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機械学習は次のステージへーーMIT研究者が発明、“No-Hardware AI”「Neural Magic」のインパクト

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ピックアップ:Neural Magic gets $15M seed to run machine learning models on commodity CPUs ニュースサマリ:“No-Hardware AI” 企業を謳う「Neural Magic」は、11月6日、シードラウンドにて1,500万ドルの資金調達を実施したと発表した。出資者にはComcast Ventures NEA、Andre…

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Image Credit : Neural Magic HP

ピックアップ:Neural Magic gets $15M seed to run machine learning models on commodity CPUs

ニュースサマリ:“No-Hardware AI” 企業を謳う「Neural Magic」は、11月6日、シードラウンドにて1,500万ドルの資金調達を実施したと発表した。出資者にはComcast Ventures NEA、Andreessen Horowitz、Pillar VC、Amdocsが名を連ねる。

同社は、MITでマルチコア処理と機械学習を長年研究してきた2人の研究者によって2018年に設立された。ディープラーニングモデルを処理する高コストなGPUやTPUなどの専用AIハードウェアを使うことなく、汎用CPUでより大きなモデルをより速く、より高い精度で処理するソフトウェアを開発する。

調達した資金は機械学習エンジニア、ソフトウェアエンジニア、セールスおよびマーケティングの採用に使われる。

話題のポイント:現在、AIの躍進を支えるのはムーアの法則(1965年にインテル共同創業者のGordon E. Moore氏が唱えた「集積回路の実装密度は18カ月ごとに2倍になる」)をなぞるように発達したコンピュータの計算能力であることは周知だと思います。

しかし、見方を変えれば2012年以降、常にAIのあしかせになっているのがハードウェアでしょう。画像処理でよく用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練する場合、GPUのメモリ制限内に収まるように画像サイズやデータセットを縮小する必要があります。こういった精度を犠牲にするやり方は、大規模な医療画像データセットを使用する場合、好ましいとはいえません。

実際、AI専用のチップセットを作る大手NvidiaのチーフサイエンティストのBill Dallyは「ディープラーニングはハードウェアによって完全に制限されている」と述べています。

機械学習が実用的かどうかは予測の速度、効率、精度が判断基準となります。高いレベルで実行されれば適用事例は格段に増えるはずです。

さて、ここまで書いたことがよく知られている一般的な話です。

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Image Credit : Neural Magic HP

今回取り上げた「Neural Magic」は“No-Hardwawre AI”を謳う企業です。高価なAI専用GPUやTPUを使わずに、誰でも持っているPCに入っている汎用CPUで大きなディープラーニングの高性能実行するためのソフトウェアを開発しています。

Neural Magicがユニークなのは「ハードウェアはボトルネックだが、ソフトウェアでもっとできることはないのか?」というニーズに応えている点です。

同社はコネクトミクスの研究を起点に以下を提供すると発表しています。

  • 汎用CPUで大規模なディープラーニングモデルを実行した場合、条件によっては最大10倍のコスト削減
  • 精度を犠牲にすることなくGPUと同等のパフォーマンスを実現
  • 既存のツールと連携し、必要な場所(オンプレミス、クラウド、またはエッジ)に展開できる柔軟性

CNNが適用できる領域に限られますが、ハードウェアの発展に頼らず低コスト化とハイパフォーマンスを実現できる衝撃は大きいです。仮にGPUと併用できるならハイスペックマシーンを社内で取り合うことは間違いなくなくなるでしょう。

ちなみに、CNNが適用できる領域を少し紹介すると、衛生画像や医療画像の分析、音声認識、感情分析、SpotifyやTikTokのレコメンデーションなどが挙げられます。ディープラーニングが得意とする画像分析に含まれているので十分な適用範囲といえます。

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Image Credit : Neural Magic HP

たとえハードウェアの効率化をしたとしても、導入企業からすればスイッチコストが非常に高くなります。一方、ソフトウェアは入力と出力の型を統一しておけば、新しいコンセプトのソフトウェアが登場したとしても柔軟に対応できます。

また、ビッグデータの取り扱い需要の高騰に伴い、これまで表計算程度の処理で済んでいたシステムに限界が押し寄せるでしょう。そのため、リレーショナルデータベースや基幹系システムに代わる新たな仕組みに期待が集まります。

そこで最小限の処理機能しか想定されていなかった従来型ソフトウェアの大幅アップデートがAI市場で起こると感じています。この再発明はスタートアップにとって大きなチャンスが眠っており、Neural Magicはまさにそこを突きました。

Neural Magicは資金調達の翌日、最初の製品となるNeural Magic Inference Engineを発表しました。現在、アーリーアクセスができる状態です。Pytorch、Tensorflow、Caffeなどの主要な機械学習フレームワークからONNXファイル出力で動作します。気になった方は是非試してみてください。

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シンガポールにおける「フィンテック+AI」市場カオスマップ

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Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから。 東南アジアにおいてシンガポールはフィンテックハブとなっている。また、近年ビックデータを駆使して金融業界で大きな変革が起きている。 Vertex Ventures はシンガポールの「フ…

Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから


東南アジアにおいてシンガポールはフィンテックハブとなっている。また、近年ビックデータを駆使して金融業界で大きな変革が起きている。

Vertex Ventures はシンガポールの「フィンテック + AI」領域が東南アジア地域のスタートアップ業界の成長エンジンとして働き、シンガポールのスタートアップをさらに成長させると信じている。

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Photo credit: Lenny K Photography

フィンテック + AIの定義

フィンテック + AI スタートアップの境界を定義することは容易ではない。分布図として見た場合、両端にはスタートアップの2つのタイプがある。一方にはAI特化型スタートアップがあり、金融機関(FI)がAI企業へと変わることを手助けすべく、技術やサービスを提供することに注力している。反対の非AI特化型スタートアップはAIの力とビジネスモデルのイノベーションを組み合わせ、伝統的なFIと正面から競合している。

私たちはAIはどのようにFIの手助けができるのか、どのようにFIと競合しているスタートアップの力になれるのかを理解するために分布図全体を見てきた。一般的にスタートアップはいくつかのカテゴリに分類することができる。

  1. 「アルファ(群のリーダー)」の地位を達成しようと注力する者(市場平均以上の利益を求める企業)
  2. レンディングサービス企業(アルファ達成と似ているが、レンディング分野におけるもの)
  3. 「ベータ(群の2番手)」の地位を達成しようとする者(少なくとも市場の平均的な利益を獲得し、パーソナライゼーションを手助けする一般的な企業)
  4. リスク管理を行う企業(規制やコンプライアンス関連のスタートアップ)
  5. 上記企業を手助けすることができる一般的なテックスタートアップ
  6. 顧客管理やマーケティング支援を行う分野(これら企業の定義は抽象的であるため最後にまとめた)

シンガポールにおけるフィンテック + AI の概観

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Photo credit: Vertex Ventures

これまでの私たちのリサーチに基づくと、AI特化型企業からそうでない企業まで、およそ40社のフィンテック+AIスタートアップが存在する。分かりやすくするために、これらの企業は以下の分野にカテゴリ分けすることができる。

  • パーソナルファイナンス:特にロボアドバイザーのカテゴリは、最も成長性のある分野として最初に挙げられる。これは東南アジア地域のフィンテックハブであり世界でトップクラスの金融センターでもあるというシンガポールのポジションに関連している。これは発展したシンガポール市場にとってチャンスであるが、多くの新興市場では人々が資産管理という概念を理解するのには時間がかかるため、サービス受け入れは未だ初期段階にとどまっている。適切な市場啓蒙の方法を見出し、新興市場の大衆を巻き込めれば、非常に大きなチャンスが訪れるだろう。
  • 規制、コンプライアンス、詐欺検知:これは2番目に活発なカテゴリとして挙げられる。規制へのコンプライアンス、特にマネーロンダリングに関するものは、シンガポールにおいて常にトップの懸念事項であるためだ。AIを活用して正確性を向上させると同時にコンプライアンスのコストを下げるということは、当然ながら優先順位が高くなる。今後は金融機関によって異なるニーズに合わせたカスタマイズに対処することが主要課題となる。
  • 予測分析:一般的なカテゴリとして、この分野が3番目に挙げられる。シンガポールは強力なテック人材の宝庫であり、金融機関やその他の産業分野の役に立つ潜在的に大きなチャンスがあるということを反映している。
  • クレジットスコアリング・貸付:中小企業への貸付けは2016年からシンガポールで大きな注目を集めているが、消費者金融は未だ急成長を見せていない。この分野は他のASEAN諸国では狂騒的な様相を呈しており、特にインドネシアでは2018年のレンディングのプレイヤー数が数百社を超えている。しかしシンガポールでは銀行業や貸付業のシステムが確立されていることや、強力な規制があることを考えれば、これが小さなカテゴリに留まっていることも不思議ではない。多くの人はシンガポールで消費者金融を規制しているのが財務省ではなく法務省であることにも気づいていないだろう。この分野の規制が緩和されたのはつい最近のことであり、これからの成長が期待される。
  • アセットマネジメント:直接的なリターンを生み出すという点で、おそらく多くの人にとって最も興味深い分野だと思われるが、(ウォールストリートの企業が数十億ドルを投資していることからも見て取れるように)最も理解が難しい分野でもある。現地のデータへアクセスするという点でこの地域のスタートアップには分があるため、民間の資産分野は興味深い領域だと私は考えている。

以上はシンガポールにおけるフィンテック + AI の概観に当たるものである。市場を完璧に表したものではなく、欠けているスタートアップについての提言やコメントは歓迎したい。

東南アジア地域のフィンテック+AIのリーダーとしてのシンガポール

シンガポールにはフィンテック + AI の発展において有利なものとなる点が多数ある。金融分野の重要性、ディープフィンテック人材の数、そして AI クオリティ向上とクラスタを作り上げようとする重大な取り組みである。

さらに、シンガポールの監督官庁であるシンガポール金融管理局(MAS)は、業界の発展を進めるという点で非常にオープンな意識を持ち、積極的なアプローチをとっている。同局はイノベーションを進んで受け入れ、金融機関が様々なテクノロジーのパイロット版を試すことができるようファンドを立ち上げ、リスクを取るという意識を奨励している。

