あるショートセラー(疑わしい銘柄の報告書を出すと同時に空売りをかけ利益を狙う投資会社)が、中国の動画配信プラットフォーム 「iQiyi(愛奇芸)」が2019年の会計報告で収益とユーザ数を水増したと非難している。これより数日前、4月2日にはアメリカで上場した Luckin Coffee(瑞幸咖啡)の大掛かりな粉飾決算が明らかになったばかりだ。
重要視すべき理由:しばしば中国の Netflix と呼ばれる北京拠点の同社は、アメリカ上場の中国企業がより一層の精査を受けていることに気づき、飲料チェーンの Luckin Coffee の目を見張る失墜に続き、ショートセラーの注目を集めるもう一つのターゲットとなっている。
詳細情報:Muddy Waters Research は2日、Wolfpack Research の報告書へのリンクをツイートし、Iqiyi が2019年の売上を27%から44%に膨らませ、ユーザ数を42%から60%に誇張していたと主張した。
- Wolfpack の報告書によると、Iqiyi が監査人や投資家から不正を隠すため、その費用、コンテンツや他の資産に支払った価格、買収額も水増ししていたと主張している。
- Muddy Waters が支援したこの調査は、Iqiyi のターゲット層1,563人を対象に行われ、Iqiyi の VIP ユーザは、Xiaomi TV(小米電視)や JD.com(京東)などのパートナーとのパッケージ契約を通じて、無料会員権を獲得していることがわかった。
- 報告書によると、同社は会員の収入を完全に記録し、パートナーの取り分を経費として計上することで、収入と支出の両方を水増しさせていたとのことだ。
- Iqiyi は8日の声明で、ショートセラー Wolfpack Research の報告書には「多数の誤り、根拠のない記述、誤解を招く結論と解釈が含まれている」と述べた。
- NASDAQ 上場の Iqiyi は、報告書についての主張を裏付ける詳細を提供しなかったが、同社はアメリカの証券規制に準拠して「高い水準のコーポレートガバナンスと内部統制を常に維持することを約束している」と述べた。
- Iqiyi にコメントを求めたが、直ちには回答を得られなかった。
今後:Walfpack Research の創業者 Dan David 氏は7日の Bloomberg TV とのインタビューで、Iqiyi の不正疑惑について「真に独立した調査が行われた場合、Iqiyi への報告書がもたらす悪影響は無限になるだろう」と述べた。
- 一方、アメリカの法律事務所 Holzer & Holzer は8日、Iqiyi が連邦証券法に違反したかどうかを調査していると発表した。
この10年間、我々は十数社の中国企業の上場廃止を担当してきたが、誰も刑務所に入った者はおらず、誰も罰金を払っていない。中国では、アメリカの投資家から金を盗むことは違法ではないのだ。(Dan David 氏)
背景:Iqiyi の株価は7日の朝に11.2%下落したが、市場が引けるまでに3.2%上げて戻した。
- Iqiyi の親会社で中国の検索エンジン「Baidu(百度)」の株価は、今回の疑惑を受けて7日の朝、5%近く下落した。
- Luckin Coffee は4月第1週、同社のトップ幹部の1人と数人の従業員が2019年に総額約22億人民元(約334億円)の取引を捏造したと発表、ここ数日間で株価が80%近く急落した。
- この発表より2ヶ月前、ショートセラーの Muddy Waters Research は、Luckin Coffee が経費、売上、収益を水増ししていたと主張する匿名の報告書をソーシャルメディア上で公表した。
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