「消費者が好むかは二の次」、テスラが発表したサイバートラックの衝撃

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Image Credit : Tesla

ピックアップTesla Cybertruck will get up to 500 miles of range and start at $39,900

ニュースサマリー:電動自動車メーカーのTeslaは11月22日、ロサンゼルスで行われたイベントにて電動ピックアップトラック「Cybertruck」を発表した。Cybertruckは、まるでSF映画に登場するかのような見た目を特徴とし、大きな反響を呼んでいる。

イベントでプレゼンを行なった創業者のイーロン・マスク氏によれば、テスラ は2021年に3つのタイプのCybertruckの販売を開始し、最安モデルの価格は39,900ドル(約435万円)程度になるという。事前予約は既に同社ウェブサイトから受け付けを開始している。

同氏のプレゼンにて、Cybertruckの頑丈さをアピールするデモンストレーションも披露された。しかし不運なことに、このデモは一部失敗に終わってしまった。

デモはデザイナーを担当したHolzhausen氏がCybertruckの装甲をハンマーで殴る形でスタートした。このハンマーによる強打では装甲に一切傷はつかず、Cybertruckの強靭さが際立った。

ところが、次に行われた鉄球をドアガラスに投げつけ、ドアガラスの耐久性をアピールするパフォーマンスでは球がガラスを突き抜け車内に入ることはなかったものの、ドアガラスに大きな割れ跡が残ってしまうという事態が発生した。会場では少し笑いが起こり、マスク氏が改善を誓う形で幕を閉じた。以下の動画で実際にそのデモの光景を見ることができる。

話題のポイント:失敗デモに話題が集まってしまいましたが、実は他に注目すべき点がありました。それはCybertruckの独特のデザインについて、マスク氏が「人々が好むかどうかはあまり気にしていない」と発言していた点です。

フラットかつ角ばった外装や、車両前側のシャープなライトなど、確かに独特でSFチックなカッコよさが際立つ一方、万人受けする印象はありません。これには、SF好きなマスク氏の願望が大きく影響を及ぼしていると予想できます。

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Image Credit : Tesla

というのも、ピックアップトラックを製造することは、同氏がかなり前から切望していたのです。事実、2012年の時点、モデルSの開発を実施している時点から以下のようなツイートを残しています。

2018年、計画段階のピックアップトラックについて「未来のサイバー・パンク的な、映画ブレードランナーのようなデザインになる」との発言しています。

ここまで聞くと市場性を無視した製品だと思われるかもしれません。実際、発表の22日にTeslaの株価は5%以上の下落を見せています。

しかし11月24日のMusk氏のツイートによれば、Cyberuckには既に14万件以上のオーダーが来ているとのことです。たとえこれがマスク氏本人の趣向を存分に発揮したエゴイスティックなプロジェクトだったとしても、Cybertruckが経営にとってマイナスになるリスクは低く、それどころか、むしろ大きく貢献するという予想もあります。

なぜなら、米国全体で近年ピックアップトラック市場は拡大し続けており、かつトラックは高い収益性を発揮できるプロダクトだからです。その証拠に、FordやGMなどの大手自動車企業も、すでにピックアップトラック市場へ参入を予定し、販売準備を行なっています。

厳しい市場競争が待ち受けていると言い換えることもできますが、市場全体を考えると決して”好きなものを作る”という短略的な考えだけで作られたプロダクトではないことが分かります。Tesla社の確立されたブランド力に加え、Cybertruckの独自のデザインがもし消費者の心を掴むようなことがあれば、同社は利益を増加させることに成功できるでしょう。

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