MASはリスクが高すぎると見なした場合にのみ介入する。同局は特定の重要な AI 研究を進める取り組みも行っており、金融業界が自身のインフラを開放するよう奨励しているが、この点はまだ重要課題として残っている。

Vertex Ventures はこの分野におけるスタートアップの質と多様性に非常に感銘を受けている。オープンバンキングの発展と来るべき新たなデジタルバンクのライセンス発行が合わさり、シンガポールはフィンテック + AI のイノベーションの世界的なリーダーの一角となる途上にあると考えている。

本稿は当初Mediumで発表された記事を編集したものである。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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AIでソフトウェアテストを自動化する「Autify」が250万ドル調達ーー世界のテストエンジニア不足問題を解決する

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10月2日、AIを用いたソフトウェアテスト自動化プラットフォーム「Autify」がシードラウンドにて250万ドルの資金調達を発表した。引受先となったのはグローバル・ブレイン、セールスフォースベンチャーズ、アーキタイプベンチャーズ、その他個人投資家複数名。 今回の調達で累計の資金調達額は307万ドルに到達。3月からクローズドβ版としていたAutifyの公式ローンチも発表された。 Autifyは201…

10月2日、AIを用いたソフトウェアテスト自動化プラットフォーム「Autify」がシードラウンドにて250万ドルの資金調達を発表した。引受先となったのはグローバル・ブレイン、セールスフォースベンチャーズ、アーキタイプベンチャーズ、その他個人投資家複数名。

今回の調達で累計の資金調達額は307万ドルに到達。3月からクローズドβ版としていたAutifyの公式ローンチも発表された。

Autifyは2019年2月、米国アクセラレータ「Alchemist Accelerator」のプログラムを日本人チームとして初めて卒業したスタートアップ。以来、150超のデモリクエストを獲得し、現在の公式リリースに至る。調達した資金はプロダクト開発体制・販売体制の強化、グローバル市場の開拓に活用する予定とのことだ。

<参考記事>

Autifyが解決する市場課題はエンジニア人材の不足に伴う、ソフトウェア検証作業の不備だ。同社によると、グローバルでは既に92%が高速で開発サイクルを回す考え「アジャイル開発」を採用しており、そのうち71%が週1回以上のリリースを希望しているという。

一方、人力で検証作業を行なっていてはチームが求める開発スピードに一切追いつかない。たとえばスタートアップでは多少の機能不備があったとしてもアップデートをかけてしまう。しかし大手企業のサービスとなるとそうはいかない。

ユーザーからのバグ指摘は製品のみならず、企業ブランドにも直接影響を及ぼしかねない。複数のサービスを立ち上げている大企業にとって、関連サービスの評価にも影を落とす可能性もある。

そこでAutifyが登場する。プログラムコードを書くことなく、ウェブアプリケーションの検証作業が自動化を可能とし、非エンジニアでも手軽にテスト自動化ができる。

また、AIがアプリケーションコードの変更を監視し、自動で検証シナリオの修正を行うため、メンテナンスコストを大きく下げられる点も大きな特徴の1つ。従来、検証作業のための自動化コードを仕込んでいても仕様がすぐに変更されてしまうという事案の課題解決も目指す。

さて、現在は日本企業向けにサービスの拡大をしているが今後は海外進出を本格化させる予定だという。そこで欧米の市場状況にも軽く触れておきたい。

ソフトウェアテスト市場には一定の需要が発生していることは他社の資金調達状況からも明らかだ。8月には直接競合になり得るSpotQA」が325万ドルを調達している。少しアプローチは違うが、コードレビューを自動化するDeepCode」は400万ドルを調達。いづれもAutifyとほぼ同額の調達をしていることから資金力は拮抗していると言えるだろう。

昨年には機械学習を使ったソフトウェアテストを行うMabl」が1,000万ドル調達。2012年のYCombinatorプログラムを卒業したテスターをクラウドソーシングで集める外注サービスRainforest QA」は2,500万ドルもの調達に成功している。

競合スタートアップの資金調達の動きを見ると、Autifyの成長余地および市場需要は大いに残されていると思われる。3-4年以内に欧米基準のシリーズA・Bに達することも見えてくるかもしれない。そこで代表の近澤 良氏にAutifyの競合優位性と海外市場攻略のための長期戦略を最後に聞いた。

近年、アジャイル開発の浸透によりソフトウェアテストの自動化が大きな注目を浴び、急速に市場が拡大しています。グローバル規模でのテスト市場はIT市場の1/3をも占める約120兆円の超巨大市場に成長。向こう5年程でおよそ1/10が自動化市場になると予測されています。

一方、市場に存在する製品はエンジニアでないと使いこなせないような、専門的な知識を必要とするものがほとんどです。多くの企業はエンジニア不足に頭を悩ませており、非エンジニアにも自動化をスケールできるソリューションを求めている需要に応えきれていません。

そこでAutifyはコーディング不要で誰でもアカウントさえあれば、簡単にクロスブラウザのテストが自動化できる製品を開発しました。どんな人でも扱える手軽さをグローバル市場展開するための大きな差別化ポイントとし、今後拡大する市場需要に最適な形で応えていきます。

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Forever 21、再建の道はAI × 不動産?ーーSaaSによるファストファッション大再編の兆し

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ピックアップ: Forever 21 might file for bankruptcy. What does that actually mean? ニュースサマリー: 8月末、世界中に約800店舗を展開するファストファッション・ブランド「Forever 21」が破産申請の準備をしていると報じられた。同社は推定年間売上高が30億ドルを超えている。加えて、日本法人は10月末をもって撤退することが決…

ピックアップ: Forever 21 might file for bankruptcy. What does that actually mean?

