Amazonの衛星プロジェクトから考える次なる宇宙事業 ーー ロケット打ち上げ基地のSaaS化を狙え

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2019.4.29

ピックアップ: Amazon plans network of satellites for high-speed broadband

ニュースサマリー : 4月初旬、Amazonが高速インターネットサービス構築のため約3,000機の衛星を打ち上げるネットワーク計画「プロジェクト・カイパー」を公式に認めた。

本プロジェクトはインターネットアクセスが難しい国々の人や、待ち時間の少ない高速ブロードバンド需要を持つ人向けのもの。低軌道周回衛星が打ち上げられるという。

競合にはElon Musk創業のロケット会社「SpaceX」やAirbusの支援を受けた「OneWeb」、カナダ拠点の「Telesat」などが挙げられる。事実、2019年2月にはOneWebが6機の衛星を打ち上げを行った。

なかでもSpaceXやTelesatはAmazon同様に低軌道の小型周回衛星を数百・数千ほど打ち上げてデータネットワークを構築するプロジェクトにすでに取り組んでいる。

話題のポイント : ここからはAmazonの衛星プロジェクトを基に新たな宇宙ビジネスを考察していきます。キーワードは”打ち上げ基地のSaaS化“です。

Amazonにとって4月は水面下で大きな案件が進んでいることが判明した月でした。本件だけではなく米国国防総省が進める1兆円規模のエンタープライズ・クラウドプロジェクト「JEDI」の契約最終候補の2社にMicrosoftと残ったと報じられています

クラウドサービスを支えるのは大容量のデータストレージ拠点と、世界中どこからでも接続できる高速インターネットサービスの両方と言えるでしょう。この点、Amazonや他社宇宙ベンチャーは後者の課題に挑んでいることが大きなトレンドであると認識できます。

次世代インターネット通信網構築のための宇宙開発の波はアジアにもすぐさまやってくるはずです。

中国の大手企業「バイドゥー」「アリババ」「テンセント」の3社が米国企業と拮抗するように衛星打ち上げ事業を仕掛けることが予想されます。後発するように日本の「ソフトバンク」「楽天」「LINE」が参入する可能性も考えられます(ソフトバンクはOneWebに出資済み)。

宇宙ベンチャー企業の参入も盛んです。たとえば小型人工衛星を開発する「Rocket Lab」「Firefly」「Vector」は低価格の衛星を軌道上に乗せるロケット実験の真っ最中。

このような少し先の未来のトレンドを逆算すると2つのことが言えそうです。

1つは米国大手に追随する形で多数の企業が打ち上げ事業に参入する未来を考えると、打ち上げ基地の需要が高まることが予想される。2つ目はロケット打ち上げに次々と成功した世界では、どのロケット企業のサービスを使って衛星を立ち上げるかという選択肢が増える課題が発生する。

衛星の小型化と開発低コスト化が進み、宇宙へのアクセスが容易になれば各大手企業がこぞって衛星の打ち上げを希望する未来がやってくるはずです。この世界では打ち上げ基地のSaaS化 – Satellite as a Service – が新たなコンセプトとなるでしょう。

言い換えれば、世界のどこの打ち上げ基地を通じて、どの企業の打ち上げロケットを使い衛星を打ち上げるのかを手軽に予約できるプラットフォームの登場が期待されると考えられます。

現状、ロケット打ち上げには綿密な計画と打ち上げ予定日のだいぶ前にステーションの予約が必要となりますが、こうした従来手法がディスラプトされる可能性が考えられるのです。

市場では低コストな衛星開発を行うスタートアップがしのぎを削っていますが、先を見越したプラットフォームビジネスを考えてみると面白い展開を見せるかもしれません。ロケット開発コストは一切かからず、打ち上げ基地をネットワーク化して法人向けに卸すシンプルなモデルとなるでしょう。一回のブッキング手数料で多額の売上を得られるため、市場シェアを独占できれば収益化を大きく期待できます。

ロケット開発には手を伸ばせる企業は数少なく、技術力がない限りそもそも事業は立ち上がりません。このジレンマにはまることなく、WeWorkに代表される”固定資産のSaaS化”の考えを打ち上げ基地に適用することで新たな商機を見出せると感じます。

日本の宇宙ベンチャー企業も北海道の広大な土地を利用した打ち上げ基地を切り口に、アジア圏の基地をネットワーク化させるだけで新たなビジネスモデルを紡ぎ出せるかもしれません。ここまで述べてきたようにAmazonの事業から見えるトレンドを切り口に次なるスタートアップの可能性を十分に考察できるでしょう。

Image Credit by NASA Goddard Space FligRobert ScobleWILL POWERPaulo O

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