Todai to Texas:日本のハードウェアスタートアップ、SXSWで喝采を浴びる(パート1)

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Hinomaru_SXSW

先週(原文掲載日:3月24日)行われたSXSW(サウスバイサウスウエスト) Interactiveの訪問者らは、大きなAustin Convention Centerの展示メインホール後方の端上部ではためく小さな日の丸にはおそらく気づいていなかっただろう。白い長方形の真ん中に大きな赤い丸というシンプルな日本の国旗は、日の出を象徴している。また、若い起業家らが独立して活動を始めるために会社で働くことをやめ、ベンチャーキャピタリストがゆっくりではあるが確実にリスクを背負う者たちを受け入れ始めていることから、掲げられていた国旗は日本のスタートアップのエコシステムが着々と突出してきていることを象徴していたのかもしれない。

その控えめな国旗の下にはSXSW最大のインターナショナル部門があり、同トレードショーでホスト国アメリカ以外では日本が最も多くのブースを出展していた。英語を話す参加者がほとんどの中、言語的な問題は多少なりともあったが、Todai to Texas(Todai=東京大学)プロジェクトを扱うスタートアップは、このチャンスを利用して彼らのガジェットについて広く伝え、最近ローンチされたクラウドファンディングキャンペーンの宣伝を行った。

2年目を迎えたTodai to Texasは大学産学連携本部が主催し、出展チームはキャンパスで開催されたDemo Dayのコンテストで選出される。選出されたチームはそれぞれ2名までフライト費用、宿泊費用、そしてイベントのパスを与えられる。

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以下、Todai to Texasプロジェクトの5つのハードウェアチームについて紹介しよう(続きはパート2へ。後日掲載)。

Moff

MOFF

Moffはウェアラブルデバイスで、中学の時使っていたラバー状のオレンジ色したスラップブレスレットそのものだ(80年代に生まれた人には分かるだろう)。このウェアラブルを使うと何でもおもちゃに変えることができ、しかもぴったりマッチした効果音と様々なジェスチャーまでついてくる。Bluetooth経由でMoffをスマートフォンにつないで、デバイス搭載のアプリ上で効果音を選択し、後はボリュームを上げれば良いだけだ。キッチンカウンターの熟れたバナナがレーザーガンに変身、あるいはスパチュラを日本刀に変えることも。想像力を高めるデバイスと思えば良いだろう。

昨年私たちはSXSWのKickstarterキャンペーンを発表し、わずか2日間で目標としていた3万米ドルを達成して最終的には合計8万米ドルを調達することができました。昨年9月、Moffバンドを支援者たちに届けました。そして10月にAmazon.jpで販売を開始し、11月にはアメリカのAmazon.comでも販売を開始しました。その後1万個以上を販売しています。(Moffのビジネスマネージャー市村慶信氏)

今年またMoffチームがオースティンに戻ろうと決めた大きな理由は、2014年のSXSWで同チームが得た反響だった。だが同スタートアップは、今年はKickstarterで支援者を募る代わりに業務提携を目的としてこのイベントに参加した。

私たちはSDK開発にあたりぜひともパートナーを得たいと考えています。Moffは子供向けの商品というだけではなく、フィットネス、ヘルスケア、リハビリにも利用できるため、多くの可能性を秘めたブランドです。特にUnityプラグインを提供することとなった今、アプリの開発者との関係を築き上げることが必要なのです。(市村氏)

同チームは、MoffのSDKを利用したTokyo Motion Control Networkと共同開発した初の外部アプリである子供向けの歯ブラシゲームも披露した。市村氏は「デンタルケア会社数社が」既にパートナーシップ提携に関心を示していると述べた。さらに、実在する販売会社からのリクエストにて、(オリジナルカラーは依然オレンジだが)Moffの様々なカラーバリエーションも展示されていた。

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Bocco

BOCCO

2011年に脳波を読み取って動く猫耳を披露した東京を拠点とするスタートアップのユカイ工学について、おそらく耳にしたことがあるのではないだろうか。だが、同スタートアップは今年のSXSWでオタク要素が明らかに少ないアイテムを披露した。Boccoはかわいい「(技術的観点からではなく美的観点からみた)ロボット」で、仕事や旅行などで離ればなれになった家族がスマートフォンに四六時中はりついていなくてもやりとりできる、その手助けをしてくれる。

