都市封鎖で公共交通停止が続く国々で、新サービスが話題のイスラエル発MaaS「Moovit」——休止車両を再配置、医療従事者らに通勤手段を提供

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Image credit: Movit

新型コロナウイルス流行の危機に際し、世界中の何十億もの人々がロックダウンを余儀なくされ、都市は事実上の停止状態に陥っている。公共交通機関の需要が低下したため、運営会社はサービスを縮小し大半の車両を停止させた。しかし、配達ドライバー、看護師、医師、食料品店の店員など、多くの重要な労働者が仕事に行かなければならない状況が続いている。

Moovit は、交通手段を組み合わせて街中を移動する最も簡単な方法を表示するコンシューマ向けアプリとして最もよく知られているが、同社のコアビジネスは、MaaS(Mobility as a Service)の提供を通じて、バックエンドのプラットフォームをサードパーティにライセンス供与してきた。Moovit は今回、オンデマンドの緊急移動プラットフォームをローンチし、交通機関が使っていない車両を再配置することで、現場の労働者のための新しい輸送サービスを作ることを容易にした。これにより、企業は必要不可欠なサービスを提供する従業員を安全に職場に運ぶための専用ピックアップサービスを手配することも可能になる。

Moovit の新プラットフォーム(有料プロダクト)は、バスや自動車など車両運営する公共・民間企業を対象としている。Moovit は、休止車両をわずか数日で完全に機能する緊急サービスに変えることができ、1台の車両あたりの乗客数を制限するなど、地域の緊急時の規制にも対応できると述べている。

乗客はいつものように Moovit の Android または iOS アプリを使用して目的地までの最適なルートを見つけることができ、その地域で利用可能な車両がすべて表示される。ドライバーの独自アプリにはオンデマンドと予め予定された乗車リクエストの両方が表示され、リアルタイムでルートやピックアップの詳細を受け取ることができる。Moovit のアルゴリズムは、乗客の送迎場所に応じて、車両のルートとスケジュールを動的に決定する。

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Moovit がローンチした新しいオンデマンド緊急移動プラットフォーム
Image credit: Moovit

交通機関のスタッフは、デスクトップのダッシュボードにアクセスし、全車両の状況を管理・監視することができる。

Moovit は、イスラエル銀行最大手の一つである ハポアリム銀行(בנק הפועלים)が契約し、スタッフをさまざまなオフィスや支店に輸送するために、不特定事業者から調達した民間の車両25台の車両を使用していることを確認した。同社はまた、緊急オンデマンド輸送プラットフォームは現在の新型コロナウイルス流行を念頭に開始されたが、このサービスを恒久的に提供する可能性が高いとしている。

ハポアリム銀行のような民間企業がこのサービスを利用するためにサインアップすると、従業員は Moovit のホワイトラベルアプリを使って前払無しで乗車予約できる。一般人向けの Moovit のメインアプリは、新型コロナウイルスに対応して公開されてから数週間であることを考えると、まだ開発途上にあるが最終的には予約や決済機能が実装されるだろう。

しかし、企業や労働者が新型コロナウイルスによって課せられた制約に適応していく中で、こう行った動きは、技術的にも商業的にも大きなトレンドとなっている。

適応と進化

Zoom は最近までビジネス向けのテレビ会議アプリだったが、友人や家族、学校などが連絡を取り合うために利用する、「新型コロナウイルス時代のソーシャルネットワーク」として台頭してきた。そのユーザベースは、12月には1日のユーザ数が約1,000万人だったのが、3月には2億人にまで急上昇した。これはまた、Zoom のプライバシーとセキュリティに疑問を呈し、世界的なスポットライトを浴びることになり、同社は新機能の提供を一時中断し、代わりにセキュリティの再構築に注力せざるを得なくなった。やはり、誰も Zoom 爆弾の攻撃は受けたくないだろう。

CC BY 2.0: Yuya Tamai via Flickr

世界で起きているロックダウンによりギグエコノミーの大部分が沈降する中、Uber は先週、ドライバーが他の仕事を見つけるのを助ける新しいハブをローンチした。また、配車サービスやフードデリバリの需要減少が報じられる中、Uber は新しくリモートワーカーになった人たちや最前線にいる人たちのために、事業者向けの Uber Eats の全世界ローンチを急ピッチで進めている

一方、Uber が提供する配車サービスの競合にあたる Via は、これまでのシェア型シャトルサービスを、企業で必要不可欠なサービスを提供する従業員の通勤を支援するサービスにピボットした。元々は消費者にフォーカスしたサービスだったが、選ばれた労働者を対象とした「セミプライベートなサービス」へと移行したのだ。

また、ハインツは150年の歴史の中で初めて消費者への直接サービスを開始した。ハインツは自社オンラインストアを立ち上げ、小売店を迂回して「Heinz to Home」を通じイギリスの消費者に食品を販売・配送している。

新型コロナウイルスが流行する中で手をこまねくのではなく、多くの企業が自社のビジネスを再考しつつ、重要な労働者を支援するための努力が評価されている。

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【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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