ニュースサマリー: 8月末、世界中に約800店舗を展開するファストファッション・ブランド「Forever 21」が破産申請の準備をしていると報じられた。同社は推定年間売上高が30億ドルを超えている。加えて、日本法人は10月末をもって撤退することが決まっている。

2017年以降、米国大手小売店舗の代名詞であった「Sears」や「Toys R Us」を筆頭に破産が伝えられているが、Forever 21も実店舗を軸に成長を遂げてきた企業としてここに名を連ねることになってしまった。AmazonなどのEC事業者に市場シェアを徐々に奪われたことも大きな要因のひとつだろう。

『Vox』の記事によるとこうした小売企業は買収を通じて事業拡大をする傾向にあり、買収資金のための一時的な借入金や金利返済の割合が高まった結果、利益率の低迷を引き起こすことに繋がった。ここに追い討ちをかけるように小売市場再編に伴う実店舗での収益の落ち込みが発生、経営が立ち行かなくなるケースが増えている、というのが大きな流れのようだ。

9月末の現時点ではForever 21の破産が決定したわけではない。しかし、日本市場から撤退方針がすでに決まっていることから、事業縮小の運びになることは間違いない。債務整理を行ったのちに改めてブランドが0からスタートを切る可能性についても記事では述べられている。

話題のポイント: 2、3年ほど前から、実店舗企業が衰退していくニュースを度々目にしてきました。事実、『CNBC』の記事によると、2019年の店舗開店数は5,994に上る一方、閉店数は2,641に達すると予測されています。Forever 21もこの負の連鎖に巻き込まれてしまった形といえます。

さて、Forever 21に代表される大手アパレル企業がドミノ倒しに破産申請していく可能性も否めない昨今、ファッションブランドが生き残る術はSaaS化を図ることに尽きると感じています。3例ほど企業を挙げます。

1社目はパリ拠点のアパレル市場向けAI企業「Heuritech」。2013年に創業し、9月3日に440万ドルの資金調達を発表しています。同社はインターネット上に落ちている画像や文字データをコンピュータビションで分析し、リアルタイムの消費者トレンドを読み取るサービスを展開。

2017年に独自データ分析プラットフォームを本格的に立ち上げ、Louis VuittonやDior、Adidasを顧客に抱えます。300万以上のデータを日々分析し、約2,000ほどの画像パターンを弾き出すとのこと。このパターンがトレンド商品のもととなる色・形状・製品カテゴリーに当てはまります。

ビックデータ解析によるトレンド商品開発の高速化を図るのが最近の市場トレンド。パリコレクションやロンドンコレクションなどの世界的なファッションショーを見てから毎年の推し商材を決めて生産するペースでは追いつけないスピード感になっています。そこで登場したのがHeuritechというわけです。

一方、トレンドデータを持つだけでは消費者に商品を届けることができません。そこで登場するのが2社目の「The/Studio」。2013年に創業し、2018年にシリーズAにて1,100万ドルの資金調達を行なっています。

The/Studioはオンデマンド・アパレル商品生産プラットフォームを提供するスタートアップ。顧客企業はプラットフォームを通じてアパレル商品の設計から生産までを手軽に発注できます。世界約5,000の工場をネットワークに持ち、NikeやAdidasなどを含む10万超の顧客が登録済み。累計3,200万品を超える製品の設計および生産をおこなっています。

Airbnbのようなマーケットプレイス概念を世界中に点在するアパレル商品の生産工場に適用。一括管理することで各アパレル企業が小プロセスで大量生産体制に至るまでをサポートしています。まさに生産工場市場のSaaS化を果たしたのがThe/Studioといえるでしょう。

ファストファッション企業にとって最も脅威となるのが、トレンドデータを持つHeuritechが製造網を持つThe/Studioを活用して商品販売にまで至る戦略を描いてくるシナリオでしょう。いまではShopifyを通じていつでもEC店舗を立ち上げられることから、店舗の立ち上げ自体も非常に容易。データさえ持っていれば自社ECファストファッション・ブランドを立ち上げることが可能です。

AIによるトレンド分析を軸に、高速で商品生産をおこなえば、売れ筋商品だけを展開できるため非常に高確率で全ロットを売り切ることに繋がります。実際、昨年お伝えした「Choosy」はまさに同じモデルを展開しています。

Choosyは人気インフルエンサーのスタイリングを識別するAI画像認識アルゴリズムを導入。分析結果からどのようなスタイルがインフルエンサーに人気で、トレンドになっているのかというデータを抽出。同データを参考にしつつ、デザイナー達が人力で10パターン以上のコーディネートを選択。中国拠点の工場で高速生産をおこないます。

