「多くのスタートアップがくだらない」ーーシリコンバレーの有名投資家が指摘する米テックシーンの問題点

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シリコンバレーは、過剰な投資のあとの二日酔いが続いているのだろうか? アメリカのテック市場が全体的に低迷していると言われるが、本当の問題はどこにあるのだろう?

アメリカのテック市場の状況について、ベンチャーキャピタリストの Chamath Palihapitiya 氏がVanity Fairへのインタビューでコメントしている内容が興味深い。

Palihapitiya 氏は、Slack、Box、SurveyMonkeyといった企業に投資をしてきたVC、Social Capital のファウンダーであり、Facebook の創業初期にメンバーとして加わっていた経歴をもつ。シリコンバレーで10年以上を過ごし、スタートアップの成長を内部からも外部からも経験してきた彼が、最近のアメリカのテックシーンについて鋭くコメントする。

「IPOの数が減っている、市場は下降気味なのか?」という質問に対しては、根本的に良いといえない事業に対して、投資家がその理由を巧みに正当化することで出資を集めてきた、と苦言を呈する。

彼いわく、当初は大きなビジョンをもった一握りの投資家が、FacebookやGoogle、Uberといった圧倒的にすばらしい事業に投資をしていた、と。そうした企業はすばらしい成功をおさめ、その成功に反応した人々が同じようなことをしようとしたものの、そうした事業は良いものではなく、経営もうまくなく、そもそも投資をするべきはなかった、という。にもかかわらず、出資が集まったのは「その資本をコントロールする力をもつ人が、上手に正当化できていたからだ」という。そして、こう続ける。

「現実は、すばらしい企業というのはどんな市場でもIPOができる。IPOの数が減っていると話すとき、その真の意味は、良い企業がそれだけ多く生まれていないということに過ぎない。ベンチャーキャピタルによる支配から離れて、本当にすばらしいと思えるものに、本当に大きな賭けをする形で資本を使うことにフォーカスするべきだ。今はそれが十分にできておらず、その結果、出資したもののほとんどがくだらないもので、価値に値しないものだ」

スタートアップのCEOに対しては、このように指摘する。「見かけ倒しのコストは高い。キャッシュの管理という点でもそうだし、カルチャーの点でもそうだ。本当につくらなければならないことが見えなくなる。ミッションから遠ざかることにお金を無駄遣いしてはだめだ。そうすると、社員はなぜその会社にいるのかという理由を見失ってしまう」

スタートアップシーンが盛り上がるほどに、たしかにオフィス環境やそこで提供される社食なども「クール」なものになっていった。だが、そんなこだわりは「ミッション自体の強さが欠けていることを示しているだけ」だと厳しく指摘する。

現在は業界全体がグロースの速さにとらわれすぎだともコメントしている。だが、実際には「価値ある企業がつくられるには何十年という時間が必要だ」と。彼自身は、「技術的に野心的で、難しく、とんでもない規模の知的な力が求められるような、そして人間性を発展させるような形で大きな人のニーズを解決できる事業を見つけようとしている」という。

起業の本来の意義、辛抱強さ、フォーカス……ブームの中で見失いがちな重要なことに気づかされる内容だ。インタビュー全文はこちらからご覧いただける。

via. Vanity Fair

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