例えば、出張中の親がボイスメッセージをスマートフォンを使って録音し、Boccoに送る。もしテキストを送った場合はBoccoがそのテキストを読み上げてくれる。そして子供たちはBoccoに向かって話しかけることでメッセージを録音し、親へと返信することができるのだ。また、Boccoにはドアセンサーが内臓されており、子供が帰宅した時や高齢の祖父母が買い物へ出かけた時などに、旅行中の親へ通知を送ることが可能だ。スタートアップによると、Boccoはより緻密でパーソナルな形の、子供やお年寄りにとって理解しやすいコミュニケーションツールであるとしている。

私たちは6年前にユカイ工学を設立しましたが、Boccoは国際市場に投入する初の商品です。SXSWは多数の海外オーディエンスに向けてBoccoを世界に知ってもらう大きなチャンスとなります。(COOの原田惇氏)

BoccoはSXSWインタラクティブ期間中にKickstarterでキャンペーンを開始したが、2万米ドルの調達目標のうち7500米ドルを既に調達しており、残すところあと19日となっている。

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Plen2

PLEN2

2014年はヒューマノイドロボットがブレイクした年だったが、Plen2は世界で初めて3Dプリンタでの制作が可能で完全なるオープンソースのロボットだという。20センチのこのPlen2は、その小さなサイズに似合わず多くのカスタマイズオプションを採用している。

私たちは主要コンポーネントの3Dデータを提供しているため、ユーザは手持ちの3Dプリンタを使ってロボットをカスタマイズすることができます。Plen2のArduino対応のコンピュータボードは、機能性をより一層引き上げることが可能です。私たちは3名という小さなチーム構成で大規模な内部ネットワークがないので、私たちのユーザネットワーク内でイノベーションが生み出されるようにしました。(Plen Project CEO赤澤夏郎氏)

Todai to Texasのブースで、Plen2がダンスを披露してサッカーボールを蹴っているのを見たが、このロボットは実はそれ以上のことをしてくれる。例えば、アドオンセンサーアレイが有効だと連係された人間の動きをロボットはコピーすることができる。Kickstarterの動画では、高齢の女性がリハビリセラピーを受けているのだが、彼女は手をぎゅっと握ったり、手首を軽く動かすことでPlen2を操作している。Plen2は小さな物体をつかみ取り運ぶこともできる。

Kickstarterの資金調達日数がまだ42日残っているPlen2は、既に目標調達金額の4万米ドルを達成済みだ。

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Trickey

Trickey
Trickeyはハードコアゲーマー向けのキーボードで完全カスタマイズ型のビルディングブロックデザインを特色とする。各ブロックには6つの端面キー溝があり、1つ1つ取り外し可能なキーは、ゲーマー、タイピスト両方に愛されているチェリーメカニカルスイッチMX(mechanical Cherry MX)が特徴だ。ブロックは、WASDで1つのブロックに4つのスイッチがついているように、単独での動作、またはブロックを組み合わせてのフルキーボードの作成が可能だ。

全装置は質の高い透明なプラスチックからできており、全ての内部構造が見えるようになっている。キーレイアウトの域を超えてカスタマイズしたい場合、ユーザはキーカバーをはずし、同梱のソフトウェアを使ってオリジナルのキーデザインインサートを印刷できる。

Trickeyのプロダクトマネージャーである城啓介氏は、その他39チームを下し東京大学のラピッドプロトタイピングコンテストで優勝した。城氏は現在東京大学工学部の3年生だ。

また、目下Kickstarterで資金調達をしており、残すところ46日の段階で支援者から目標金額の3万米ドルのうち1万2000米ドルを集めている。

Pixie Dust

PixieDust

Todai to Texas部門そしてSXSWトレードショーの中でおそらく群を抜いて最も技術的なハードウェアだったのはPixie Dustだろう。超音波アレイシステムを用いて物質を浮揚させ、空中で物質を操ることができる。

私たちの技術を披露したのはこれが初めてで、分子を3D空間で浮揚させ操作することに成功した世界で初めての例でもあります。これまでは、2D軸にそった空中浮遊しか実現できなかったのです。(Pixie Dust Technologiesのシニアディレクター Leonard Mochizuki氏)

展示されていたのは、細かな発泡スチロールでできたボールのようなものでその効果を発揮してみせた小さなプロトタイプにすぎなかったが、手で触れずに調剤する必要がある薬を開発する医薬会社が利用したり、人ごみの中にいる特定の人に向けて音を発することができたりと、この技術の有用性は大きいとMochizuki氏は述べた。同スタートアップは、この技術によって宇宙旅行がより快適なものになるという。

(後編パート2に続く。)

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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