日本市場参入から1年——Squareが描くモバイルカード決済の今後を、水野博商カントリーマネージャーに訊く

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一周年を祝うオフィスで、インタビューに応じてくれた Square 日本法人代表 水野博商氏

創業者の Jack Dorsey を東京に招き、Square が華々しく日本進出を宣言してから早くも一年が経過した。スマートデバイスを使ったカード決済サービスとして、日本では現在、Coiney(コイニー)、PayPal Here、楽天スマートペイを含む合計4サービスが凌ぎを削っているが、いずれの社にとっても、ローンチ時の物珍しさや利便性の訴求から、他社との差別化に力点を置く必要が出てきたフェーズと言えるだろう。

市場をリードする者は、常々さまざまな試みと至難を強いられる。この分野で先頭を走る Square が見据える日本市場の可能性と、解決すべき課題とは何か。Square 日本法人代表の水野博商(みずの・ひろあき)氏に話を聞いた。

ビジネス展開のスピードは想定通り、現金社会であることは足かせになっていない

まずは Square が先頃リリースした、下のインフォグラフィックを見てみよう。各都道府県別の色の濃淡が Square の加盟店数を表しており、都市部にユーザの多くが集中していることがわかる。これは、アーリーアダプターが都市部に多く住んでいることを反映しているのだろうか。

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Square が都市部でしか使われていない、というわけではありません。全国津々浦々、山の上でもボートの上でも、カード決済に利用されています。小売店の絶対数が都市部に多いため、地図上に表すと Square のユーザも都市部に多くなりますが、実際には全国で使われています。(水野氏)

珍しいところでは、八ヶ岳のカヤックツアー、屋久島の縄文杉ガイド、北アルプスの穂高岳山荘、観光汽船など、普通なら電源や通信回線が無いためカード決済できない場所でも、頻繁に利用されているようだ。

しかし、欧米諸国から戻って来ると、日本ではまだまだカードが使えない場所が数多くを痛感する。Square にとっては、アメリカ、カナダに続いて、日本は3番目に進出した市場。カード決済の利用が必ずしも高くない日本の状況は、Square にとって障害にはならないのだろうか。

Square はカード決済のソリューションだと思われがちですが、実際には現金決済で使っておられる店舗も多い。Square には POS の機能が備わっており、お客様が何時頃に何を買っているかを分析することができます。Airレジとも提携しており、通常のレジではこれまでにできなかったような購買分析ができるようになっています。Square を使っていただくことで、店舗が日々の業務をやりやすくなるのは、我々にとってうれしいことです。(水野氏)

現在のところ、Coiney や楽天スマートペイは、スマートデバイスを使ったカード決済の機能に特化している。PayPal Here にはカード決済に加え、商品を事前登録する機能は存在するが、購買分析をすることはできない。Square の POS機能は一見、影に隠れた機能であるが、これが現金社会の日本ではユーザの拡大に一役買っているようだ。

無料デバイスの配布とスピーディーな処理が可能にした、思いもよらない使われ方

カードをスキャンする Square のリーダーは、無料で配布されている。リーダーをスマートデバイスに装着するだけでカード決済できることから、もともと中小企業やスタートアップ、フリーランサーを潜在ユーザと捉えていたが、実際には大手企業が導入するケースも増えているのだと言う。

お客の増減に合わせて、コストをかけずにスピーディーにレジを増やすことができます。ライブイベントでのマーチャンダイズ販売のように、一時的なのだけどお客様が集中する機会にも、Square は向いています。

タワーレコードでは以前、カード決済ではオーソリ(与信)の時間がかかり、レジに列ができてしまうので、カード支払を受け付けていませんでした。でも、Square だと通常の CAT(カード与信端末)よりも与信にかかる時間が短いので、レジでの決済処理もスムーズ。バーコード連携により入力ミスも起きにくく、カード決済でも、現金と変わらないスピードで処理できるということで、採用してもらえることになりました。(水野氏)

カード決済のモビリティという点では、Square のようなしくみが登場する前からモバイルCAT などで実現できていた。しかし、そこに処理の速さやユーザビリティの追求をしたことで、Square 自身も想像できなかった使われ方がユーザの間で始まっている。

「Square Order は日本でも導入展開します」

screen568x568THE BRIDGE の読者ならご存知かもしれないが、Square は先頃、食品や商品の事前注文決済サービス「Square Order」をアメリカで開始した。水野氏に、このサービスを日本でも開始する予定があるかを聞いてみたところ、明確に肯定的な回答が返って来た。

ユーザにメリットがある機能は提供します。ある国では使えるサービスが、他の国では使えない、ということを Square はやりたくない。基本的には、グローバルに統一されたサービスを展開して行きたい。ただ、タイミングを考えています。他にもやるべきことが山積しているので。

同じようなサービスを提供している日本の企業もありますが、彼らとは競合になるかもしれないし、「ユーザ(店舗)の業務を効率化したい」という我々のビジョンに合うなら、協業の可能性を模索するかもしれません。(水野氏)

Square では決済や決済まわりの必要機能は、インターフェイスを統一しユーザビリティを向上させるため、同社が一元的に開発/提供する姿勢を貫いて来た。しかし、自らが得意とはしない分野や業界・地域特性の強い機能、例えば会計においては freee、レストランなどでの席の予約が求められるレジ機能においては Airレジ と提携するなど、自前主義とアライアンスのメリットをバランスよく使い分けている。この動きは、小売業界向けのソリューションを提供するスタートアップにとっては、脅威というよりは、むしろビジネスチャンスと捉えた方がよいだろう。

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競合他社が Square の独走を許しておくはずがなく、おそらく、彼らもさまざまなスタートアップや複合サービスとの提携を積極的に展開していくだろう。この流れから推測できるのは、オフライン・コマースのグロースハック・ツールやテクニックの隆盛だ。

小売業界にとっても、お客に積極的に商品やサービスをアピールする営業から、データ・ドリブンな効率経営へと転換できる好機となるかもしれない。Square をはじめ、モバイルによるカード決済サービスの周辺は、今後の動向に目が離せない分野と言えるだろう。

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