経済活動のデジタル化、LayerXという旅の始まり

SHARE:
Layerx_001
LayerX代表取締役、福島良典

本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です

LayerXは本日、新たな増資についての情報を公開させていただきました。詳細はそちらをご確認いただくとして、本稿では、僕らがこれから掲げる「経済活動のデジタル化」について、今の考えを記しておきたいと思います。

なぜ今、DX、デジタル化なのか

ミッション自体はコロナ前から「すべての経済活動を、デジタル化する」に変えることを考えていて、前のもの(Evaluate Everything)は主に社内向けでした。やってることが大きく変わったということではなく、伝え方を変えたという感じです。

新型コロナウイルスの影響でDXが進む、みたいな話もありますが実は関係なく、ワークフローのデジタル化が2020年代のビッグトレンドになることは以前から考えていて、今回の件でそれが確定的になったなと、そういう見方をしています。

もともとソフトウェア技術の進歩は、ある地点から離れたある地点にデジタルに情報を伝えるということから始まり、次にいわゆる機械学習的なものが出てきて、人の作業 、知的作業がソフトウェア化されていったものなんですね。

じゃあブロックチェーンで何が起こっているかというと、人が作っていたガバナンスとか作ってたワークフロー、例えば何かを承認したらそれをもとに請求作業をやるとか、合意したことによって実行されますとか、それぞれガバナンスじゃないですか。

そういった、今まで人がやらざるをえなかったことが、技術でカバーできるようになってきたことが大きな変化で、さらに裏側のコンピューティングのコストがずっと下がり続けているということも含めて、今、 結構変わり始めるタイミングなのかなと思っています。

LayerXの提携戦略

ではこの状況に対してどう動くか。

僕らが発表している提携は2種類ありまして、ひとつがDXしたい先。例えば三井物産さんというのは「DXしたい主体」ということで、そういったパートナーがあります。

もうひとつは「欠かせない役割を担ってくれる」パートナーです。

例えば、証券のワークフローを作る時、「証券を買います」って時に契約しない人なんていないので、必ずワークフローの中に「契約」というものを持っているわけです。あるいは配当するときとか決算をしめる時に会計ソフトを使わないアセットマネジメントの会社があるかというと、絶対使うじゃないですか。

配当する時に、銀行送金を使わない会社だって存在しない。そこのデジタル化をやっているのが電子契約だったら弁護士ドットコムさんのクラウドサインだし、会計ソフトだったらマネーフォワードさんとかfreeeさんだったりするわけです。銀行APIについては先進的な取り組みをされているGMOあおぞらネット銀行さんです。今回は3社(弁護士ドットコム、マネーフォワード、GMOあおぞらネット銀行)と提携を発表させていただいています。

つまり、先ほどの業務のワークフローとか業務のデジタル化をする時にこういった「欠かせない役割」を持っている先が僕らのパートナーシップの発表を出しているところなんです。

また、僕らはデジタルになることですべてを平等に繋げることができるようになると思っています。

この反対がベンダーロックインとかそういった概念で、会計ソフトだったらこれを使わなきゃいけない、契約サービスだったら社内ワークフロー的に印鑑を使ってくださいとか、そういった何かのルールにロックインされた状態が不便な状態です。

逆にデジタル化していくっていうのは、何とでも繋げますよと。例えば会計ソフトで社内リソース管理で使っているERPと会計ソフトが分離していますという時も、その裏の共通のデータを一元管理するものって作れますよねとか、そういったところをやっていくパートナーです。

LayerXが全部作るってありえないと思うんですよね、めちゃくちゃUXのいい電子契約サービスを作れますかっていうとそれは専門でやってる人の方がいいでしょう。

ただ会計とその電子契約を結んで何かのワークフローを作るというところはLayerXが専門にやっているところなので、逆に言うとお客様ごとにカスタマイズして○○銀行さんのためのAPIですってものはやっぱり作らないと思うんです。そういった補完関係としてのパートナーシップを今どんどん発表しています。

Layerx_002

DX事業はどう進める

整理すると「顧客」と「顧客のDXに使われる技術」みたいな分け方です。会計ソフトとか電子契約みたいなのは技術側で、僕らが顧客にしているのはそういったツールを入れてDXをしたい先で、三井物産さんやMUFGさんなどがそれにあたります。

