データでオフィス不動産営業を支援するestie、プレシリーズAでGCPやUTECから2.5億円を調達——ゼンリングループとも連携

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estie のメンバー。中央が代表取締役の平井瑛氏。
Image credit: estie

オフィス賃貸に特化した不動産データプラットフォーム「estie(エスティ)」「estie pro(エスティ・プロ」を開発・運営する estie は14日、プレシリーズ A ラウンドで約2.5億円を調達したと発表した。このラウンドは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)と東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)が共同でリードした。なお、今回の出資は、GCP と UTEC にとって電子契約で完結した初案件となる(DocuSign を利用)。

これは、同社にとって2019年3月に実施したシードラウンド(東大新聞オンラインによる)に続くものだ。シードラウンドには UTEC が単独投資家として参加しており、この際の調達金額は明らかになっていないが STARTUP DB による登記簿情報からの推計では1.5億円。UTEC は今回を含め通算で2回目の出資となる。

estie は三菱地所、住友不動産、NTT ドコモ、ヤフーなどの出身者が集まって2018年12月に設立された不動産テックスタートアップ。同月、オフィス向け賃貸不動産に特化して不動産仲介会社とテナントをマッチングする estie をβローンチした(昨年9月に正式ローンチ)。また、昨年9月には、不動産オーナーや不動産仲介会社向けに、オフィス賃貸不動産の各種データを提供するプラットフォーム estie pro をローンチしている。

「estie pro」
Image credit: estie

estie pro ではこれまで公知の情報(自治体や関係団体から公表された情報)を収集・分析し情報を提供してきたが、今回大幅にバージョンアップし、一般公表されていないデータソースも含め、不動産デベロッパー、管理会社、仲介会社などからデータパイプラインを50以上追加し、物件基礎情報・募集床情報・推定成約資料・テナント情報の提供を開始。今後は、時系列成約水準・将来供給といったデータの提供も予定している。

昨年のサービス開始以来、いろんなところとの連携が進んできた。その一つの結果として、今回、ゼンリングループとの連携を発表するに至った。ゼンリンでは担当者が街を巡って、どのビルのどのフロアにどのようなテナントが入っているかの情報を集めている。

ゼンリンの持つデータと estie pro を連携することで、オーナーや不動産仲介会社にとっては競合となるビルのテナント情報、彼らがどのくらいの賃料で借りているかがわかる。都心だけで20万件のテナント情報から、営業先のアタックリストを作成できる。(代表取締役の平井瑛氏)

「estie pro」
Image credit: estie

オフィスビルのオーナーや不動産仲介会社の営業担当者にとっては、競合物件に入居するテナントを〝引き剥がし〟同等かそれ以上の立地条件で、築浅・割安な賃料・建物設備の充実などで自社物件への乗り換えを促すのが業務の一つ。従来ならば靴底を減らしながら行っていた営業活動を、estie pro を使えばインサイドセールスで完結できるようになる。ポスト新型コロナウイルス時代の不動産営業活動を標榜させてくれる趣だ。

不動産データを分析するスタートアップとしては、以前 BRIDGE でも紹介した「スマサテ」を運営するターミナルが存在するが、こちらは住居用の賃貸不動産の情報に特化している。平井氏によれば、住居用に比べ、オフィス用賃貸不動産はデータが収集しにくいこと、インフラになるような大規模なデータプラットフォームが無いこと、取扱一件あたりの規模が大きいことなどから、事業成長の可能性を感じているという。事実、サービス開始以来、estie は MoM ベースで40%のユーザ成長を記録しているそうだ。

estie では今回調達した資金を使って、データや機械学習アルゴリズムを使ったエンジニアリングをリードする人材採用を強化する見込み

アメリカのこの分野を見てみると、業界最大手の CoStar(NASDAQ:CSGP)をはじめ数多くのスタートアップが存在するが、日本において競合は皆無と言える。

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