日本でも、VCによる出資先スタートアップ向けダイレクトリクルーティングが増える兆し

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.11.26

Image credit: 123RF / convisum

THE BRIDGE の読者には釈迦に説法かもしれないが、スタートアップが VC などから調達した資金は、人材確保やオフィス移転に使われることが多い。生産設備などよりも人材こそが資本と言えるスタートアップにとって、これは正しい動きだろう。その需要に呼応するかのように、HR テックを中心とするスタートアップが活気づいていることもまた事実だ。

一方、労働人口が減少する中においては、母数が減る以上、人材獲得が激化することは想像に難くない。資金は調達できても、その資金を使って欲しい人材が調達できないとなると、スタートアップの成長を阻害しかねない。一部の人材エージェントは、これまでも VC と組んで、その VC の出資先スタートアップ複数の人材調達を支援する活動を営んできたが、最近、VC 自らが出資先のリクルーティング買って出る動きが顕著化しつつある。

VC テラスのしくみ
Image credit: Amateras

2011年に創業、その後、スタートアップ CxO 転職サイト「amateras online」を運営してきたアマテラスは今月初め、VC 向けに出資先スタートアップのリクルーティングが可能となる新サービス「VC テラス」をローンチした。VC が出資先のリクルーティングを代行するというスキーム上、利用する VC が職業紹介事業免許を取得する必要は生じるが(情報閲覧のみの場合は免許不要)、HR 部門を持たないスタートアップや CRO の業務軽減が可能で、手数料も人材採用時・成功報酬型の100万円(一人当たり税別)と、業界水準よりは割安な価格帯を実現している。現在、国内 VC 12社の名前がユーザとして開示されている。

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IF Talent Network
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先週には、インキュベイトファンドが採用支援 SaaS「TalentCloud」を活用した「IF Talent Network」なるしくみを正式にローンチさせた。基本的にはインキュベイトファンドが出資するスタートアップに特化した採用支援サービスが中心で、スタートアップへの転職に興味を持つ潜在層を対象にイベントを行うなどして、オーガニックにユーザ(採用候補者)を集めていく計画。正式ローンチ段階でインキュベイトファンド出資先のうちスタートアップ40社、206件の案件情報が IF Talent Network 上に公開されているという。

インキュベイトファンドでは、2017年に VC 出身で人材紹介エージェント複数社での勤務経験を持つ壁谷俊則氏が入社。壁谷氏が HR 業務専任の形で、出資先スタートアップの人材採用を支援してきた。今年3月に VC としては初めて職業紹介事業免許を取得し、今月に入って、この人材採用支援制度を具体的なサービスとして打ち出した形だ。

シードファンドが増える中で内製の人材支援のしくみがあることは、スタートアップにとって相談相手を選ぶ上でのきっかけになり得る。また、出資先複数の中から適職ポジションを提案したり、あるスタートアップにいた人材が別のスタートアップに転職する流れでユーザ獲得コストを下げたり、スタートアップ失敗時に人材にとってのセーフネットとして働いたりするなど、副次的な効果も期待できるだろう。

VC が内製的に出資先スタートアップをダイレクトリクルーティングする動きは、アメリカにおいては珍しいものではなく、2009年頃から Andreesen Horowitz を筆頭に顕著化する動きがあった。近年では多くのシードアーリー VC が出資先スタートアップを支援する HR 担当者を社内に置いている。このような動きは今後、日本においてもシード VC 全般で加速するだろう。VC は出資先の HR テックスタートアップや人材エージェントなどの協力を得、スタートアップでの仕事を求む人材のコミュニティを、オフライン・オンラインで作り上げていくことになるだろう。

<参考文献>

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