リリース初速が出ないアイデアは疑え–データセクション橋本大也氏の「アイデア発想法」

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取材でサービスアイデアの起源を聞くと、なるほどと思わせられることが多い。ロジカルに考えたもの、明らかな模倣、はっとするような発想も当事者にとってはごく自然なものだったりする。

では、こういうアイデアを個人ではなく組織として継続的に生み出し、活かすためにはどうしたらいいだろうか?

橋本大也氏は日本のインターネット創世記から起業家として、数々の事業アイデアを生み出してきた人物だ。現在はデータセクション取締役会長兼CIOとしてソーシャルメディア解析の事業に携わる一方、複数企業の経営に参加、デジタルハリウッドや多摩大学では教鞭を執るなど多方面で活躍している。

2013年最初の「MOVIDA SCHOOL」で橋本氏が起業家に向けて語ったメッセージとアイデア発想法について、ポイントを整理してお伝えしたい。

インプットとアウトプットの均衡を大切にする

情報の摂取として本を読み、それをブログに書く。人と話をしたら形にするというインプットとアウトプットの均衡が重要。

アイデアを出す上でブログは大きな存在。私は毎日何らかのアイデアを出しており、それが起業につながっている。発想という点では本からインスパイアを受けることが多い。年間で500冊を読んで200冊は完読し、ブログで書評を書いている。

両利きの経営「Ambidexterity」を理解する

「Ambidexterity」は両利きという意味。経営の界隈で最近話題になっている言葉。両聞きの経営とは組織の知の探索と深化のバランスを取るということで、これができる組織が繁栄する。『世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア』(英治出版)という大変面白い本があって、詳しいことはそこに整理されています。

組織の知を社外に求める。これまでにない発想を取り込むオープンイノベーションの考え方。例えば革新的な製品を出したロボットメーカーを分析した結果がある。他人の特許を参考にしたか、iPadのような革新的な製品を出したか、という内容で分析しているのだが、知の幅が広がれば広がるほどよい製品を出していることが判明している。

組織全体の情報の多様性を広げることと、それを深めていくことは両軸で進めるべき。このためには情報のデータベース、信頼できるコミュニティ、密度の高いコミュニケーションが必要になる。

事例:「イノセンティブ」ーー集合知による問題解決方法

集合知サービスのイノセンティブには27万人程の研究開発者が登録されている。彼らには企業などから課題が届き、それを解決する為のプラットフォームになっている。PhDホルダーも多く、グローバルな専門家や科学者が登録している。

これまでに解決された課題は1300件で、支払われた報酬は37万ドル。難病の原因究明やアフリカを明るくする技術など、研究所では解決できなかった問題を解決している。

事例:アイデアコンテストでネット上の知を探索する

エックス・プライズも話題だ。民間による最初の有人弾道宇宙飛行を競うコンテストで、宇宙に行って帰ってきたら賞金を提供するというものをいくつか開催している。

ニューヨーク市は市民が欲しいというアプリのアイデアを募集した。民間にこの情報を提供することで、事業的にもうまくいくだろう、ということで民間がリスクをとって開発する。市民の声を聞く有益な方法だ。

事例:コンテストが生み出す意外な結果

ネットフリックス・プライズは面白い。彼らが使うレコメンドエンジンの精度を上げるアルゴリズムを開発してくれた開発者に賞金100万ドルが贈られる。2000のチームが応募し、結果として10%の精度向上を果たした。ビックデータの解析コンテストにはすごいことが起こる可能性があることを示してくれた。

スターバックスとして紙コップを減らしたいので、そのためのデザインコンテストが開催された。採用されたのはボードを置いてマイカップを持ってきた人がチョークで×印をつけ、10個目の×をつけた人が無料になるというもの。プロダクトデザインというアイデアではなく、人間心理で解決するという意外な方法を生み出した。

クラウドソーシングという「アイデア発掘方法」

ジェフ・ハウ著の「クラウドソーシング」では、高等教育を受ける人が急増して知識分配メカニズムとしてのインターネットが成長したと伝えている。複数の能力を身につけた労働力、専門性の高い労働市場が拡大している。

99デザインはロゴなどのデザインをクラウドソーシングできるサービス。ゲットスローガンはそれのスローガンバージョン。アマゾンのメカニカルタークはちょっとした知的作業を依頼でき、10万人以上のワーカーが登録している。

アイデアクラウドというビックデータにアイデアを求める

空間の制約を取り払うことでグローバルな情報交換ができる。非同期やながら族、成功報酬などいろんな軸で繋がることで生まれるネット上のビッグデータにアクセスすることは発想力の強化に重要。データを情報に、知識を知恵にしてゆく。

リリースして初速が出ないアイデアは疑え

サービスの改善フェーズに入る前に、これが爆発的なヒットを生むかどうか、初速がでない場合は疑った方がいい。リリースしてぱっとしないのであれば、それを小さく改善していっても伸びることはない。デキの悪いアプリでも狙いが当たれば伸びることもあるのだ。

ハイプカーブで話題のキーワードを探る

発想としてガートナーが毎年更新しているハイプカーブというものを意識している。大抵のものはバブルになると話題性としては一度落ちる。着実な需要があるものはそこから伸びていく。

その昔、ビジネス雑誌でXMLで儲かるとかJAVAで儲かるとかそういうものが表紙を飾った時代があった。バズワード化したものがこのハイプカーブの最初のカーブに乗ってくる。ここがベンチャーにとっては株価、企業価値評価に影響してくる。

次のカーブは売上に関連してくる。新しいキーワードがどこにあるのか、バズワードを調べる手がかりに使ってみるのもいい。自分の興味がカーブ上のどこにあるのか把握することが重要だ。