車両ビッグデータとオープンイノベーションが金融包摂を実現するーーJapan Venture Awards受賞者が注目する「テックトレンド」/Global Mobility Service 中島氏(リレーインタビュー)

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編集部注:本稿は中小企業基盤整備機構主催のイベント「Japan Venture Awards(JVA)」による寄稿。節目の20回目となる2019年の受賞者が発表されている

前回からの続き。本稿では今回受賞された起業家の方々と協力し、今のテック・スタートアップのトレンドをまとめてみました。受賞者の彼らがどのような視点を持っているのか、今後の事業参考になれば幸いです。

初回のFLOSFIA代表取締役、人羅俊実(ひとらとしみ)氏からバトンを受け取るのは、Global Mobility Service代表取締役、社長執行役員・CEOの中島徳至氏です。(太字は全て筆者による質問、回答は中島氏)

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受賞おめでとうございます。GMSさんの活動は車をビジネスのツールとして捉え、これをきっかけに金融包摂を実現するという大きなビジョンをお持ちです

中島:フィリピンでEVメーカーを経営していた頃のことです。EVを求める人々は多いものの、その大半が貧困層であるため、あらゆる金融機関のローンが利用できないんですね。結果として街には排ガスと騒音をまき散らかす経年劣化した車両が溢れかえっているという状況がありました。

なるほど。環境云々以前のお話ですね

中島:そうです。このような状況ではいくら環境に優しい車両を提供したくとも、全く意味がありません。それで世界各地の貧困層でもローンが利用できるファイナンスサービスを提供するために2013年にGMSを設立しました。

車やIoT(Internet of Things)によるビッグデータ活用の文脈と金融は理解しやすかったのですが、そこにどうして金融包摂の話題が繋がるのかやや不思議でした。経緯をお聞きして納得しました

中島:創業以来、私たちの活動はこうしたSDGs(編集部注:Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)と合致した取り組みとして、従来の金融にアクセスできない貧困層に対し、これまでフィリピンを始めASEAN各国でローンが利用できる仕組みを提供しています。

中島さんが注目するトレンドがSDGsにあるのは理解できました。オープンイノベーションも挙げられていますが、これはどういった観点からでしょうか

中島:現場のリアルな社会課題を捉え、その課題解決の中に経済合理性を創出し、ビジネスとして成立させるチャレンジを続けてこそ、真の意味でサステイナブルな取り組みとなり、「SDGs」の意義にもかなうと考えています。

現在、経済産業省主導のSDGs経営・ESG投資検討会の委員をしているのですが、そこで議論を重ねる中で、改めて重要だと考えているのが「オープンイノベーション」なのです。

なるほど、SDGsとオープンイノベーションは連動していると

中島:社会課題を解決するためには、自社の技術やサービスの範囲内に留まるのではなく、他社との協業を含めて柔軟に解決策を講じる姿勢が必要です。当社も様々な企業様と協業して、社会課題解決型のビジネスを立ち上げることができました。これから先も他社様の技術やサービスにも注目しながら、柔軟に連携を図り、さらに発展可能性を広げたいと考えております。

このリレーインタビューではみなさんに注目している企業も挙げてもらっています

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中島:cm(センチメートル)級の高精度測位技術を開発している「イネーブラー社」に注目しています。当社には様々なモビリティを制御するIoTデバイスとそれを管理するプラットフォームがあります。これらを車に搭載することで、これまで車が欲しくてもローン審査に通過できなかった方々(主にドライバー)の与信力を高め、ファイナンスの機会を創出しております。

配達やタクシーなどのビジネスで車両を使ったことがデータで可視化されれば、実際に働いているかどうかがわかる

中島:勤勉な働きぶりを追跡したデータは、さらに与信力を高めることに繋がるんです。例えば、ここにイネーブラー社の高精度測位技術を組み合わせれば、今まで以上に精確なデータが取れるようになって信頼性の向上が期待できます。

高精度測位のような基本技術は、モノの価値やサービスの価値を高めますが、「オープンイノベーション」によって、多種多様な業態に発展可能性が広がり、より多くの社会課題を解決できると考えます。私たちの生活にも様々な形で大いに役立つ技術ですので、これからも注目していきたいと思います。

弊社とぜひ連携を、とお考えの企業様はぜひお声がけください。

ありがとうございました。バトンを次の方にお渡しします。

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