このようにAIスタートアップがアパレル市場をディスラプト(破壊)・再編する兆しが見え始めているのが現状です。では、Forever 21は市場再編のなかでどのような生き残り戦略を考えられるのでしょうか。1つのアイデアとしてはAIを活用した不動産事業に終始する業態を目指すことです。

Forever 21の最大の競合優位性は立地の良い場所に店舗を構えている点と、Instagramに1,600万以上のフォロワーを持つ分厚いファン層でしょう。熱量の高いコミュニティ群を各国に持っているのがForever 21。先述したスタートアップ3社では持ち得ない「顧客とのダイレクトチャネル」を持っています。

ここで仮にForever 21がトレンド商品の立案・提携工場での生産を外部に任せ、AIを基にした商品展開と店舗運営のみに特化した仕組み作りをした場合、他のファストファッションとは一線を画せる可能性が見えてきます。

具体的には下記のような業態になるのではないでしょうか。

  • (1) Heuritechらから仕入れたビックデータに基づいたトレンド商品アイデアを世界中のデザイナーたちに開放
  • (2) 世界中のデザイナーたちはアイデアを基に商品デザインをアップデート。商品化できる形にまで仕上げる
  • (3) 一定金額の出店費用を支払ってもらう代わりに、売上をシェアする契約をデザイナーと結ぶ(月額3,000ドルからForever 21の該当店舗に商品を置ける契約など)
  • (4) 契約締結と同時に、The/Studioらの外部プラットフォームに高速生産を外注
  • (5) Forever 21ブランド表記で商品を販売し、1,600万フォロワー基盤に対して展開
  • (6) ブランド価値を損ねない一方、各商品のアイデアは世界中の著名デザイナーとの共作であり、単なるトレンド商品以上の価値提供が可能
  • (7) 出店費用を肩代わりしてもらっているため損失計上は最大限免れる計算。データに基づいた商品設計がされているため、売上を両者とも高確率で担保できる

「トレンドデータの収集」「効率的な製造および物流網」を外部に委託する形で、圧倒的な顧客体験とサプライチェーンの仕組み化をしてしまうことで各生産工程の効率化を図る構想です。収益は売り場の貸し出し金から発生するため、事実上の不動産事業化する考えです。EC事業者向けに商品ブースを貸し出す「b8ta」や「Bulletin」のモデルを踏襲しています。

10代〜20代前半を指す最新消費者層「ジェネレーションZ世代」の75%が実店舗でのショッピング体験を重視すると答えているといいます。店舗体験は未だ完全に廃れているわけではないため、顧客との対話の場所として価値は眠っています。この点、リソースを店舗運営にのみ特化させることでForever 21の経営再建に繋がる可能性があると感じています。

いずれにせよ、AIスタートアップがアパレル市場に切り込んで来てからすでに2、3年の月日が経ちます。いつデータサイエンスを事業基盤に置いた次世代ファストファッションが登場してもおかしくないと思います。

そこでForever 21はAIトレンドを味方につけた新たな小売業態の採用が必要となるでしょう。上記に挙げたのは私が考えた粗いアイデアに過ぎませんが、自社で商品企画から生産体制までを回すサプライチェーンを持ち続けるコスト感は維持できないと感じています。

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「社員ファーストの企業文化作りを」ーーAIによる従業員エンゲージメント「LEAD」が米「Alchemist Accelerator」を卒業、日本人2人目

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サンフランシスコを拠点に2017年創業された従業員向けAIマッチングサービス「LEAD」が9月20日、米国アクセラレータ「Alchemist Accelerator」のプログラム卒業を発表した。 LEADは普段交流が少ない従業員同士をコーヒーやランチタイムの機会を通じてマッチングさせるサービス。社内の異なる部門やチームのメンバー同士を繋ぎ、コミュニケーションを円滑にするといった場面での活用を目指し…

LEAD共同創業者の木村祐美氏

サンフランシスコを拠点に2017年創業された従業員向けAIマッチングサービス「LEAD」が9月20日、米国アクセラレータ「Alchemist Accelerator」のプログラム卒業を発表した。

LEADは普段交流が少ない従業員同士をコーヒーやランチタイムの機会を通じてマッチングさせるサービス。社内の異なる部門やチームのメンバー同士を繋ぎ、コミュニケーションを円滑にするといった場面での活用を目指しているという。

LEADを利用するにはSlackやGmailに代表される社内コミュニケーションシステムと連携するだけ。現在、Fortune 500から数社を含め、パイロットテスティング及び無料版ボット利用実績数は合わせて約20社に上る。また、英語圏のみならず日本市場向けの最適化も目指して動いているという。日本語版ボットの詳細はこちら

同社は日本人起業家、木村祐美氏が共同創業者として設立した米国スタートアップ。日本人起業家のスタートアップでAlchemist Acceleratorプログラムを卒業した事例ではAutifyに次いで2社目となる。

日本の既存投資家にはベンチャーキャピタル「ISGS」、その他13名のエンジェル投資家が名を連ねる。米国からはBRDのAdam Traidman氏、Oculus共同創業者のMicheal Antonov氏、Alcehmist Acceleratorが投資している。

LEADは従業員エンゲージメントの高い企業文化作りをサポートする目的で開発されたエンゲージメントソフトウェア。日本でも頻繁に取り上げられる「働き方改革」への貢献を目指す。

