日本からも「梨泰院クラス」のクリエイターは生まれるか——ロケットスタッフ、ウェブトゥーン事業に参入

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「日本進出ウェブトゥーンコンペ」と題された募集案内
Image credit: Rocket Staff

ネットフリックスを開いてみると、今日もトップ10の半分を韓国ドラマが独占している。このうち、「相続者たち(상속자들)」「梨泰院クラス(이태원 클라쓰)」「悪霊狩猟団:カウンターズ(경이로운 소문)」の3作品は、ウェブトゥーン(웹툰)を原作としてドラマ化されたものだ。

ウェブトゥーンについて、BRIDGE で初めて取り上げたのは、2010年代前半に韓国スタートアップのタパスティック(타파스틱、後のタパスメディア=타파스미디어)や Lezhin Comics(레진코믹스)が資金調達し事業拡大を始めた頃だった。ウェブトゥーンとは WEB と漫画(carTOON)の合成語で、韓国で当時流行し始めたネットで読める漫画の総称だ。

漫画本やコミック雑誌のコマ割りを踏襲する日本の漫画と異なり、ウェブトゥーンは最初からモバイルで読まれることを想定して作られたため、片手でスクロールしながら読むときにストレスが少ない。Naver や Daum といった大手ポータルサイトが無料で提供し韓国社会に広く定着した。日本のドラマに漫画原作が多いのと同様、韓国でもウェブトゥーンを元に映画やドラマの人気作品が多数生まれた。

無名からウェブトゥーン作家を発掘し、テレビドラマ化、映画化、海外配給、さらには現地焼き直しのリバイバル(例えば、梨泰院クラスからは、日本で「六本木クラス」という作品が生まれている)まで行けば、作家はもとより、その作家を発掘したプラットフォームやプロダクションにも多くの収益がもたらされる。韓国の昨年のウェブトゥーン取引額は1兆ウォン(約890億円)まで成長した。

今のウェブトゥーン市場は、20年前のオンラインゲームに似ており、日本まだ黎明期だと思っている。

こう語るのは、先月、アニメイトグループ入りを発表したロケットスタッフの高榮郁(Kou Youngwook、고영욱)氏だ。創業時はモバイルアプリの開発やマーケティング、その後には、マンガの無料アプリをヒットさせ、シャットダウンしてしまったがブロックチェーンを使った分散型アドネットワークまで手がけていた高氏。儲かりそうなビジネスに次々と適応していくスピードには舌を巻く。

11期目を迎えたロケットスタッフは、ウェブトゥーンを日本市場で開拓する事業に新たに着手するようだ。

日本のウェブトゥーン業界で先を行く「ピッコマ」

日本でウェブトゥーンを語る上で押さえておかなければならないのは「ピッコマ」の存在だろう。韓国テック大手カカオの日本法人であるカカオジャパンが2016年にスタートしたピッコマは、日本市場での漫画アプリとしては後発だ。当初はコンテンツが揃わず苦戦を強いられたが、昨年7月や8月には iOS と Google Play で日本の非ゲームアプリで売上1位に輝いた。昨年時点で売上の約4割をウェブトゥーンが占めているという。

LINE マンガ や comico といった韓国系他社による漫画アプリもウェブトゥーンに力を入れ始めた。ライトノベルや既存の実写ドラマをウェブトゥーン化するような動きも出てきていて、メディアミックス百花繚乱の兆しさえ見える。モバイルでのマネタイズでよくある広告のインサートはゲームに譲り、角川映画・角川文庫が昔よく言っていた「見てから読むか、読んでから見るか」時代の再来を彷彿させる。

「スタジオリボン」 の立ち上げ

ロケットスタッフのメンバーの皆さん(一部)。前列左が創業者で代表取締役の高榮郁氏。
Image credit: Rocket Staff

ロケットスタッフは先ごろ、「スタジオリボン」というプロジェクトを立ち上げた。Web サイトには「日本で初めてのウェブトゥーンスタジオ」と英語表記され、内容の多くが韓国語で記述されている点から推察すると、韓国でウェブトゥーン作家を発掘し、日本市場に彼らの作品を投入していこう、という計画だろう。

実際、ロケットスタッフでは昨年11月から今年1月末まで、先日親会社となったアニメイトと KDDI やソニーの子会社である電子書籍関連会社ブックリスタの後援を得て、韓国でウェブトゥーン募集のコンテストを展開していた。ロケットスタッフによればこのコンテストでは韓国から約60作品が集まったそうで、同社アプリ「マンガ KING」などを通じて日本国内で配信する予定だ。

韓国ウェブトゥーンの制作ノウハウを蓄積し、日本でウェブトゥーン制作アカデミーを開業し、日本初のウェブトゥーン制作を目指したい。(NiziU を生み出した)Nizi Project のウェブトゥーン版を日本でやれるのではないか。

韓国ではウェブトゥーン作家がテレビ主演しタレントのようになっている。日本でも人気の「女神降臨(여신강림)」の作者である yaongyi(야옹이)氏は芸能人並みの人気だ。(高氏)

エンターテイメントが一大産業に成長した韓国では、単に完成されたコンテンツだけでなく、アーティストの育成プロセスやマーケティングノウハウまでが輸出されるようになった。その典型が高氏も言う Nizi Project だ。アニメや漫画で世界を席巻してきた日本に、韓国流のエンタメフォーマットがどう根付くだろうか。

高氏は将来、日本のウェブトゥーン市場が韓国のそれの3倍に相当する3兆ウォン規模(約2,800億円)にまで成長すると見ている。日本の現在のアニメ市場の規模を2割程度上回る数字だ。世界の聴衆の嗜好に徹底的に適応したことで世界王座を獲得した BTS(방탄소년단)のように、韓国のみならず日本から生まれたウェブトゥーンが世界のエンタメ界を席巻する日は近いのかもしれない。

<参考文献>