琉球銀行と沖縄タイムス、「Okinawa Startup Program」のデモデイを開催——11チームが参加、ファンドからの出資も視野に

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.3.10

琉球銀行と沖縄タイムズは3日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で「Okinawa Startup Program」のデモデイを開催した。このプログラムは前回までは琉球銀行が単独で運営してきたが、アーリーステージのスタートアップにとって露出が必要との観点から、今回から主催者に沖縄タイムスが加わり、プログラム名称も改められることとなった。

また、琉球銀行は先ごろ、スタートアップへの出資を目的としたファンド「BOR(=Bank of Ryukyus)ベンチャーファンド」を創設しており、Okinawa Startup Program の中から将来有望と認められるチームには、同ファンドから出資も実施されることとなっている。

このイベントは、沖縄市が共催しスタートアップカフェコザが協力するなど、沖縄県内のスタートアップエコシステムに関わる、ほぼすべての組織が関与する形となっており、ピッチに続いて行われた懇親会では、参加スタートアップと現地企業とのネットワーキングにも力が入れられていた。会場では Spiral Ventures 代表の堀口雄二氏や F Ventures 代表の両角将太氏らの顔も見られ、主催者に沖縄県外からの VC 出資も積極的に募りたい意向がある様子が感じ取れた。

11チームの構成は、現地チームが8社、沖縄県外チームが3社で、沖縄県から全国や世界展開を見据えるチームだけでなく、東京から沖縄県に照準を合わせたサービスを開発したり、沖縄県をテストベッドと捉え参加したりするチームが増えたように思える。

Befy by RambleOn

カーネギーメロン大学出身の屋冨祖和弥氏は、AI、ブロックチェーン、IoT など革新的な技術を使って、既存産業をアップデイトしたいと考えている。屋冨祖氏の率いる RambleOn がロールモデルに掲げるのは、Google か2014年に買収した AlphaGo の開発などで知られる DeepMind だ。教育業、卸売業、小売業、製造業、機械最適化など、新技術導入によりインパクトが大きい分野に取り組んでいる。

直近では化粧品メーカーや美容メーカーが、意外にも労働集約型産業であることに着目。美容をターゲットにしたアプリ「Befy」を開発した。日本だけでなく、中国やカナダなどにもユーザが抱える。美容会社や化粧品会社は総じて、顧客に商品を紹介する美容部員の人数が圧倒的に多く、RambleOn はBefy を通じて、美容会社や化粧品会社にコスト構造の改善やオペレーションの効率化を提供したいと考えている。

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間葉系細胞の不織布を使った大量培養 by フルステム

再生医療に使われる細胞は主に IPS 細胞と体性幹細胞に大別されるが、体性幹細胞の中でも間葉系細胞が重宝され、脳梗塞などの疾患を持つ患者に投与することで、症状が劇的に改善されることが確認されている。しかし、これに必要な間葉系細胞は手作業で培養されるため、技術の壁や費用の壁(多くの量を簡単に作れない)、品質の壁(作業者によりムラが出る)が生じる。これらの壁が原因となり、有効な治療法でありながら、すべての患者には適用できないのが現状だ。

フルステムが開発したのは、不織布を使うことで通常2次元で行われる細胞培養を3次元で行い、細胞培養のパフォーマンスを圧倒的に(コストを5分の1、処理速度を10倍以上に)向上させる技術だ。不織布を使った培養では細胞が不織布の中に埋没してしまったが、フルステム独自の方法により、培養した細胞の回収率90%、そのうちの回収された細胞の生存率95%を実現した。培養廃液のモニタにより、培養中の細胞の育成状況も把握することができる。3月22日の再生医療学会ランチョンセミナーで発表予定、町のクリニックでも安価な環境で細胞培養が行えるようにし、再生医療がより身近になる環境づくりを目指す。

temite by EC-GAIN

現在、日本における EC 店舗は189万軒に上り、新規参入者にとっては、バナー広告はほぼクリックされず、CPA は上昇し、SEO などを活用したオーガニック流入を望むのは難しいのが現状だ。実際のところ、日本では EC 店舗の上位300社(全店舗の0.1%)が EC 全体の70%を売り上げており、アメリカに至っては、Amazon 1社が EC 全体の 70%を売り上げるなど、圧倒的な寡占状態にある。EC-GAIN は、そのような状況でも EC 店舗が顧客開拓ができるよう、アンバサダーを使ったリファラルマーケティングができるプラットフォーム「temite」を開発・提供する。