LEADが解決する課題は大きく2つ存在する。1つは従業員満足度を上げるためのデータ分析。

従来、従業員満足度を計測するためのデータは自由記述入力のサーベイ手法。定性データという特色から、回収手法によってデータ不備が多分に見られた。

そこでLEADはAIを用いた従業員満足度の匿名分析機能を併せ持つ。SlackやGoogle Suite、各社が利用するHRツールと連携し、従業員の行動傾向をデータ化。簡単な質問内容をまとめたサーベイデータを効率的に集めるように定期的にメッセージを送る。各チャネルから収集された満足度データを統合し、分析結果を即座に出力できるようにした。

各従業員のパーソナライズ趣向データを分析してマッチング精度向上を図る。エンドユーザーはLEADの分析結果に従って提案されるマッチングサービスを受けるだけのシンプルな使い方になっている。

知らない同僚と仕事について話す機会を設けたり、メンターとのマッチング機会を創出することで企業全体の従業員エンゲージメント率を向上させ、最終的に仕事場に対する満足度を上げる狙いである。

従業員のエンゲージメント向上は、四半期や1年毎に実施される従業員アンケートでは決して達成できない。長期的に満足度を上げるための質の高い従業員体験を提供し続けることで初めて達成される。LEADはこうした企業側の手の回らない需要に応えようとしている。

2つ目の課題は従業員が会社で孤独になっている現状だ。

40%の従業員は職場で孤独感を感じ、企業への帰属意識やロイヤリティーを著しく欠いているというデータがある。また、ミレニアル世代の75%がメンターを欲しいと望んでいるが、そのうちの2%しか実現していないというデータも発表されている

一方、職場に一人でも気さくに話せる同僚がいるだけでエンゲージメントが3 – 7倍へ増えるという米国過去30年間の職場データも存在する。加えてメンターが出来れば、いない時と比べて同じ職場に5年以上いる確率が2倍へと跳ね上がるというデータもあるとのこと

このように現実と理想に大きな乖離が発生しているのが企業の現状である。従業員が一人で仕事をこなし、何か問題があっても一人で抱え込んでしまうような環境改善も行うソリューションを提供することで市場ポジションを確立したい考えだ。最後に木村氏からコメントをもらったので紹介したい。

2016年、Meitu Technology日本支社のカントリーマネージャーを務めていた際、従業員と1:1チェックインの機会を持ちました。

チームを効率的に運営するため必要なリソースの根回しも必要であったことから、会社内の人とのコーヒーやランチミーティングは非常に効果的だったことを覚えています。実際、1年間で日本市場のシェアを30%上昇させる難しいKPI達成にも繋がっています。

こうした経験から社員間の友情やメンターシップに気付きLEAD誕生に至ります。その後、日米の企業社員3,000人にインタビューを実施。市場課題を洗い出し、私たちのソリューションが効果的であるという点を検証しました。LEADをβ版テストユーザーのフィードバックを基に改善してようやくリリースに漕ぎ着けることができました。

日本語版リリースに当たり、日本企業が改めて従業員エンゲージメントを見つめ直し、職場体験をデザインする「働き方改革」の一環としてLEADをぜひ活用していただきたいと思っています。

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教師の低給与・高生活コスト問題に挑むLandedーー解決方法は「AI × 住宅証券」

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ピックアップ: Landed raises $7.5M million Series A to help teachers buy homes ニュースサマリー : 都市部に住む教職員向け住宅ローンサービスを提供する「Landed」がシリーズAで750万ドルの資金調達したことを発表。勤務先学校近くの住宅購入をする教員に頭金5〜10万ドルを提供するサービスを提供する。 Landedの頭金は返済義務の…

ピックアップ: Landed raises $7.5M million Series A to help teachers buy homes

ニュースサマリー : 都市部に住む教職員向け住宅ローンサービスを提供する「Landed」がシリーズAで750万ドルの資金調達したことを発表。勤務先学校近くの住宅購入をする教員に頭金5〜10万ドルを提供するサービスを提供する。

Landedの頭金は返済義務のあるローンの形ではなく住宅売却益のうち最大25%をLanded側が所有する利益オーナーシップ分配契約。たとえば購入から数年後に物件を売買する話になり不動産価値が10万ドル上がっていた場合、2.5万ドルの利益が確定するビジネスモデル。

最大の特徴は損失益も肩代わりする点。仮に10万ドルの売却損が確定してしまった場合、頭金から2.5万ドルが差し引かれる計算になる。顧客は将来の不動産価値に応じてLandedのリターン額が柔軟に変化するため、金銭負担が発生するリスクを極力減らすことができる。

教職員の給与は依然として低く、かつ都市部となると生活コストが年々と上がっている都市部特有の課題を解決するサービス。教職員から展開を始め、専門職向けにファイナンシャル・セーフティネットワーク構築を目指す。

2年前、Facebookの創業者であるZuckerberg夫妻が立ち上げた教育特化ファンドから資金調達をしている。また、著名アクセレータYCombinatorの2016年冬のプログラムを卒業している。

