Open Network Lab、Resi-Techプログラム第1期デモデイを開催——不動産管理ペーパレス化、オフィス家具レイアウト自動化ツールが最優秀賞

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<28日23時更新> Biohealth については、事業会社との協業模索を前提にはしていないとの指摘から、該当箇所を削除。

東京のスタートアップアクセラレータ Open Network Lab が運営する不動産テックに特化したプログラム「Open Network Lab Resi-Tech」の第1期デモデイが1日開催された。審査員や聴衆の投票により、登壇した9チームの中から不動産管理のペーパレス化ソリューション「管理ロイド」を提供する THIRD がコーポレート部門の最優秀賞、オフィス家具レイアウト自動化ツール「AutoFloor」を提供する Bulb がシード部門の最優秀賞を獲得した。

Open Network Lab は昨年来、 従来から行われている一般のアクセラレータプログラム(便宜的に、筆者は「本家」と呼んでいる)に加え、北海道、福岡、Biohealth、Resi-Tech(Residential Technology)の4つのプログラムが運営されている。Biohealth と Resi-Tech については、起業家を発掘する「シードアクセラレータプログラム」だけでなく、社会実装を念頭に事業会社との協業を模索する「コーポレートプログラム」も提供されているのが特徴だ。

このため、Resi-Tech プログラムには、Open Network Lab の運営母体にあたるデジタルガレージやカカクコム以外にも、大和ハウス工業傘下のコスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産がパートナーとして協力している。全国6箇所での募集イベントを経て、全国からシードアクセラレータプログラムに44社、コーポレートプログラムに50社から応募が寄せられた。

デモデイには、シードアクセラレータプログラムに採択された4社、コーポレートプログラムに採択された5社が登壇した。デモデイで審査員を務めたのは次の方々。

  • 林郁氏   デジタルガレージ 代表取締役 兼 社長執行役員グループ CEO
  • 長谷部健氏 東京都渋谷区長
  • 畑彰之介氏 カカクコム 代表取締役社長
  • Ryotaro Bordini Chikushi 氏 Greenbox Partner / Co-founder, InfraLab Berlin General Lead, Nion CEO / Founder
  • Adam D Lindmann 氏 Mind Fund Group CEO
  • 瀬川友史氏 デジタルガレージ Open Network Lab 推進部長

【Best Team Award】【Audience Award】管理ロイド by THIRD(Corporate Program)

管理ロイド」は、不動産管理に必要な業務をペーパレス化・一部自動化できるプラットフォームだ。もともとは、THIRD は建築・機械・電気工事のコスト削減コンサルを手がける不動産コンサル会社だが、業界特有の多重請負、記録プロセスの重複などに着目し SaaS 化を図った。従来、電気・空調・給排水などの工事を行う事業者は、その工事進捗や完了状態を現場で写真撮影し、その写真を元に手書き記入、定められたフォーマットに転記している。作業が煩雑である上、手で行う作業であるため転記ミスも生じる。

管理ロイドでは、スマホアプリを使うことで、記録から情報管理までを完全ペーパーレス化。最新の点検表をダウンロードして、それに自動転記を行うことも可能だ。メーターなどの値を AI で自動的に読み取る機能も実装していて、それを正常値か異常値かを AI 解析しユーザに伝える機能も備える。大手不動産管理会社を含む16社で PoC を実施検討しており、これらの企業が持つ建物は合計すると5万棟に及ぶという。コスト削減効果は検証中だが、最大で67%削減できた例があるそうだ。

管理ロイドが提供する機能は、部分部分では「Photoruction」や「LilzGauge」などにも似ているが、不動産管理に関わる一連の業務を、一気通貫で一つのプラットフォーム上で完結できることも強みだという。

【Special Award】Tellus by Tellus You Care(Corporate Program)

サンフランシスコ拠点の Tellus You Care は、高齢者向けの見守り IoT デバイスを開発している。一般的に見守りデバイスはウエアラブルのものが多いが、ウエアラブルデバイスは常に身につけているのが快適でなかったり、適宜充電する必要が生じたりする。高齢者にとっては特に煩わしく感じられるだろう。同社が開発した「Tellus」は、コンセントに差し込んだまま使えるデバイスだ。

