意外に多い、ウクライナ拠点や出身の世界的有名スタートアップ——ロシアによる侵攻後も、多くはキーウで業務を続行

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via Flickr by Marco Verch Professional Photographer
CC BY-NC-ND 2.0

<28日19時更新> 都市名をロシア語発音に由来するものから、ウクライナ語発音に由来するものに差替。カタカナ表記は、ウクライナ国営通信社「ウクルインフォルム日本語版」を参考にした。

ロシアがウクライナを侵攻する中、ウクライナ国内のテック企業も戦争による対応に乗り出している。スタートアップもリモートワークや移住支援など対策に乗り出している。ウクライナのスタートアップ業界は規模が小さいが、ここで誕生したり、ウクライナ出身者が設立したりしたスタートアップは世界中で活躍している。

ウクライナ発・英文法訂正の Grammarly は130億米ドルの時価総額を認められデカコーンに、また、ウクライナ出身の開発者が作った Github は NASDAQ に上場、イギリスで最も時価総額の高いフィンテック企業 Revolut もウクライナ出身の創業者が設立した。ウクライナは、英語を話す優秀な人材を低コストで手に入れられるため、多くのグローバル企業がここを人材ハブにしている。

Pitchbook のデータによると、現在ウクライナには125社以上のスタートアップと技術企業がオフィスを構えている。Amazon、Lyft、Uber などグローバル企業もウクライナに進出している。グローバル企業がウクライナの社員避難のための各種支援計画を発表する中、スタートアップの大多数はキーウに残って運営されているようだ。

キーウに本社を置くソフトウェア開発会社 Macpaw は、ブログを通じて従業員の安全を確保し、すべてのサービスはそのまま運営されると明らかにした。 Amazon Web Services ですべてのデータを安全にホスティングしており、クラウドサーバもウクライナ以外の地域で運営されているため問題はない。

Grammarly はサービスが中断されないように事業運営を他の国に移転し、チームメンバーが安全に過ごせる緊急計画を実施している。スウェーデンの Beetroot は、人材の90%がウクライナにいるが、移住支援により従業員の50~60人はウクライナを後にした。

フリーランスのマーケットプレイス「Lemon.io」は、従業員がウクライナの民間防衛軍に入隊しても給与の全額を提供し続けることを明らかにした。Revolut は、他国へ移住を希望する従業員全員を支援し、グローバルセキュリティソリューションパートナーを雇い緊急物流支援を提供している。

Uber はウクライナでの運営を一時停止した。キーウの従業員には移住を、ライダーには自宅に滞在することを提案し、Lyft も緊急状況に備えて一時的に移住しようとする人々のために財政支援を提供している。

キーウに事務所を置いたモビリティスタートアップ Bolt は、サービスは引き続き運営しているが、従業員にリモートワークの選択肢と、それに移行するための予算を提供した。

今回のロシア侵攻でウクライナのスタートアップの成長速度は遅くなり、ウクライナスタートアップへの投資も減るだろう。特にシードスタートアップの資金調達はほぼ不可能になると見られる。ウクライナのベンチャーキャピタル SMRK の パートナー Andriy Dovzhenko 氏は、Pitchbook とのインタビューで次のように語っている。

海外投資家は、状況が落ち着くまで数週間から数ヶ月間、投資を停止するかもしれないが、特に欧米からの強い支持を期待している。我々のファンドは現在も投資先を探しており、資金調達の見通しにも前向きだ。

<参考文献>

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