ビジネス向け翻訳「YarakuZen」、ファイル保存だけでセキュアに多言語翻訳される「Box」連携サービスをローンチ

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Image credit: Yaraku

ビジネス向け翻訳ソリューション「YarakuZen(ヤラクゼン)」を提供する八楽は6日、「ヤラクゼン for Box」をローンチした。ファイル共有サービス「Box」と連携し、ユーザは予め設定したフォルダにファイルを置くことで、自動的に指定した言語に翻訳されたファイルが生成される。翻訳エンジンはニーズにあわせて複数から選ぶことができ、翻訳エンジン提供元とは NDA(秘密保持契約)が締結され、エンジンの学習のためのデータとして活用されることもないため、セキュアな翻訳が可能だとしている。

八楽は2009年8月の創業。当初、サードパーティが提供するクラウドソーシング翻訳と自社開発の翻訳データベースを組み合わせた、Web サイト向けの効率的で安価な翻訳サービス WorldJumper や FonTrans を提供していたが、そ羽して得られた知見をもとに、2014年9月に YarakuZen をローンチした。YarakuZen テキストはもとより、Word / Excel / PowerPoint などのファイルでのデータ授受が可能であり API も利用できる翻訳サービスだ。

アップロードやダウンロードといった作業で手を煩わせることなく、自分の PC 上のファイルを他者と同期・共有できるファイル共有サービスとしては DropBox や GoogleDrive などが有名だが、企業ユーザにとっては Box が一般的で、国内で8,000社、世界で10万社がサービスを利用している。八楽では、YarakuZen を Box と API 連携することで今回のサービスを実現させた。翻訳エンジンは DeepL、Google 翻訳、Microsoft、NICT(情報通信研究機構)のものから選べ28言語に対応する。

Image credit: Yaraku

ユーザからの翻訳依頼を重ねることで、翻訳結果のブラッシュアップを図っている翻訳エンジンでは、必然的に翻訳元と翻訳結果が機械学習のためのデータとして取り込まれることになるが、機密事項や非公開情報が含まれる可能性がある文章が二次利用されるのは企業にとっては都合が悪い。当該の翻訳エンジンに第三者が似たような表現の翻訳を依頼した際、意図せず、自社の情報が漏洩・露呈する可能性があるからだ。YarakuZen for Box では、翻訳エンジン各社との契約により、二次利用される可能性を排除している。

ある大手消費財化学メーカーでは、研究開発部門が YarakuZen for Box を先行導入しており、日本語から他言語への研究論文の翻訳に利用している。300名に上る研究員らが、毎月10万ほどあるファイルを YarakuZen for Box を使って翻訳できるようになり、時間と手間を大幅に削減できているという。また、特に国外に流出することにセンシティブな企業は、さらなる安心を求めて、翻訳エンジンには国産の NICT を選ぶ傾向が強いという。

YarakuZen はローンチ当初から、ファイル共有の仕組みを使った翻訳ソリューションを提供してきた。2019年6月には、八楽にとって競合にあたる WOVN Technologies が、YarakuZen とよく似たサービスとして WOVN WorkBox をローンチした。YarakuZen は今回、Box をアプリ連携のパートナーとしたことで、新たな顧客流入経路を開拓できる可能性がある。また、アプリや Web サイトなどの翻訳を得意とする WOVN とは、取り扱う情報の性質などから棲み分けができるのかもしれない。

八楽は2013年5月にニッセイ・キャピタルや日本ベンチャーキャピタルなどから約1億1000万円、2016年9月にコニカミノルタ(東証:4902)、アドバンスド・メディア(東証:3773)、ソニーネットワークコミュニケーションズ(旧称:ソネット)から非開示額を資金調達している

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