コラボレーションツール「Front」は仕事用メールをアップデートする

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Mathilde Collin, CEO of Front, and Laurent Perrin, CTO.
Image Credit: Front

コラボレーション・メールプラットフォームを開発する「Front」は1月22日、少し変わった資金調達手法で5,900万ドルを調達したことを発表した。サンフランシスコに本拠を置く同社は、ベンチャーキャピタルにリードされる形ではなく、仕事の未来を定義する起業家たちから成る事業体(コンソーシアム)から資金を取り付けた。

Frontが3回目の資金調達を求めたとき、さまざまな角度から職場の働き方問題に挑戦している同業企業とより緊密な関係を構築したいと考えた。その結果、「Atlassian」(チームコラボレーションソフトウェア)、「Okta」(従業員および顧客ID管理)、「Qualtrics」(エクスペリエンス管理プラットフォーム)、「Zoom」(ビデオ会議)などの大手ワークツール・ソフトウェアを開発してきた起業家たちが出資することになったのだ。

本ラウンドは、Atlassianの共同CEO兼共同創業者のMike Cannon-Brookes氏、同じくプレシデントのJay Simons氏、OktaのCOO兼共同創業者のFrederic Kerrest氏、Qualtricsの共同創業者兼CEOのRyan Smith氏、Qualtricsの共同創業者兼CTOのJared Smith氏、ZoomのCEOであるEric Yuan氏がリード投資を行なった。また、Sequoia Capital、Initialized Capital、Anthos Capitalなど以前からの投資家もラウンドに参加した。

Front CEO兼共同設立者のMathilde Collin氏は一連の調達活動をこう説明する。

「彼らは毎日仕事の未来について考えています。私たちは職場環境でどのような変化が起こっているのかについての有意義な考えを彼らが提供してくれると思いました。職場で毎日使用している基本的なツール(メールなど)を再発明しなければ、大きな影響は起こり得ないので、同業企業を迎い入れることが最善だと考えます」。

まだまだ伸びる、コラボレーションツール市場

今回の資金提携は、職場におけるコラボレーションの問題が大きなものであり、それを解決するための各社の焦りが競争環境を急速に進化させていることを示している。

企業間の競争が加速するにつれ、ワークコラボレーションツール市場は活況。一方、従業員はこれまで以上に多くのツールを利用する必要が出てきている。多くのサービスを利用するため、こうした人たちが勤める会社は、顧客、製品、従業員に関するデータをこれまで以上に多く持つようになった。ただ、従業員同士で情報共有することが難しくなり、大きなチャンスを逃していることが多く発生してしまっている。

職場でのこうした大きな問題は競争を激化させる。市場調査会社「Gartner」の2019年9月のレポートによると、より多くのソーシャルインタラクションとコラボレーションを可能にするワークルツール・ソフトウェアの世界市場は、2018年の推定27億ドルから2023年までに48億ドルに成長している。

コラボレーション重視の仕事場向けサービスを展開する企業は、適切なツールを組み合わせるだけで、職場環境を改革する努力が前進することを期待している。生産性の向上と顧客支援に加え、従業員が職場でより幸せで創造的に感じるのに役立つと考えている。

職場カルチャー構築とエグゼクティブコーチングを行う「30minMBA」の創設者兼CEOであるTherese Gedda氏はこの状況をこのように語る。

「あらゆる企業にとって、継続的にコラボレーション機会を促進する必要があります。テクノロジーによる解決策が、コミュニケーションと職場に対する従属感を障壁を取り除くことができれば、非常に強力なものとなるでしょう」。

細分化が進むツール類、絶対王者は誰?

FacebookのWorkplaceMicrosoftのOffice 365とTeamsGoogleのG Suiteなど、多くのハイテク大手がこの分野に取り組んでいる。カルト的な成長コミットにより、昨年上場まで漕ぎ着けたSlackも挙げられる。

しかしGartnerによると、市場は非常に細分化されたままであり、市場を寡占するほどの地位を獲得したり、あらゆる問題を完全に解決すると思われる一貫性のあるツールを開発した企業は未だ登場していないという。その結果、市場に参入する多くのスタートアップは、従業員のコミュニケーション、会議ソリューション、プロジェクト管理など、さまざまな問題に違った角度から取り組んでいる。

こうした企業には2018年に5,000万ドルを調達した「Monday.com」が含まれる。加えて、昨年正式に発売された「Coda」も挙げられる。また、「LumApps」は1月22日、ソーシャルイントラネットサービス向けに7000万ドルのラウンドを発表した。「Klaxoon」のような企業も登場している。同社は各端末で機能する、タイムキーピング、ブレー​​ンストーミングツール、インタラクティブホワイトボードなどの機能を備えたSaaSミーティングサービスで、2018年に5,000万ドルを調達している。

2020年1月に開催されたCESにおいて、Klaxoonは共同ホワイトボード機能を拡張するコンソール「Teamplayer」を導入。

「Teamplayerは、インタラクティブで遊び心のあるビデオゲームの精神と、デジタル音楽制作ツールのノウハウや人間工学に基づいて開発されており、作業環境とチームコミュニケーションに革命をもたらします。マウスとスクリーン、ペーパーボード、電子メール、スライドなどは全て、職場で直面するさまざまな課題を克服できません。そこで、物理的および時間的障壁を取り除き、情報フローを整理し、チームプロジェクト数を拡大させる必要が出てきます」(同社発表より)。

これらの企業の多くは、緻密に考えられたパートナーシップと外部サービスとの連携を通じて、クライアントが求める自身に合ったカスタマイズ・ソリューション・ニーズに応えている。Frontは、まさにこの市場で勝利を収めようと望んでいる。

メールを中心に統合を進めるFront

Frontは2013年に設立され、急速に成長。2016年には1,000万ドルの資金調達を行ない、2018年には6600万ドルのラウンドを完了した。

Frontのメールサービスを利用すると、従業員は顧客やパートナーからの内部メッセージやメールを共同管理できる。 Collin氏によると、従来のメールはチームにとって十分に機能するほど進化していなかった。そのためFrontはメールだけでなく、ライブチャット、ソーシャルメディア、SMSを統合し、Salesforceや他のプラットフォームと連携する仕様にした。

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企業が返信、コメント、およびメッセージ追跡を的確にできるように、会話を1か所に集中させたという。 Collin氏は続けて、ユーザーはブランドと適切な関係作りを望み、従業員は仕事で高い満足感を求め、企業は生産性を向上させる必要性を感じており、Frontはこうしたニーズ全てに応えていると述べた。

「私たちの使命は、常に従業員が仕事で幸せになるよう支援することです。メールツールを選んだ理由は、メールが仕事を成し遂げるために使用する主なツールだからです」(Collin氏)。

同社はここ2年で2500社だった顧客数を5500社に拡大させた。

そしてさらにマーケティングと製品開発の拡大を望んでいたこともあり、今回、Frontのパートナー企業であるか、同じくワークツールを開発する起業家にアプローチすることを決めた、とCollin氏は言った。

「ビジネスシーンにおける電子メールの使用方法は過去20年間変化していませんが、他の全てのシステムとワークフローは時間とともに進化し、改善されました。Mathildeと彼女のチームは、仕事用メールを21世紀向けにアップデートさせるため、コラボレーションに重きを置いたコミュニケーションプラットフォームを構築しました。Frontは仕事環境の将来において重要な役割を果たし、私は彼女らが辿る旅路に参加できることを嬉しく思います」(リードを務めたZoomのCEO、Eric Yuan氏)。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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