を実現する農業センサー「SENSPROUT PRO」
SenSproutが開発する「SENSPROUTPRO(センスプラウトプロ)」は2017年4月に発売された農林水産業者向けの農業センサーシステム。
センサーを土壌に埋め込むことで水分量や地表付近の気温を測定・解析することが可能。取得したデータはクラウド上で閲覧・共有できるほか、土壌の変化を検知して知らせる通知機能も搭載している。約5年間の開発期間で、日本各地およびインドなど約300地域の実証実験を実施してきた。
同社代表取締役の菊池里紗氏は「最適な場所で最適なものを作り、いらないものを作らない」ことでフードロスを減らしたり、資源を有効活用できると考え、取り組みを進めている。今後は海外への進出も視野に入れており、特に水が限られている乾燥地帯、水が豊富で同サービスにより市場の伸びが期待できる地域をターゲットに展開していきたい意向だ。
米びつのセンサーで常に新鮮なお米を届けるアプリ「米ライフ」
自宅にあるお米を管理してくれる米びつセンサーを開発・提供する米ライフ。
同サービスは自宅の米びつにセンサーを取り付けることで、スマートフォンのアプリ上からお米の残量を知ることができる。お米が少なくなっていれば、通知が届いてアプリ上から好きなお米を届けてもらえる仕組みだ。センサーのレンタルは無料でお米は5kgで3000円を目安に購入することができる。
農家を3年間、田んぼの保善管理を2年間経験した同社代表取締役の富田航大氏は米の残量と購入タイミングに悩む米の生産者からサービスのヒントを得た。今後も中間業者を挟まないことで、安心安全なお米を提供して生活インフラのようなサービスを目指す。
月1回から自宅にレストラン料理の材料が届くミールキット「Tastytable」
ブレンドが運営するTastyTableは自宅に料理キットが届くミールキットサービス。2016年11月より公開された同サービスは1食2人分の材料や調味料、レシピのセットを毎週・隔週・月1回のペースで提供する。配達が不要な日は予定にあわせて気軽にスキップすることが出来るため食材が無駄になってしまうこともない。
同社代表取締役の田尾秀一氏は、自宅での料理が毎回同じレシピになりがちだったり普段はあまり使わない材料や調味料がロスに繋がってしまうといった課題は同サービスを利用することで解消できると話していた。今後は「美味しい料理を楽しく作れる体験」というブランド化で他サービスと差別化を図る。
飲食店の予約管理・顧客管理で効率の良い飲食店経営を目指す「トレタ」
トレタは飲食店の予約管理・顧客管理のシステム。同サービスは受け取った予約を紙の台帳で管理している飲食店のデジタル化を促進する。電話とネットの予約ブッキングを防いだり、店舗の席を効率よくお客さんに提供することで店舗の売り上げに貢献する。
同社取締役の吉田健吾氏によれば予約時間直前のドタキャンよりも無断キャンセルが食品や時間の無駄に繋がってしまうことがわかっているという。ドタキャンであれば作らなくて良い料理も無断キャンセルでは用意をして席を空けておかなければならない。
そこでトレタではSMSの予約確認メールから予約キャンセルの動線を作成するなどの取り組みを実施している。予約を増やすことで需要予測をたて、適正発注や飲食店経営に活かしていくことを目指す。
廃棄されそうな食べ物のシェアリングサービス「TABETE」
廃棄されそうな食べ物のシェアリングサービスTABETEを8月リリース予定なのがCocooking。
同サービスは飲食店や惣菜販売店といった事業者がロスになりそうな食べ物をプラットフォーム上で販売できるサービス。購入された食べ物はプラットフォーム上で決済され、消費者が直接お店で受け取りをする。事業者は手数料等を差し引いた売上の65%を取得することが可能で、売上の5〜10%はNPO法人やこども食堂に寄付される。
まずは東京都内を中心に展開し、現状の発生している食べ物のロスのコスト削減やロスを通じて飲食事業者と新規顧客を繋いでいく。
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