サプライヤーがアンバサダーに対して、商品を広めてもらう上でのアプローチとそれに対する報酬を設定し、temite 上の Webページで募集。コンシューマがアンバサダーの提案に応じて商品やサービスを購入すれば、サプライヤーからアンバサダーに報酬が支払われる。店舗側が EC やオンラインマーケティングの知識をあまり持たなくても運用でき、一方でアンバサダーにエバンジェリスト的な能力を求める、形を変えたアフィリエイトモデルとも言える。

カタリスト

病院を訪れてから診察してもらうまでの時間が長いことは、多くの患者に不満をもたらす。近年は飲食店などでも、さまざまなしくみを使って入店までの待ち時間がわかるしくみを実現しているが、カタリストはスマートフォンを使い、病院で患者に事前に待ち時間がわかるしくみを実現することにした。スマートフォンを使うことや、待ち時間が長いという不評が多いことから、病院の中でも当初は産婦人科にフォーカスする。

カタリストでは、Felica と IC カードリーダーを、受付カウンタ、診療室、処置室に配置。これにより各患者の状態をシステムが把握し、それに応じて、患者のスマートフォンには、受診時に自分の順番までの待ち人数や、自分の診断に要する推定時間が通知される。この通知をもとに、患者はカフェに行って時間をつぶしたり、他の要件をこなしたりできるので、時間を有効に使える。将来的には、病院のホームページ上にも待ち人数や待ち時間を表示することで、初診患者の呼び込みにも有用な効果をもたらす。

カタリストは、沖縄産業振興公社の平成29年ベンチャー企業スタートアップ支援事業に採択された。

沖縄起点のシェアオフィス事業 by マッシグラ

電通出身の金子智一氏が、不動産については、サービスの差別化やブランディングの事例が少なかったことから、それを自らやってみようと考え創業したのがマッシグラだ。ブランディング施策の一環としてシェアオフィスを考え、魅力的な共有空間をシェアオフィス内に設けることで、オーナーにとっては空室率をコントロールできるメリット、入居者にはアイデアやつながり、他には無い沖縄の地理的優位性を活用したユーザ体験を提供する。

シェアオフィスの複数拠点をネットワークすることで地域を越える、入居者同士の事業分野や上下関係を越える、など、「越える」という言葉が、マッシグラが作り出すシェアオフィスのコンセプトになるようだ。Okinawa Startup Program への参加を契機に、沖縄タイムスとの業務提携が決まり、那覇市中心部にシェアオフィスの一店舗目を出展することが決まった。現在、詳細を詰めているところのようだ。

SmartPlate by プルアラウンド

近年、沖縄の観光収入は上昇傾向にあるものの、一人当たりの消費額は落ちている。プルアラウンドは、NFC と QR コード読み取りにより、スマートフォンのブラウザを特定 URL へと誘導する SmartPlate を、宿泊先やレンタカーなどに設置し、お土産の購入やアクティビティの体験を促すなどして観光消費の向上を試みようというものだ。沖縄でしか売っていなアイスクリームの販売サイトに誘導する SmartPlate を観光客に配り、それを自宅の冷蔵庫に貼ってもらって、沖縄旅行から戻った日常生活の中でも、アイスクリームを想起してもらい購入してもらう、といった体験も可能になる。

現在、沖縄県物産公社とも交渉しており、事業に参加してくれるホテルに SmartPlate を配置して、宿泊客に沖縄土産を販売する体験の提供を計画中だ。プルアラウンド創業者の杉浦哲郎氏は以前、フリーセルの子会社アザナで代表取締役を務めた人物で、中小企業向けのマーケティング支援事業を行なっていたことから、沖縄の中小企業経営者には並々ならぬネットワークを持つようだ。SmartPlate は THE BRIDGE でもアクアビットスパイラルズの製品として何度か紹介しているが、プルアラウンドでは同じ技術を使って、沖縄での観光収入向上に特化して事業を運営するもの思われる。

ジョブマネ

ジョブマネは、ベンチャー企業の業務において紙を使った情報整理や情報共有を排除することを主眼においており、一般的に、営業・総務・経理・売上管理などで分かれている情報を集約し、クライアント単位で情報を閲覧・検索できるサービスを提供している。

