グローバル・ブレインがキッズ事業を行うスタートアップに特化したアクセラレーション・プログラムを始動へ

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教育は、社会を構成する全ての力の源だ。教育を受けた子供たちがやがて成人し、彼らがビジネスを興し、スタートアップを生み出す。世界を旅すると、事業を興す環境が整っているのにスタートアップ・コミュニティが存在しない国もあれば、環境が劣悪にもかかわらず世界に冠たるスタートアップを次々と輩出する国もある。結局、これらの違いは人々のマインドセットに依存していて、そのマインドセットを構成する要素の多くは、子供たちが幼少の頃に築かれるものだ。

改めて確かめるまでもなく、教育の重要性を否定する人はごく稀だろう。日本でも近年、事業を通じて教育環境の改善を試みようとするスタートアップは増えてきた。しかし、教育という社会的意義の高い領域を生業とするゆえ、ことさら利益だけを追求するわけにも行かず、資本主義の論理にはうまくはまらないケースも少なくない。ベンチャーキャピタルがこのようなスタートアップを支援するとしたら、どのような方法があるのだろうか。

東京のスタートアップ向けベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは先週、年次のショーケース・イベント「Global Brain Alliance Forum (GBAF) 2014」を開催したが、それに先立ち、「Futures for kids Accelerator Program」という、キッズ向け事業を行うスタートアップや中小企業を支援する施策のキックオフ・イベントを開催した。グローバル・ブレイン CEO の百合本安彦氏の話によれば、これは同社自らが何かをやるというよりは、同社が発起人となって、大企業やキッズ向け事業を行うスタートアップをネットワークし、ゆくゆくは、参加各社が主体的にプログラムを運営していくことを目指している。当面はグローバル・ブレインが連絡事務局を務めるが、その機能も組織の活性化にあわせて、参加各社に委譲していきたい意向のようだ。

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アクセラレーション・プログラムを通じた、エコシステム形成のコンセプト・イメージ(グローバル・ブレイン配布資料から)。

グローバル・ブレインでは、プログラムに参加するキッズ向け事業を行うスタートアップに対して、事業課題の抽出、事業計画のブラッシュアップ、行政まわりや補助金の申請、人材採用、大企業との提携を支援する。プログラム修了後には、大企業との資本・業務提携やグローバル・ブレインからの出資を想定、当面は日本国内にフォーカスするが、世界的に可能性の高いビジネスについては、子供人口が多い東南アジアへの市場展開も支援する。グローバル・ブレインでは産業革新機構から300億円のファンド運用を受託しているが、このうち150億円のファンドから、キッズ向け事業を行うスタートアップに出資することを明らかにした。

グローバル・ブレインがこれまでにキッズ領域で出資しているポートフォリオには、子育て支援サイト「ハッピー・ノート」で知られるミキハウス子育て総研、親子カフェ運営とパパ・ママ向けマーケティングリサーチのスキップキッズ、広義では、アメリカで子供向けタブレット「nabi2」を開発・運営する Fuhu や、英会話サービスのレアジョブ、先ごろ、フジ・スタートアップ・ベンチャーズが出資したことでも記憶に新しい知育アプリ加工プラットフォームの Plumzi などがある。

今回のアクセラレーション・プログラムには、大企業からは赤ちゃん本舗ママスタジアムインタースペース(東証:2122)、学研ホールディングス(東証:9470)などから34社、スタートアップからは子育てサイトのアクトインディ、子育てシェアの AsMama、食物アレルギー特化事業のウィルモアなど36社の参加が決まっており、今後、より多くの企業の参画が期待される(参加社数は12月19日現在)。

キックオフ・イベントの冒頭、経済産業省 経済産業政策局の石井芳明氏(新規産業室 新規事業調整官)が講演し、政府としては、子育て支援と創業率向上という2つの観点から、このプログラムに積極的に関わっていきたいと述べた。

また、基調講演に招かれた、どろんこ保育で知られる「どろんこ会」を運営する安永愛香氏は、

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社会福祉法人どろんこ会 理事長 安永愛香氏

子供たちが将来の日本の経済を動かしていく原動力となる。(中略)これまでは、「親の言うことを聞ける子」がいい子とされ、そういう子を育てるのが日本の教育だった。確かに戦後は親がしっかりしていたのでそれでよかったが、現在は社会の情報化が進んでいるため、子供たちには、自分でどのように進めばよいか考えてもらう必要がある。

子供たちに〝自分で考えて、自分で行動する思考回路を身につけてもらう〟ことが重要。

…として、人格を形成する幼少期の教育/保育と、それを支援するビジネスの大切さを訴えた。

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キックオフ・イベント後半には、AsMama 甲田恵子氏、Kaien 鈴木慶太氏、ゴーエスト 高堀雄一郎氏(ゴーエストは、前出どろんこ会の運営会社)、ミキハウス子育て総研 藤田洋氏ら、キッズ向け事業を行うスタートアップ/中小企業経営者らによるパネルディスカッションを行われ、彼らの立場から、今回のアクセラレーション・プログラムに対して、どのような支援や効果を期待するかについて意見が提起された(モデレータは、トイボックス 代表理事 白井智子氏)。

AsMama の甲田氏は、

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AsMama CEO 甲田恵子氏

大企業との相談などでは前例を見せてほしいとよく言われるが、そもそも新しいことをやっているので前例が無い。一朝一夕に成果が出るものではないので、まずはチャレンジをさせてほしいとお願いしている。

海外にも積極的展開していきたいが、グローバル・ブレインには、すでに海外で事業を行っているスタートアップとの連携などにおいても触媒になってほしい。

…と期待を述べた。

Kaien の鈴木氏は、

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Kaien 代表取締役 鈴木慶太氏

人材調達が課題。業務の現場に近いところでは人が集まりやすいが、経営的な部分を任せられる人を増やすことが課題。

基本的に私は会社の中に引きこもって仕事をしているタイプなのだが、このような機会に出てくるとで、はるかにいろいろな情報が得られるものだと驚いている。プログラムを通じたネットワークに期待している。

…と抱負を述べた。

前出の基調講演者の安永氏と共に「どろんこ会」を運営するゴーエストの高堀氏は、

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ゴーエスト 代表取締役 高堀雄一郎氏

(自由な保育ができる)認可外保育施設を経営すると、基本的にはお金が残らない。我々はようやく4〜5年前に人事担当者、総務担当者が雇えるようになった。経営がまわりはじめるまでに15年くらいかかっている。

IT企業のように、パッとすぐには大きくなれない。出資してもらうのも5年間とはではなく、30年間とか長いスパンで見てほしい。日本の子育てレベルは高いので、世界で通用するのではないだろうか。東南アジアには積極的に展開していきたいと考えている。

…と苦悩と期待を語った。

ミキハウス子育て総研 藤田氏は、

ミキハウス子育て総研 代表取締役社長 藤田洋氏
ミキハウス子育て総研 代表取締役社長 藤田洋氏

最初の3年間は赤字だった。現在はハッピー・ノートのような独自のブランドも確立させつつ、ミキハウスという親会社のブランドも積極的に活用させてもらっている。

経営者は思い込みもあるので、外から見たときにどのように見えているか、気付いていないケースも少なくない。したがって、こんな会社がそんな会社とつながれるんだ、というような気づきを与えてもらえることに期待している。

…と述べた。

このアクセラレーション・プログラムは2015年から、一回のバッチにつき半年の期間単位で運用される予定だ。プログラムが開始されたら、改めて THE BRIDGE では詳細をお伝えしたい。

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