話題のポイント : Landedのサービスから考えられる新たなビジネスモデルに「AI ×不動産証券」が挙げられるでしょう。

数年後に確定する住宅売却益を周辺の地価上昇率データからAIが予測。利益が期待される物件を購入したい教職員と機関投資家とマッチングさせ頭金を集金。最大10万ドル分の頭金を証券化させ投資家に分配すれば、Landed側が多額の初期投資を費やすリスクがなくなる構造です。

上記のように頭金の支払いに機関投資家を絡ませた住宅購入サービスを展開するスタートアップが「Loftium」です。

同社は頭金最大5万ドルを機関投資家から獲得。顧客は購入物件の数部屋を2-3年間Airbnbに掲載させ、民泊サービスで得た利益を投資家へ分配する契約を結びます。民泊サービスの利益はAIを活用した需要予測によって計算できるため一定のリターンは期待できます。

AIを活用することでリスクヘッジを図れます。加えて証券化することで効率的に住宅購入資金の調達を効率的に行えるはずでしょう。教育機関はこうしたコンセプトを取り入れることでHRやCSRの観点から大きなメリットを得られると感じます。

教育機関がLandedやLoftiumに代表される不動産スタートアップと提携することで、頭金肩代わりを福利厚生として掲げられ、積極的な職員採用に動けるかもしれません。現在日本でも社会問題になっている保育士さんや小学校教職員の低給与問題を解決する取っ掛かりになるはずだと感じます。

サンフランシスコと比べて依然東京の物価は比較的安い方ですが、都市一極集中が進めば家賃高騰を筆頭に生活コストが上がるのは必至。こうした市場トレンドを予測して教職員に特化した不動産フィンテックサービスは日本でも十分に望まれるでしょう。

先日紹介した「Unmortgage」や「Divvy Homes」に代表されるように、欧米では不動産購入資金の頭金に注目したスタートアップが多数登場しています。

海外の不動産テックトレンドを汲んだLandedがシリーズAまで成長する流れは自然のように思えます。同社は教職員向けに特化していますが今後は一般企業の従業員向けに同様のサービスを外販する企業が登場するかもしれません。

Image Credit: Christian Flores

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「テストエンジニア採用は不要」——日本人初、AIを活用したソフトウェア自動テストツール「Autify」が米国アクセラレータ「Alchemist Accelerator」プログラム卒業を発表

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サンフランシスコを拠点とするソフトウェアテストの自動化AIサービス「Autify」が1月24日、米国著名アクセラレータ「Alchemist Accelerator」のプログラム卒業を発表した。 Autifyは2016年に日本人起業家の近澤 良氏が創業したスタートアップ。利用企業は同社ツールを導入することでソフトウェアテストの自動化を図れる。Autifyのブラウザ拡張機能を用いてマニュアルテストの操…

壇上に立つのはAutify創業者の近澤 良氏

サンフランシスコを拠点とするソフトウェアテストの自動化AIサービス「Autify」が1月24日、米国著名アクセラレータ「Alchemist Accelerator」のプログラム卒業を発表した。

Autifyは2016年に日本人起業家の近澤 良氏が創業したスタートアップ。利用企業は同社ツールを導入することでソフトウェアテストの自動化を図れる。Autifyのブラウザ拡張機能を用いてマニュアルテストの操作を記録し、クラウド上で再生することで誰でもソフトウェアテストの自動化を可能にする。AIがソフトウェアの変更を監視し、影響のあるテストスクリプトを自動的に修復することでメンテナンスコストを大きく下げる仕組みだ。

企業の73%が未だマニュアル作業でソフトウェアの品質保証を行っているという。加えて、ソフトウェアテスト向けのオープンソースサービスは多く市場に登場しているが、各ツールの知見を持つテストエンジニアの数が少なく、採用が困難なのが現状だ。実に1/3のIT予算がテストに費やされており市場規模は12.2億1.22兆ドルに及ぶとのこと。

一方、90%以上の企業がアジャイル手法を率先して取り入れ、70%超が1週間に1度は自社ソフトウェアをアップデートしてリリースしたいといった需要を持つという。

Autifyが目を付けたのはまさにこうした旧態依然としたテスト環境と、いち早くユーザーのニーズに対応したい開発企業が抱える潜在ニーズとのギャップである。

サービス開始前にも関わらず、既に複数社との契約の締結に至っており、契約額は合計4.1万ドルに上る。年内に75万ドルの売り上げを達成する見込み。

近澤氏はDeNAでソフトウェアエンジニア、楽天に買収された動画ストリーミング配信サービス「Viki」でプロダクトエンジニアを務めた経験を持つ。この点、Autifyは同氏の長年の経験を基に生まれたアイデアとも言えるだろう。

これまでエンジニアとしてソフトウェア開発をしていく中で、ソフトウェアテストで多くの課題を抱えていることに気付きました。

たとえば検証時間が限られているためテスト範囲を絞った結果、テスト範囲外の箇所から致命的なバグが発生して大きな損失を出した経験もあります。また、自動化を行うためにテストコードも書きましたが、肝心の製品開発の時間が奪われてしまう事態にも陥りました。

そこで思い浮かんだのがAutifyです。誰もがテストを簡単に自動化し、リリースサイクルを早めることで、導入企業の製品開発の競争力を高めることに貢献したいと考えています。

