「TOKYO STARTUP GATEWAY」第7期決勝が開催——森林由来微生物による環境改善、獣医と飼い主を繋ぐSaaS、農業レジャー化アプリなどが入賞

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東京都主催のビジネスプランコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2020」のファイナルが29日、都内で開催された。新型コロナウイルス感染防止の観点から今回はオンライン開催となった。

TOKYO STARTUP GATEWAY はテクノロジー、ソーシャルビジネス、地域課題解決などさまざまなジャンルにおいて、グローバルを見据えた起業家を「東京」から輩出しようというコンテスト形式のイベント。主催は東京都で、NPO法人 ETIC. が運営事務局を担当している。7回目を迎える今回は、2020年の4月からビジネスプランを公募。1,476件のプランが全国から集まり、それらの中から選抜された10名のファイナリストによるプレゼンテーションが行われた。

TOKYO STARTUP GATEWAY 2020 で、審査員を務めたのは次の方々だ。

  • 東京大学 教授/産学協創推進本部イノベーション推進部長 各務茂夫氏
  • Voyagin 創業者 高橋理志氏
  • アソビシステム 代表取締役 中川悠介氏
  • WORK JAPAN 代表取締役 松崎みさ氏
  • タスカジ 代表取締役 和田幸子氏

(本稿中の写真は、いずれも TOKYO STARTUP GATEWAY のライブ配信からのもの)

【最優秀賞】微生物多様性によって実現する健康な都市デザイン by 伊藤光平氏

副賞:トロフィー、100万円

高校生の頃から人体に38兆個も共生するとされる微生物のゲノム解析を行なっていた伊藤氏。大学に進学後は、人体の外にいる微生物に興味を持ち、学生団体「GoSWAB」を組織して仲間らと共に全国各地に出向き、その地域の微生物を採取し解析してきた。その結果、微生物のゲノム解析をもう一歩進め、人体に良い影響を与える微生物を集め環境改善に役立てるプロバイオティクスに着手した。

人が1日の約9割の時間を室内は室外に比べ室内は約5倍汚れている。特に人が外から持ち帰った微生物ばかりだと多様性にかけるため、例えば、病原菌が繁殖しやすくなってしまう。伊藤氏のチームでは、森林由来の微生物を室内環境に放出できるデバイス「グリーンエア」を開発。微生物に有機物を消費させることで、病原菌の増殖を抑制したり、アレルゲンを提言したりすることが可能になる。

これまでに蓄積したゲノム解析のデータによって、どのような場所にどのような微生物が多くいて、どのような効果をもたらすかを把握できているため、利用シーンに応じて、どのような森林由来微生物をグリーンエアから放出すべきかも検討できる。アレルギーを持つ人、赤ちゃんの健康が気になる人、ペットの匂いが健康になる人などがターゲット。将来は都市全体の環境改善を目指す。

【優秀賞】言葉を発しない動物たちの「苦しみのサイン」を汲み取るアプリ by 富永晃世氏

副賞:トロフィー、50万円

獣医の富永氏によれば、獣医療における課題は、早期に受診していれば救えたはずのペットの命が多く失われることだ。飼い主が早期に動物病院にペットを連れて行かないのは、人のように言葉でコミュニケーションが取れるわけではないため、ペットの身体の状態を細かく認知できない上、病変を知っても緊急度がわからない、また、治療に必要な費用や時間がわからないことなどが背景にある。

そこで富永氏のチームは、獣医療向け SaaS「ANICLE(アニクル)」を開発。Anicle では、AI 自動問診、問診結果に応じた動物病院の紹介、問診内容の動物病院への事前共有によるスムーズな受診を提供する。国際的ガイドラインに沿って作成された問診に答えると、独自アルゴリズムにより、考えられる疾患一覧、症状の緊急性、家庭でできる対処法なども教えてくれる。

ANICLE の利用にあたって、ペットの飼い主は費用は一切かからない。動物病院への送客や事前問診の対価として、動物病院から料金を徴収する。サービス開発にあたり5つの動物病院に協力を得ており、多くの現役の獣医も協力しているという。ANICLE は東京大学の「アントレプレナーシップ・チャレンジ 2020」で最優秀賞を獲得、東京大学 FoundX の「Pre-founders Program」にも採択された。