ジョブマネの創業者である小林康裕氏は、これまでに18年間マーケティング会社を経営していた。会社の変遷とともに、紙伝票 → Excel → パッケージソフト → クラウドと情報管理ツールが変遷してきたのにあわせ、自社内でクラウドシステムの必要性を感じ、ジョブマネの開発に至ったという。同社は技術者を中心とする4人のメンバーで構成されており、現在、営業代理店や出資者を募集している。

PickGo by CBCloud

日本の物流は数多くの零細物流会社に支えられており、彼らが扱う物流の総量は運送大手のそれの約5倍に上るという。零細物流会社に、運送を必要とする荷物や荷主を紹介するのが水屋業であるが、CBCloud はデジタルの力を使って、荷主と零細物流会社をオンデマンドでマッチングするサービスを提供する。軽Town の名前でローンチした同サービスは2017年8月に「PickGo」に改称。現在3,500名程度のドライバーが登録し、毎月150〜200名のペースで新規登録ドライバーの数を伸ばしているという。

沖縄は他都道府県に比べ車の保有率が高いため、ドライバーの確保という点では期待できる市場だという。きめの細かい物流サービスによって、余剰供給から生まれる廃棄野菜と、貧困問題を解決しようとする子ども食堂をつなぎ、社会問題の解決にも寄与できる可能性を展望している。仮に、沖縄県で国家戦略特区指定により貨客混載が可能になれば、個人事業主やタクシー、運転代行事業者なども PicGo に取り込めるのではないか、と将来に意気込む。KDDI ∞ LABO 第10期から輩出、デモデイで優勝した

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Shoreditch

Shoreditch は、Nutrition Tech(栄養テック)をテーマとしたスタートアップだ。例えば、サプリメントの代表であるプロテインは、一般的に粉末状で大きな缶や袋の形で提供され、特に携帯する上では取扱が面倒だ。Shoredich はこの分野の権威でメンバーが構成され、サプリメントの摂取方法において、「SEEDS」と「SKINS」という新たな形状での提供方法を開発した。

SEEDS はサプリメントを圧縮して小さなボール状に固形化したもので、成分密度が高いため携帯しても場所をとらず、飛散することなく簡単に水に溶かして摂取することができる。SKINS は、マイクロニードルに似た技術を採用しており、皮膚表面からサプリメント成分を時間をかけて吸収させるものだ。

サイダス

HR テック企業のサイダスは、人材をマネージメントするクラウドソリューションを開発している。属人的に実施されることが多い人事評価をデータ分析で定量的に行える環境を提供し、Salesforce、オービック、OBC、富士通など ERP や各種業務クラウドを扱うベンダーと提携。2017年時点で、のべ100万人に上るユーザデータを保有するという。

サイダスではこれまで人材視点でデータを集めてきたが、今後はこれに事業視点を加え、人材×事業視点で得られる洞察を API 経由で、さまざまな企業内システムと連携できるようにしていきたいという。こうすることで、例えば、企業内で残業を少なくするには、何を改善すればいいのかが如実にわかるようになるという。Office 365、Alexa とも連携し、人のデータがより活用できるようになってきたという。4月には琉球ワークスペースをオープンする。

Mango by U&I

沖縄では、上間喜壽氏は家業である上間弁当天ぷら店の2代目敏腕経営者としても知られるが、彼が事業を先代から継いだ時には負債が2億円もあったという。負債の原因はスモールビジネスにありがちなドンブリ勘定にあると感じた上間氏は、日々の経営からデータを集め、どうすればビジネスが改善するかを、本業と並行して U&I を設立し、セミナーやコンサルティングを通じて地元の経営者と共有するようになった。

そのような機会を通じて、沖縄には経営ができる中小企業がまだ少ないと考えた上間氏は、経営の仕組みの構築を支援するクラウドサービス「Mango」を開発した。月額1万円からと POS レジよりも安価で導入できるのが特徴。全国の各都道府県中、人口あたり店舗数がもっとも多いという飲食店数をターゲットにオーダー管理・収益管理・固定費管理・POS レジ・商品管理などの機能を提供する。会計クラウドの freee とも連携可能だ。


一連のプログラム終了後には、眺めの良い OIST のボールルームで懇親会が開かれた。上間弁当天ぷら店の新サービス「CATER4U」が用意したケータリングに舌鼓を打ちながら、参加者一同はスタートアップが披露した新たなサービスを中心に、企業間のコラボレーションの可能性などで話に花が咲いた。

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