Alchemist AcceleratorはB2B及びB2BC領域のスタートアップ育成に特化したアクセラレータ。

Y Combinatorや500Startupsに代表される他社アクレータは3か月をプログラム基本期間と据え置いているが、Alechmiest Acceleratorの場合は比較的長い6か月に渡り起業家をサポートするのが特徴。各プログラムに参加できるのは厳選された25社。参加と同時に3.6万ドルの投資が実施される。

今回、日本人起業家が創業したスタートアップではAutifyが初めて採用された。直近では合計30万ドルの営業案件クローズを目指す。2020年までに年間収益260万ドル達成が目標であるという。

追記: 市場規模の数値は12.2億ドルではなく正しくは1.22兆ドルであったため修正

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Amazon「サンプル市場参入」の衝撃ーー AIが購買期待値を予測、試供品広告を表示

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ニュースサマリー: Amazonが試供品に特化したディスプレイ広告事業を展開すると報じられた。化粧品ブランド「Maybeline」やコーヒーブランド「Folgers」に代表されるブランドのサンプル品をAmazoの顧客の閲覧ページに表示させたり、自動的にカートへ入れておく仕組みを提供する予定だという。

過去の購買データを機械学習を通じて分析し、試供品の購買転換率の最も高いであろう顧客へ情報を届ける。購買ビックデータを握っている点からAmazonはGoogleやFacebook広告と差別化を図る大きな競合優位性を持っている。現在、同社のディスプレイ広告事業は全広告収益50億ドルの大半を占める。

1億人を超えるPrime会員との長期的な関係を築く上で、会員が好みのブランドから無料もしくは低額でサンプル品を受け取れるベネフィットが、さらなるLTV向上につながる目算。広告事業収益だけでなく会員継続利用率の向上も同時に行う。

Image Credit by Forgemind ArchiMedia

話題のポイント: Amazonの試供品市場参入の最も大きなインパクトは、ブランドが生産ラインを確立する前におおよその売上予測ができてしまう未来がやってくる点にあるでしょう。大量生産を行う前に定量データによって生産するかの意思決定ができるため、在庫を抱えて損失を生み出すリスクが大幅に減るはずです。

サンプル市場にはスナック菓子の月額サブスクリプションサービス「LovewithFood」やスタートアップ家電を店舗販売する「b8ta」がすでに参入済みです。

たとえばLovewithFoodは食品メーカーと提携して月額7.99ドルから約10種類ほどのお菓子の試供品を詰め込んだボックスを提供。提供されるお菓子はオーガニックなものに絞られ、健康意識の高い顧客は販売前の試供品を低額でこうしたスナックを楽しむことができます。LovewithFoodは月額サブスク料金から収益を得るだけでなく、顧客のリアクションデータを収集してメーカーへ還元するデータ企業としての一面を持っているのが特徴です。

一方、b8taは月額2,000ドルから家電スタートアップに店舗ブースを貸し出す「シェアリング店舗事業」を展開しています。1つの店舗の合計展示商品数は40〜50ほど。ブース賃貸料が収益源であることから売上額の分配を行う既存店舗ビジネスとは一線を画します。

最大の特徴は店舗天井に来訪客の行動データを分析するカメラを導入している点。どのような属性の顧客が・どのブーズに・どの程度滞在したのかデータ収集を行いブランド側に共有。店舗での商品体験を「広告」として位置づけ、そのコンバージョン率をブース滞在実感として計上しているのです。

家電分野では購買前体験がコンバージョン率を高める大きな鍵となります。そこでGoogle広告にブース利用料金2,000ドルを費やしたとても、店舗で購買前体験をしたほうがコンバージョン率が高くなる仕組みを確立しました。この点、従来の不動産市場だけでなく広告市場のディスラプトも狙っているのがb8taといえます。

さて、今回のAmazonが新たな広告事業展開のニュースは前述した2社の事業モデルをそのまま取り込んでしまう可能性を大いに含みます。

LovewithFoodが行っていた月額サブスクボックスを通じたフィードバックデータ獲得は、ビックデータ分析を用いたターゲット広告のコンバージョン率によって完全に代替されてしまうでしょう。オンライン広告を展開した方がはるかに膨大かつ的確な顧客リアクションを得られます。唯一LovewithFoodが勝てる点は数少ない顧客が提供するコメントデータでしょう。コアファンによる定性データは貴重なデータ源となります。しかし規模の勝負では圧倒的な差をつけられてしまうはずです。

Amazonは無人コンビニ「Amazon Go」の出店数を増やしている点からも実店舗市場参入へ躍起となっています。こうしたオフラインチャネルを持つAmazonが、サンプル商品を店舗に置いて購買率計測を図る「オフライン試供品広告事業」にまで拡大させることも想像に難くありません。b8taのように店舗を通じた広告データ取集モデルを真似られてしまえば競合となるかもしれません。ちょうど日本の食品スーパーでしばしば見かける試供品を無料で提供している機会が完全に自動化させられるイメージです。

いずれにせよ、Amazonがオンライン及びオフライン市場の両方で試供品データ獲得チャネルを開拓する時期はそう遠くないように思えます。私たち消費者が気に入るブランドや商品検索が、サンプル商品に対してのリアクションによって事前予測される時代が2019年に訪れるでしょう。

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