KDDI系列medibaとの連合で勢力図は変わるーー子会社化発表のスケールアウトが描く「DMP戦略」とは

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左からノボット代表取締役の小林清剛氏、スケールアウト取締役の菅原健一氏、mediba代表取締役の大朝毅氏、スケールアウト代表取締役社長の山崎大輔氏

国内のアドテクノロジーにまた大きな動きがあった。KDDI系列の広告事業を手がけるmedibaは8月5日、広告配信のスケールアウトを子会社化すると発表した。

買収金額は非公開だが、本誌の関係者への取材によると10数億円程度となるようだ。medibaといえば、2011年8月にやはりスマートフォン向けアドネットワーク運営のノボットを買収したことでも記憶に新しい。

スケールアウトが手がけるDSPは広告主側の最適化プラットフォームで、この分野では2010年創業のフリークアウトをはじめ、サイバーエージェントグループやGMOグループなど大手も含めると20社近くが軒を連ねる過密地帯となっている。

2006年創業のスケールアウト、転換期は2011年のDSP提供から

スケールアウト代表取締役社長の山崎大輔氏は元ヤフーでやはり広告配信を担当、行動ターゲティングやリッチ広告の国内導入を担当した人物だ。奇しくも競合となるフリークアウト代表取締役の本田謙氏も過去、創業したブレイナー社をヤフーに売却しており、ヤフーの国内における広告技術者輩出の大きさを垣間みることができる。

さておき、山崎氏が2006年にスケールアウト創業した当時はまだアドテクノロジーも黎明期だ。

「2006年創業時にはまだ月間100億インプレッション(配信の単位で広告表示回数)を配信出来るシステムの提供が出来る会社はごくわずかでした。当時はRTB取引等は無かったため、まずは安定して広告配信できるシステムの需要を見込んで「広告配信システムScaleAds」の提供を開始致しました。こちらのシステムは媒体社さんへの提供がメインです。

そのうちに海外からRTB取引の流れがじわじわとやってきて、スケールアウト自体も会社として多くの優秀なエンジニアが参加してくれていたため、一気にRTB取引に対応したDSPの提供を開始することにしました。

受託事業を縮小することについてはかなり悩みましたが、渡辺さん(B Dash Ventures代表取締役社長で2012年4月にスケールアウトに投資し、取締役に就任した渡辺洋行氏)と2011年の夏頃から半年位ディスカッションし、最後はDSP一本にすることを決断しました」(山崎氏)。

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ベンチャーキャピタルとの二人三脚

スケールアウトがDSPを提供するのが2012年頃なので、創業期からここまで約5年の歳月をかけて取り組んだことになる。そしてスケールアウトが大きく舵を切ることになった背景には、お互いが「二人三脚でやってきた」というB Dash Ventures(以下、BDV)の存在が大きかったという。

「なかなか開発が進まず資金繰りも大変でしたが、常に渡辺さんが背中を押して、同時に資金のバックアップをしてくれたので乗り切ることができました。菅原さん(スケールアウト取締役の菅原健一氏)が入ってくるまで全ての経営マターについて二人で相談して決めるなどまさに二人三脚でしたね」(山崎氏)。

実はBDVの渡辺氏は過去、ノボットなどイグジットした複数のアドテク企業の支援にあたってきており、広告業界への造詣が深い。

「山崎さんを中心とした技術力の高いチームと私が持つノウハウを上手く回せば、かなりの確率でイグジットできると確信していました。投資前に私が考える今後のアドビジネスとアドテクノロジーのあり方を何度もディスカッションし、経営方針と事業計画を完全に共有しました。

経営メンバーの体制構築の仕上げに、マーケティングや営業の責任者として菅原さんに入って頂きましたが、これも当初の計画どおりで、事業としての成功をさらに確信させてくれるものになりましたね」(渡辺氏)。

medibaとの連合で注目が高まるDMP戦略

では、スケールアウトがパートナーにmedibaを選んだ理由はどこにあるのだろうか。そこには世の中で進むスマートデバイスへのシフトが挙げられていた。

「今まではPCの広告がメインでスマートフォン広告はとても小さな市場でした。小さな場所に出る広告ですが画面の中での占有率はとても高いことと、ユーザーの行動もスマートフォンで予め下調べしてからPCでゆっくりと見るようなハイブリッドなスタイルが確立されつつあります。

そうなるとユーザーをデバイス横断で把握出来ることはとても大きな差別化ポイントになります。さらにユーザーの興味喚起はPCよりもスマートフォンの方が適していると考えています。もともとDSPに舵を切ってからこういった体験があり、KDDI-medibaさんの3M戦略にとても合致したことも連携の大きな理由のひとつです」(山崎氏)。

ここで注目したいのがスケールアウトのDMP(Data Management Platform)技術だ。現在数名のデータ解析チームを抱え、今後はKDDI-medibaとの連携の中で、膨大なユーザー情報を活用した広告配信に乗り出す。

「将来的には大量のデータを活用してユーザーに最適な広告を提供することがスタンダードになっていくと考えられます。そのためには数あるデバイスを横断してユーザーさんと向き合える会社がより適切な広告を提供できるようになるわけです。海外ではGoogleですが、国内ではKDDI-medibaが有効に活用できる『ビッグデータ』を保有する事業者です。

ユーザーから見たときに広告がノイズ(無駄な情報)と思われることから、便利な情報やお勧めされた情報として認知してもらえるように進化をするためには、このユーザーと向き合える体制が必要なんです」(山崎氏)。

巨大なユーザー情報をスケールアウトが得意とするDMP技術で解析、活用することでより最適なディスプレイ広告配信が可能になるようになる。

なかなか表に出てこないアドテクノロジーの世界だが、スマートデバイスシフトが巻き起こる今、画面サイズが小さくなることでより精度の高い広告マッチングが求められるからこそ実現した一連の動きともいえる。この国内広告事業の勢力図の変化がどのように影響を与えるのか、興味深くみてみたい。

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