
左から:横田智之氏(ナンガ代表取締役社長)、渋谷順氏(スマートバリュー代表取締役社長)、忽那憲治氏(神戸大学大学院教授)、大西逸朗氏(近畿経済産業局 産業部 創業・経営支援課長)、松尾泰貴氏(近畿経済産業局 創業・経営支援課 創業支援係長)
経済産業省近畿経済産業局は8日、関西の起業家・ベンチャーエコシステムの構築プロジェクトモデル事業のアクションプラン「NEXT INNOVATION」を明らかにし、これを発表するイベント「NEXT INNOVATION Conference」を大阪市内で開催した。このアクションプランでは、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授の忽那憲治氏をプロジェクトリーダーに迎え、産官学や起業家コミュニティを横断してアクションを実行していく。
カンファレンスの開催に先立って、大阪イノベーションハブで開かれた記者会見で、忽那氏はピータードラッカーの名著「イノベーションと起業家精神」の日本語版序文を引用し、イノベーションを起こすには、スタートアップのみならず、既存の一般企業や公的機関も起業家精神をもってイノベーションに臨むべきと強調した。近畿経済産業局では、関西の産業集積など地の利を活かした事業や地域経済への波及効果の高い事業を重点的に支援するとし、プロジェクトの支援対象を以下の3つに整理している。
Techvator(テック系ベンチャー)
技術系ベンチャーで破壊的イノベーションを起こすようなビジネスモデルや、成長性の見込める新製品、新サービスの開発に挑戦する起業家
Renovator(ベンチャー型事業承継)
先代から受け継いだ有形・無形の経営資源を活用し、永続的な経営を実現するための新たな領域に果敢に挑戦し、社会に新たな価値を生み出す若手後継者
Genovator(地域課題解決型ベンチャー)
地元の資源の活用や地元の課題を解決するために、社会性と事業性を併せ持つビジネスを展開する若手経営者、起業家
アクションプランの内容について、具体的には、平成29年度中に、ポータルサイトの構築、SNS の活用、経済産業省本省や NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)との連携、大学などと連携したベンチャー型事業承継講座の実施、自治体や地域支援機関と連携したクラウドファンディング活用のビジネスプランコンテスト兼交流会の開催、「NEXT INNOVATION Conference」の年一回開催など。
カンファレンスでは、前出した支援対象の3つのカテゴリを代表し、関西を代表する起業家らがパネルディスカッションに登壇した。

関西からのイノベーション創出をテーマにしたパネルでは、akippa 代表取締役 CEO の金谷元気氏が、関西のスタートアップ・コミュニティを活性化するために、より C 向けサービスの成功事例が関西から生まれることで、学生らが関西に留まり起業への意識を高められるのではないかと述べた。日本ベンチャーキャピタル協会地方創生部会長で、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ代表取締役社長の中野慎三氏は、山形県鶴岡市が慶應大学を誘致して繊維スタートアップのスパイバーが生まれたことを紹介し、それまで何もなかったところにスタートアップ・ハブを構築したり、大企業とスタートアップの間での人材流動を活性化したりすることの必要性を強調した。

ベンチャー型事業承継をテーマにしたパネルでは、ともには経営者として三代目ながら、事業そのものは創業時から完全に違った形で経営を続けている関西を代表する3人が登壇。3人の起業家からは、事業内容は変化しながらも、スタートアップや企業にとって重要な「なぜ、その事業を自社がやっているのか?」というストーリーや、市場への新規参入時に獲得するのが困難な商流を先代から引き継ぐことができたのは、大きな有形・無形資産として役に立っているという意見が述べられた。79年前に工具の問屋業で創業、現在は東京や大阪で DIY の体験型ショップや Eコマースを運営する大都代表取締役の山田岳人氏は「古い業界ほどイノベーションが起こしやすい。失敗しても失うものは小さいので、新しいチャレンジをしてほしい」と聴衆の起業家予備軍や学生らを鼓舞した。

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