実際どのように進めているのかというと、三井物産さんと僕らは今ジョイントベンチャーを作って一緒にアセットマネジメント会社を運営しています。JVを作る背景として、PoCではなく商用化を推し進めるためにその先にあるビジネスのエグゼキューションを意識しています。従来一般的とされてきた受委託の関係ではなく、双方がリスクを取ってJVをつくり一緒にやっていくことでインセンティブを一致させていく、そういった考えで運営しています。

それで実際ワークフローを作る時、先ほどのパートナー企業様のツールを使っているんですね。実際に印鑑を使わない電子契約サービスだとか、独自の会計システムを用意するんじゃなくて、クラウド会計システムを使って、その裏側の業務フロー、請求書と繋いでとか電子契約と繋いでとかは内製化してるんですけど、ツール自体はクラウド会計を使ってるんです。

お金のやりとり、投資家からお金が振り込まれましたとか、逆にファンド側から配当としてお金を振り込みますとか、譲渡した時に権利者同士でお金の やり取りをしますとか、そういうところは銀行APIで繋いでいます。

こうやって実際に合弁会社を作り、業務フローを作っていく中で「役割として」必要となるパートナーが見えてきたので、このような提携戦略を進めています。さらにこれは三井物産さんに限った話じゃなくて、ここで得た知見を元に、より汎用的なソリューションとして提供していけるような体制をLayerXとしても作りたいと考えてます。

経済のデジタル化とは

デジタル化をどう表現するか、なんですがまず、チャネルの変化がありますよね。

例えば銀行。デジタルバンキングによりインターネット上で送金もできるし投資信託も買えるとか、あるいは店舗、百貨店に行ってたのがアマゾンとか楽天で買えるようになりました。紙やテレビでニュースを見てたみたいな人がスマホでニュースとか動画を見るようになったとか。

いわゆるユーザーチャネルのデジタルシフトが、今までの「デジタル化」です。

僕らがフォーカスしているデジタル化はどちらかというと、その裏側で働いている人のデジタル化というところが大きな違いになります。例えばSaaSが広がって、契約の証明をするのがデジタルになりましたとか、会計ソフトがデジタルになりましたみたいなのがあると思うんですけど、その間のワークフローは全てアナログだったりします。

契約書をチェックして請求書を送って相手からお金を送ってもらい、これをまた確認しました、という一連の動きはおそらく多くの会社で「部分部分」はデジタルになっていても、全体はデジタルなっていないのかなと思っています。

特に直近のパンデミックによって、そういった部分のデジタル化が単なる経済的な意味じゃなくて社会的な意味でも重要になりました。

日本は人口が少なくなっていく国でどうやって人の労働力に頼らず、デジタルにシフトしていって生産性を保つとか、そういったところが今後の大きなデジタル化の流れになるのかなと思います。

LayerXがやっていくデジタル化は単にマーケティングをデジタルでやります、チャンネルをデジタルで用意しますじゃなくて、働き方がデジタルになりますみたいなところにフォーカスしてやっていこうと思っています。

ブロックチェーンはマストなのか

ブロックチェーンの世界って、どうしてもインターフェースから最後のデータのトランザクションのやり取りまで「全部ブロックチェーンで」みたいな考え方がなぜか当たり前に考えられているんですけど、ソフトウェアの技術はレイヤー化していくもので、この部分は「例えばこう使って」みたいなことができたらいいよねと思っています。

なのでブロックチェーンはマストではないけどベターと考えています。

例えばガバナンスの整合性をとる作業とか、重い産業(※)だとよくあるのが部署によって見ているデーターベースが違いますとか、会社間を跨ったサプライチェーンの管理や証券の管理をする際には相性が良く、実装しやすいのは真実だろうと思います。

※LayerXでは金融機関やサプライチェーンが長きにわたる企業、製造業を「重い産業」と称しています

一方、相性が悪いところで今ブロックチェーンを使うべきかというとそうは思わないです。例えばデジタル署名の入り口みたいなところに、敢えてブロックチェーン的な処理を入れてウォレットを持ってということをやるのがマストかというとそうは思わない。

あと、ブロックチェーンという言葉の意味が広くなってしまっている状況も考える必要があります。

ブロックチェーンも適材適所と言いますか、例えば単にヒストリカルに改ざんされにくいデーターベースを社内で残したいということなら、Amazonが出しているQLDBのような分散化されてないけどブロックチェーン的にヒストリカルデータを簡単にトレースバックもトレースフォワードもできるみたいな技術があるんです。

