つくば市、アクセラレーションプログラムのデモデイを東京で開催——嚥下機能計測・リハビリ効率化の「GOKURI」が優勝

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茨城県つくば市は19日、アクセラレータプログラム「スタートアップアクセラレーションつくば」のデモデイを都内で開催した。このプログラムは、つくば市内に拠点を置いているか、置く予定の法人または個人対象に、2017年から実施されているものだ。今回は2018年10月から実施されている第2バッチのデモデイで、5つのスタートアップが採択された。

イベントの冒頭で挨拶に登壇した、つくば市長の五十嵐立青氏は、同市人口の10人に1人は研究者で、市内に博士が8,000人、ノーベル賞受賞者が4人いるとい恵まれた環境であると説明。つくばの使命は科学技術の力を使って人類に貢献することであり、その科学技術の社会実装をする役割をスタートアップが担っていると考え、街としてスタートアップを応援していると語った。

つくば市長 五十嵐立青氏

採択されたスタートアップには、つくば市から一社当たり40万円の事業支援金が提供され、投資家・起業家・実業家など専門家集団によるメンタリングが提供された。昨年12月にはプログラムの中間報告機会として、つくば市内で「TSUKUBA STARTUP DAY」を開催し400名が集まったとのこと。今回のデモデイは、その最終成果報告機会と設定されており、100名ほどの参加者が会場に集まった。

このデモデイでは、参加者による投票などで2つの賞が設定された。採択および登壇したスタートアップを紹介したい。

GOKURI by PLIMES

PLIMES は、筑波大学からスピンオフしたスタートアップで、加齢による飲み込み能力の低下、すなわち、嚥下機能計測を行う。AI と IoT を用いた「嚥下計」の事業化を目標としていおり、首の部分に接触させたマイクを使って拾う音から嚥下が正常であるかどうかを日常的に計測でき、ユーザのリハビリの効率化を目指す。

高齢者に嚥下機能の低下が認められてから、それへの対応を医師から家族へ説明する際、家族を説得するのに平均80分要することがわかっており、その間に高齢者が誤嚥を生じて肺炎を発症したり、死亡に至ったりするリスクが高まる。

GOKURI を使うことで医師と家族の間で「共通言語」が作れ、説得に要する時間が20分までに短縮できるという。歯科、高齢者施設などに GOKURI を販売、ユーザはサブスクリプションの形で料金を支払うモデル。Infinity Ventures Summit 2018 Winter in Kanazawaアジア・アントレプレナーシップ・アワード2018でファイナリストに選ばれた。

NIMSight

NIMSight は物質・材料研究機構(NIMS)からスピンアウトしたスタートアップで、法人としてのニムサイトは今後設立予定。カーテンに代えて、電気を使って遮光する仕組みを開発している。同種の技術としては、ボーイング 787 の客席窓に採用されている Gentex のほか、フランスの Saint Gobain、旭硝子の「Halio(ヘイリオ)」などが存在するが、NIMSight は新素材により、グラデーション調光ができるのが特徴。

遮光していない状態から遮光する状態へ、状態を変化させるときにのみ電気を必要とし、追加素材に応じて、さまざまなカラーバリエーションも提供可能。完全に遮光するのではなく、ガラスの向こうの風景を眺められる状態で遮光するなど、情報や眺望と遮光を両立させることができる。自動車メーカー、電機メーカー、化学メーカーなどと共同研究を開始している。

以下は、今回入賞しなかったものの今バッチに採択された3チーム。

  • via-at………コワーキングスペース版の Uber。複数の独立系コワーキングスペースをネットワークし、専用アプリでチェックイン・チェックアウト、決済ができる。
  • AirMembrane………産総研技術移転ベンチャー。ダイヤモンドを超える熱伝導度、強度と軽さを両立させたナノカーボン新素材。耐電子線特性の高い TEM グリッドの製造販売を計画、長期的にはガス・バイオセンサーの開発に活かせるとしている。
  • シェアトレ………全国のアマチュアコーチが練習メニューを共有できるプラットフォームを開発。アナログな情報管理に依存している、選手の目標達成を支援するチーム内コーチングツール「Tomoshibi」、スポーツチームの OB 会向けチーム支援サービス「Tasuki」を提案した。リクルート「TECH LAB PAAK」第9期デモデイでオーディエンス賞を受賞。
左から: Pixie Dust Technologies COO 村上泰一郎氏、ジャフコ パートナー 北澤知丈氏、つくば市スタートアップ推進監 高瀬章充氏

ピッチイベントの後には、つくば発のスタートアップである Pixie Dust Technologies COO 村上泰一郎氏によるプレゼンテーション、また、村上氏に加え、Sansan / at WILL WORK の日比谷尚武氏、ジャフコパートナーの北澤知丈氏、つくば市スタートアップ推進監の高瀬章充氏を交え、パネルディスカッションが行われた。

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