注目を集める、アメリカの医療用大麻関連スタートアップ5選

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CC BY 2.0: via Flickr by Brett Levin

大麻——不法のビジネス、不法の経済学

大麻は、法規制と関連する代表的な分野である。 韓国では「麻薬類管理に関する法律」によって、大麻に関連して許可を受けない一切の行為が禁止されており、アメリカでもまだ相当数の州では、非医療用の大麻の使用を禁止している。どのようなビジネスが違法とされるのか、どのような現象が発生するのか? 純粋に経済学的観点でのみ見れば、法規制のある産業に参加する消費者や事業者のリスクが大きくなるため、結果的にコストが上がるだけでなく、希少性の原理から商品の価格が大幅にアップすることになる。

最近では、アメリカで大麻を、中毒性がはるかに強いコカインやヘロインのような他の薬物と区別し、合法化しようという動きが現れている。また、マイクロソフトがロサンゼルスの医療用大麻関連スタートアップ「Kind」と提携し、医療用大麻の流通管理のためのプログラムを作成すると明らかにするなど、医療用大麻関連ビジネスへの関心が喚起されている。その背景には、合法化の後、すぐに市場を先占したいとする戦略が含まれている。大麻の合法化が社会的にどのような結果を生むかについての議論はさておき、スタートアップ業界にとって、ビジネス的にどのような意味があるのか分析してみたい。

ビジネスの観点からは、大麻はそれ自体が市場でもあるが、加工の段階によっては、高価な医薬品や農業に属するという点を考慮すべきだ。高価な市場で実験的なアイテムやスキル、ビジネスモデルが成功し、市場に定着する場合、徐々に一般的な農業・医薬品分野に広がる可能性も大きいからである。Tesla が電気自動車市場を開拓し、一台当たり1,000万円を超える Roadster モデルからはじめ、最近では400万円相当の Model 3を開発したのは、スタートアップが市場開拓した代表的な事例だ。

LED を活用した家庭用栽培施設「Leaf」

LED 照明の話をしてみよう。まだ一般的ではのいものの、照明市場は、LEDに急速に転換されるものと考えられる。白熱電球の生産・販売は地域毎に禁止されつつあり(EUは2009年、アメリカ・日本は2012年、韓国は2014年にそれぞれ禁止)、政府主導の LED 照明への転換は継続的に拡大しているからだ。2020年現在の世界の LED 市場規模は、7兆円相当になると推定されている。

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LED 照明市場の成長に応じて、さまざまな関連市場が得られている。 そのうちの一つが、LED 照明を活用した植物栽培だ。それでも LED 照明を活用した栽培施設は非常に大きなコストがかかり、その植物を野菜で買うことに比べて経済性に乏しい場合が多い。ところが、市場価格が高い大麻ならどうだろうか? 経済性の確保が可能にある。これにより初期市場が形成されれば、徐々に栽培施設の価格が下落し、価格の下落に応じて、さまざまなな植物を栽培することができるようになるだろう。冷蔵庫の形をした家庭用栽培施設「Leaf」は、そのような面で実用化が期待される製品である。

ビジネス管理ツールを提供する Baker と LeafLink

大麻の市場は製品ごとに分野が細分化されているが、制度上の問題などから、顧客は製品の根拠ある正しい情報を接することが難しい。また、顧客は個人情報を提供したがらないものの、一方でプロモーションには関心が高い。このような市場のニーズを満たしてくれるプラットフォームがあるだろうか?

Baker」は大麻の予約購入の分野でのビジネスを開始したが、現在では顧客管理全般にビジネス領域を拡大している。ここでいう顧客管理とは、単にマーケティング的な意味だけではない。Baker は、さまざまな製品情報、各地域に存在するオフライン販売者情報、製品を購入する顧客情報をすべて自らのサービスを通じて処理するビジネスを提供する。オフライン中心の巨大なプラットフォームになるわけだ。

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Baker のサービスは、タブレットを活用したオフラインの顧客接点の管理から始まる。POS データの分析ツールを提供し、地域別の市場をオンラインで接続し、分割された顧客群に基づき、カスタマイズされたプロモーションのテキストやメールを送信できるようにする。プロモーション情報は、店舗に設置されたタブレットで確認し、すぐに適用することができる。

LeafLink」は、リテールに特化した Baker と異なり、ベンダーとリテーラー(小売主)との間の取引のためのプラットフォームを開発している。ベンダーには在庫管理・発注管理・配送管理などの管理ツールをサポートし、リテーラーにはベンダーを探し注文できるシステムを提供している。

医療用大麻を、店頭から消費者にデリバリーする「Eaze」

韓国では、デリバリーサービスは、主に食品配達の分野で機能している。アメリカでも、YelpDoordash などの食品配達(ピックアップを含む)サービスが継続的に登場しているが、アメリカでは韓国とは異なり、各地域のオフライン店舗を持つ小売業者も、最近ではリアルタイムでの配送サービスを強化している。各地に大型店を展開する Whole Foods Market は、デリバリースタートアップの Instacart とのコラボレーションにより、消費者に1時間以内に必要な製品を届けてくれる。これらのスタートアップはドライバを募集し、ドライバを通じてサービスを提供している。

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Eaze」は、大麻分野の Instacart だ。分野は異なるが、ドライバーを募集してリアルタイムで届けるビジネスモデルは類似している。このように、ビジネスモデル自体が個性を持つのが難しい分野で最大の競争力は、まさにファーストムーバーである。Eaze のの CEO である Keith McCarty は Forbes とのインタビューで「今のタイミングで Eaze を設立できたのは幸運だった」とコメントしている。

医療用大麻の総合メディア「Merry Jane」

アメリカの大麻市場の潜在的な成長の可能性に応じ、医療用大麻を中心に関連するニュースを総合的に伝達するメディアも登場している。「Merry Jane」が代表的な例だ。TechCrunch のような規模やシステムを備えたメディアは無いが、関連したニュースを配信して政府の政策を批判するなど、市場の理解を代弁している。それだけでなく、大麻に関連する詳細な説明とともに、販売店への案内もあわせて網羅している。

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(編集追記:アメリカで医療用大麻に関する多様な事業を展開する Privateer Holdings の CEO Brendan Kennedy 氏に、今年6月に香港で開催されたスタートアップ・カンファレンス「RISE 2016」でパネル・インタビューする機会を得たので、そのビデオを併せて紹介しておく。)

【原文】

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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