インテリア実例写真共有「RoomClip」運営が約2億円を調達、その意外な事業モデルとは?

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ユーザーの撮影したインテリア写真を共有するRoomClipを運営するTunnelは11月13日、アイ・マーキュリーキャピタル、SMBC ベンチャーキャピタルおよびフェムトグロースキャピタルの各社が運営する投資ファンドを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。

調達した資金は総額約2億円で、払込日や株主比率などの詳細は非公開。同社は調達した資金で開発やセールス・マーケティングの人員を強化するとしている。

同社の設立は2011年11月。2013年9月には今回のラウンドにも参加しているフェムトグロースキャピタルから約1億円の資金調達を実施している。同社代表取締役の高重正彦氏によると、現在の月間訪問ユーザー数は約120万人で、ページビューにすると約1億弱。毎月の写真閲覧枚数は1.5億枚に到達しているという。

滞在についてもアプリだと1セッションで数時間も閲覧するなど、ユーザーに密着したサービス構築が進んでいるという。今後、同社は向こう3年で2500万人の訪問ユーザー獲得を目指すそうだ。

部屋のインテリア実例、オススメ30枚ピックアップのアーカイブ_2015年11月_|_RoomClip(ルームクリップ)

ユーザーと共に作る生態系、その意外な事業モデル

RoomClipは「まとめ」全盛の今にしては珍しくなってしまった純粋なユーザー投稿型のサービススタイルを守っている。

出来合いの素材や引用と称してオンライン上にある大量の写真素材を拝借し、ページを再構成するキュレーションスタイルが短期間で爆発的なアクセスを集めることに成功しているのはみなさんご承知の通りだ。

RoomClipはどちらかというとそういったサイトに素材を「持って行かれる」側の立場になる。

単に訪問閲覧のユーザー数だけ見れば、4年近くかけて120万人というのは正直あまり魅力のある数字には見えないだろう。辛い思いをしてユーザーの投稿をせっせと集めるより、手軽にまとめた方が短期間で結果が見えてくる。

しかし、このような地味なサービス構築をした結果、彼らの元には意外なビジネスのチャンスが舞い込むようになっているという。

「3年半、ユーザーのみなさんと一緒に投稿を集めました。昨年の終わりからですね、閲覧者数を集めるようになったのは。今、住の領域でまともにユーザーさんと一緒に生態系を作ってるのはウチだけなんです。結果として数十のクライアントさんからマーケティングの依頼を頂けるようになりました」(高重氏)。

通常、こういったマーケティングの依頼はメディアタイアップの記事広告商品だったり、共同でコンテストなどのオンラインイベントを開催したりするのがよくある例だ。もちろん、現在彼らが対象としているインテリア事業者に対してそういった広告商品の提供も行っている。

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Tunnel代表取締役の高重正彦氏

面白かったのはユーザーが作った写真素材提供のモデルだ。

RoomClipのユーザーが投稿したインテリア写真素材は実際にインテリアメーカーの商品をうまくアレンジして使っている例も多いという。この写真素材を事業者が提供するECやオウンドメディアなどのユーザー事例として素材を提供する。これによってレンタル・フィーを受け取るというモデルを開始しているのだそうだ。

「最初からアイデアはぼんやりとあったんです。ちゃんと人が思い入れを持って撮影している実名の写真には力があるんです。この写真を企業に提供することで費用を頂いています。家具などの大型インテリア系事業者さん以外にも生活用品の事業者さんに好評を頂いていますね」(高重氏)。

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例えばこの写真に写っているのは脱臭剤なのだが、ユーザーによってアレンジが加えられ、一つのインテリアとして生まれ変わった例だ。その他にも自社商品がユーザーによって意外な使われ方をしていることをRoomClipの投稿で知り、その利用シーンを写した写真素材を自社のECに使うことで購入コンバージョンが大きく改善した例もあるという。こういった消費財メーカーからの問い合わせは急増しているのだそうだ。

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ユーザーによってアレンジされる前の脱臭剤

今後、RoomClipでは写真素材の提供にAPIを準備し、月額モデルで素材をレンタルできる仕組みを検討しているという話だった。

「地方で普通に生活をされている女性の方が活発に使ってくださってるんですね。それで実際にお会いするとすごいクリエイティビティをお持ちなんです。本当にすごいなって思ったし、これを放っておくのは勿体無い、ここには価値があるんです」(高重氏)。

私は2013年の最初の取材の時、こんなに地味なやり方で本当にサービスが成長するのか疑問に思ったのを覚えている。THE BRIDGEもスタートアップという大変狭い範囲の取材を続けているため、この地味に取材記事を重ねるやり方がどれだけ大変か自分自身理解しているつもりだったからだ。

それから4年が過ぎ、私も高重氏もそれぞれ生き残って再会することができた。

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全国のユーザーグループ。一緒に買い物にいったりしているユーザーさんもいるそう

単に消費されるだけのコンテンツではなく、生態系を作り、投稿してくれるユーザーと一緒にコミュニティを作り出すことは本当に難しい。高重氏ら、Tunnelのチームは地味にそれをやり続けた結果、こういう評価に繋がったのだろう。

コンテンツ大量生産・消費の時代、このようなコツコツとした活動が最終的にどのような成長を見せるのか、自分ごととしても大変興味深い。

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