Tellus は高性能小型レーダーを内蔵しており、部屋の中のデバイスから半径6メートル以内の状況をモニタすることができる。呼吸、心拍数、睡眠状態、転倒などの状態を機械学習によりシグナル処理で検出。事故が生じたと推測されるときは、あらかじめ登録された家族、デイケアセンター、保険会社などへ自動通知することも可能だ。

現在、NTT ドコモ(TOPGUN プロジェクト)神戸市と PoC を実施しており、来月には新たな PoC が開始される予定だ。

【Special Award】Life log by Origin Wireless Japan(Corporate Program)

Origin Wireless Japan は、メリーランド大学発のスタートアップで、WiFi 電波反射波分析により、アルゴリズムと AI で空間認知ができるエンジン「Time Reversal Machine(TRM)」を開発している。LTE や WiFi の電波が飛んでいる時、複数の方向からの電波到達の時間遅延などを検出することで、その空間における環境変化を認知できるそうだ。2017年の NoMaps や 「JR EAST STARTUP PROGRAM」の第2期デモデイの記事で紹介したことがあるので、読者の記憶に残っているかもしれない。

今回、同社は Open Network Lab Resi-Tech への参加を通じて、センサーレスのライフログ取得により、高齢者向け見守りサービスを提案した。高齢者にとってはウエアラブルデバイスをつけるのは煩わしいし、部屋にカメラを設置すると心理的な抵抗を感じさせたり、プライバシーを侵害してしまう可能性がある。Origin Wireless の技術を使えば、そのような必要がないだけでなく、電波を使うため死角が無く、トイレや風呂などカメラを設置できない場所の見守りにも効果を発揮する。

同社では今後、介護施設の協力を得て入居者のライフログを取得する PoC を展開する予定だ。

【Best Team Award】AutoFloor by Bulb(Seed Accelerator Program)

オフィス家具メーカーが企業に営業する際には、家具のレイアウトを含めて提案することが多い。レイアウト図案はオフィス家具メーカーのデザイナーが作成するが、常々抱えている案件が多いために着手までに時間がかかり、営業担当者を通じた顧客からの修正要望にも速やかに対応できない。また、予算の問題から図面を 3D パースで作成できないなどの課題がある。

AutoFloor」はクラウドと AI を使った自動のオフィスレイアウト作成ツールだ。顧客のオフィス図面を読みとり、営業担当者が自分で操作することでパースを作成し即日提案。また、顧客先で要望に応じた修正が簡単に対応できる。

現在、国内の大手家具メーカー4社のうち1社に導入が決定しており、船井総合研究所と協業し国内4000社あるオフィス家具販売代理店にセールスを行う計画だ。

【Audience Award】レジなし店舗 by edison.ai(Seed Accelerator Program)

edison.ai もまた、画像認識技術のスタートアップとして、また、それ以前からの Brand Pit として、何度か THE BRIDGE に登場している。今回は、同社が長年の開発を通じて培った画像認識技術を、無人店舗に応用するというものだ。edison.ai の説明によれば、レジ無人化のためのソリューションはカメラとセンサーを使ったものが一般的だが、解析精度を上げるために高解像度のカメラが必要になり、200㎡ほどの店舗で1台10万円程度のカメラが1,000台ほど必要になり、高価になるのが難点だという。

edison.ai が開発したのは、安価な低解像度のカメラでも高い解析精度を上げられる技術だ。精度を維持したままカメラのコストを下げられるため、結果として1店舗当たりのレジ無人化コストが安くなり、特に多店舗展開を図る小売店チェーンなどには有利だという。商品の認識には AI の学習が必要になるため、edison.ai では商品点数が少なく店舗数の多い〝駅ナカ店舗〟への実装から着手し、その後、国内の商品点数が多い店舗、アメリカへと展開を図りたいとしている。

商品を手に取りつつ、最終に買わなかったという非購買行動のデータが取れるため、メーカーや小売店舗にとっては商品開発や販売戦略に有用な情報となる。edison.ai ではそのような派生的に把握できる情報も、将来提供する計画を持っている。

以下は入賞しなかったものの、今回採択されたスタートアップの皆さん。

via-at by via-at

via-at」は、オフィスワーカーが出先で仕事がしやすいよう、複数の独立系コワーキングスペースをネットワークし、専用アプリでチェックイン・チェックアウト・決済などができるサービスだ。β版はユーザ300人が利用しており、現在、コワーキングスペースなどを中心に現在40スポットが利用可能。働き方改革の一環として、テレワークに積極的な企業との連携を推進しており、2020年までに500ヶ所程度のスポットを追加できるのではないか、と展望を明らかにした。