また、ワークフローがデジタル署名をトリガーに走るというものであればHyperledgerみたいなものとか、逆に金融機関同士の(個別の)データは同じ金融機関同士でないと取引は見れちゃいけないが、証券の取引整合性は全体で担保したいといったケースはcordaとか、そういったユースケースによって当然技術って選ばれるものが変わってくるのかなと思ってます。

なので (ブロックチェーンは)マストではないが、ベターではあると思う。なくても実現できるが、ブロックチェーン的な技術を使った方がコストが下がるとか楽に実装できるのに、あえてなぜそれを使わないのっていうのを「why not blockchain」と僕らは言っています。つまり、一番上の目標にDXを掲げていて技術選択としてブロックチェーンを使っていくという考え方なんです。

Layerx_003

インターネットエンタープライズのゆくえ

産業は最初は群雄割拠で始まって、どんどん統廃合が繰り返されていって、その上でその産業の成熟期になると大きいもの同士の合併とか生産性を上げていくというのが、ソフトウェア業界に限らず広く一般的なことです。

明治維新の頃の商社や戦後の自動車産業、飛行機産業はいっぱいベンチャーがあったが今は淘汰が進んで数社しか残っていません。これと同じことがインターネット産業でも起こると思っています。メディアでもコマースでもゲームでも起こると思います。

皆さんの中でも思い浮かぶ勝ち組って決まってませんか?例えば、ZコーポレーションがLINEと統合だとか、ZOZOを買収するとかって完全に成熟産業の動きです。日本のEコマース率は6〜7%くらいですかね、メディアのインターネット化率も100%ではありません。なのでどんどん大きくなっていくとは思いますが、その成長を享受できるのがベンチャー企業なのか、すでに参入したテックジャイアントなのかというと、後者になってきているのが今の現実的なインターネットメディア市場の見方です。

逆に「インターネットエンタープライズ市場」はまだこれからベンチャーが活躍する、新しいルールを作っていくチャンスがある産業だと思っています。インターネットメディア産業を否定するわけではなく、僕はそういうビジョンとか考え方を持ってベンチャー企業がやる意義のある仕事っていうのは、エンタープライズ側にどんどんシフトしてきているんじゃないかなと。

例えばTencent(騰訊)やAlibaba(阿里巴巴集团)はインターネットメディア産業の象徴だと理解されているかもしれませんが、実はTencentの会長はもうエンタープライズ向けの会社になると明言しているし、次の成長の柱としてSME向けの決済ツール、金融のツールを売っていて、実際売り上げの比率でいうと3割くらいになっているんですね。一方のAlibabaはAnt Financial(蚂蚁金服)とビークルを分けてしまっているので、売上の詳細は不明ですが同じくらいあるんじゃないでしょうか。

Amazonも営業利益のほとんどはAWSの売り上げです、Microsoftもエンタープライズ向けビジネスですよねもちろんB2C向けのサービスも持っていますが。GoogleもAWS的なGCPのビジネスを拡大していて、テックジャイアントと言われるところもエンタープライズ向けにシフトしてきています。

旅のはじまり

LayerXでの取り組みは、時間をかけてしっかりやっていこうと思っています。というのも、こういったエンタープライズの領域はtoCのビジネスのように、売り上げが0だったものが数年で何百億にというように急激に伸びるってことはそんなに起こらないと思うんです。

営業活動が必要ですし、ボタンを押すだけでユーザーがスケールしていくみたいな、スケールをお金で買うみたいな手段がそんなにある産業ではないので、地道な改善活動、地道な説得、地道な実装をやっていく。一方で、どこかでそれらが普及した先にスケーラブルな成長があると思います。最初は線形の伸びに見えるが、長い時間軸で見ると指数関数的になっていたみたいな、そういう類の産業かなと思っています。

なので時間をかけてやるのが大前提です。しっかりとキャッシュフローを積み上げて10年20年のタイムスパンで大きな波を作れればいいのかなと、それくらいの期間でやっていくくらいで考えています 。

産業的にはここの業界で先行してきたエムスリーやモノタロウはそういった思想で20年経営して、今や1兆円を超える時価総額になっています。それくらいの成長を思い描いていますが、2年後3年後に突然数千億にという類の市場ではないのかなと思っています。

via PR TIMES STORY

----------[AD]----------