【優秀賞】農業を体験型レジャーとして創り換え、地域の課題を魅力に再定義 by 原田そら氏

副賞:トロフィー、50万円

現役高専生で弱冠17歳の原田氏が取り組むのは、農業を体験型レジャーとして提供するプラットフォーム「GamifyAgri」だ。少子高齢化に伴い農業人口は減少、新規就農者の不足や耕作放棄地の増加がさらに追い討ちをかける形で、農業の維持には多くの課題がある。GamifyAgri は農業をレジャーにすることで一般市民に楽しみながら参加してもらうのがコンセプトだ。

農産物を収穫する部分のみがゲーム化されたサービスはこれまでにも存在したが、GamifyAgri ではあくまで、農作物を植え付けるところから収穫するまで、また、その途中の農作物を育てるフェーズの部分まで、すべてを課題として楽しめるようにしている。地域活性化に関心の高い農家の協力を得て、当初は参加した市民にマンツーマンで指導を行い楽しんでもらう。

関係人口の増大により、就農者のハードルを下げることが期待される。また、農家は体験を提供することへの対価や、農作物を販売する相手として参加した市民から現金収入を得ることができる。ひいては、耕作放棄地も減らしていきたいと考えるのが GamifyAgri の考えだ。セキュリティ大手のラックが社会貢献事業「すごうで」で、GamifyAgri のアプリやサービスの開発に協力している

【オーディエンス賞】AI×データ時代の数学教育をアップデートする by 近藤啓太氏

近藤氏が構築しようとするのは AI 人材輩出の数学教育プラットフォームだ。来るべき AI 時代に備え、AI を使いこなすための基礎知識として、数学が持つ重要性は以前に増して高まるだろう。OECD 37ヵ国中で16歳を対象とした調査によれば、日本は数学リテラシーが世界2位であるにもかかわらず、「数学は将来役立つ」と答えた人は最下位だった。

数学が将来どのように役立つかをわかりやすく示すことで、人々はよりモチベーション豊かに数学の習得に向かえると考えた近藤氏は今年8月から AI のプロと組んでその方法を模索してきた。そうして行き着いた答えが、数学を数学から教えるのではなく、数学の向こうにあるビジネスから遡る形で数学を教える、というアプローチだった。

この事業では、ゴールから逆算して作成したカリキュラムを配信し、アウトプットを出すための伴走支援ができる、ユーザに合ったコーチのマッチングを行う。AI に関しては数々の教育機関が MOOC で教材を提供しており、その数は1万以上に上るが、選択肢が多くインプットが偏重していることから、どんな職種の人が何に悩んでいるかのデータを元に、最適化したカリキュラムを提供する。

【レジリエンス賞】心の免疫力を上げる!心理学メソッドが学べるオンラインスクール by 松尾華香氏

新型コロナウイルスの感染拡大により、感染症への感染を防ぐことに加え、感染症予防がもたらすスキンシップの減少などから精神不安定や鬱といった健康課題も増加しており、メンタルヘルスへの関心が高まっている。これまでメンタルヘルスは一部の人のものと考えられていたが、コロナ禍においては誰もが自分ごととして捉えられるようになった。

一方、メンタルヘルスのさまざまなソリューションは、多くのものは人が社会に出て、精神上の問題が顕在化して使われるものがほとんどだ。感染症同様に、心の問題にも社会として免疫システムが必要だと考えた臨床心理士の松尾氏は、子供のうちから心理学のメソッドに親しむことで、心の免疫力を上げられる学びの機会が必要と考え、オンラインメンタルスクール「プシケ(ギリシア語の心理学を表す単語に由来)」を提案した。

新型コロナウイルスも相まって、不登校増加や感染予防のための欠席から、今年は昨年の約2倍に相当する58人の中高生が自ら命を絶った。中高生に心のケアとサポートを届ける必要があるが、成人と違って思いを淡々と言葉にするのが難しい、家庭環境も意識する必要がある、などの課題もある。オンラインで親しみやすいコンテンツを提供し、家族丸ごとサポートできるサービスを目指す。


入賞には至らなかったものの、ファイナリストに残った他の参加者は次の通り。

  • ウェアラブルデバイスで、発達障害者が活躍できる社会をつくる by 池田将彰氏
  • わたし想いの女性を増やす、“おかえり”ショーツ by 江連千佳氏
  • 葉器で世界を陽気に by バンダリ・サガル氏
  • 手ぶらで屋外ミール!食と共に自然を楽しみリフレッシュ体験を by 菱山翔平氏
  • 日本産のミュージカルで人類の未来を変える第一歩 by 水島由季菜氏

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