将来は企業向けに、各社の営業エリアにフィットしたスポットをグループ化したメニューの開発、場所・コスト・入退室時間など企業の使い勝手に合わせた立地を備えたスポットの提供、などを図っていきたいとした。同社は、「スタートアップアクセラレーションつくば」の第2バッチにも採択されていた。

Laundry VOX by マッシュルーム

これまでにも、タッチスクリーン向け通信デバイスなどを開発してきたマッシュルームだが、最近では、スマートフォンで制御できる IoT 型の荷物宅配ボックス「VOX」の開発に注力しているようだ。同社は今回、この VOX を活用した洗濯サービス「Laundry VOX」を紹介した。

家事代行サービスや宅配洗濯サービスを提供する企業は従来から存在したが、料金の高さ、洗濯された衣類が戻ってくるまでの時間、汚れ物の引き取りや仕上げ宅配の際の在宅の必要などといった心理的な障害があった。マッシュルームでは利用料金を既存サービスの約半分に、また、汚れ物回収から洗濯後のデリバリまでを従来サービスの8分の1の時間(約6時間)で完了する仕組みを開発した。

配送効率を圧縮し、UberEats の配送パートナーのようなギグワーカーによりデリバリ、また、市中にある既存のコインランドリを活用することでこれを実現しており、まとまった設備投資などが不要のためスケールも容易だとのこと。テストに臨んだユーザ300名のうち、16名(5%相当)は既存の洗濯サービスを利用していたものの、全体の105名(33%)から Laundry VOX を使ってみたいとの回答が得られたという。

現在、潜在的パートナー企業10社と交渉を進めており、うち3社については共同での PoC 実施が決まっているという。都市部の集合住宅、特に当初は東京中心部10区の子育て世代を当初のユーザのターゲットに据えている。

OKIPPA by Yper

不在でも宅配物を玄関前に届けてもらえるようにすることで、再配達問題に苦しむ物流業界の課題を解消し、消費者にとっては迅速に宅配物を受け取れる環境を提供する OKIPPAサービス開始から1年以上が経過し、その間にはさまざまな進展があった。

東京海上日動と共同でバッグ専用の盗難保険を開発し、30日100円の掛け金で最高3万円までの補償が受けられる制度を開始。また、日本郵便のオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」に参加し、東京都杉並区内で実施した実証実験で再配達が61%減少する効果が立証できたそうだ。日本郵便は8月26日まで、OKIPPA の置き配バッグ10万個を無償提供するキャンペーンを全国で展開。また指定場所配達の手段として、OKIPPA を使った配達依頼を正式に指定できるようになった。

Yper は現在、スマートロック「Ninja Entrance」を開発するライナフとも PoC を進めている。この仕組みでは、集合住宅で玄関にオートロックがかかっている場合、配送伝票番号からワンタイムパスワードを発行することで、配送業者に集合住宅に入れるようにし、不在時には住居前に置き配してもらえることが可能になる。配達先毎に複数回にわたり、配送業者が集合住宅玄関からインターフォン越しに解錠を依頼する手間も省けるため、集合住宅での配送が効率化されるメリットもある。

sharekura by Data Science Professionals

集合住宅においては近年、その設計の都合から収納スペースが減っている。その収納スペースの不足を、季節ものの衣類や当面使わないものを預けることで解決しようと言うのが「sharekura」だ。大きさに合わせて5種類の専用ボックスが用意されていて、依頼をすると配送業者がボックスが届けてくれ、その後、荷物を回収しに来てくれる。取出時の送料、月額の保管料のみで、初期費用はかからない。

月額180円からという低料金と利用期間の制限が無いのが特徴。物品の預かりはロジスティクス大手のフレームワークスに委託している。今後は宅配ボックスとの連携、シェアハウス居住者の利用を促進すべく、PoC を実施する予定。Data Science Professionals は、その社名にもある通り、ビッグデータ分析や機械学習を強みとしており、それらの技術を荷物預かりサービスにどう応用するかが興味深いところだ。

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