マイクロソフトとHIRAC FUND、アーリー期の資金調達について語り合う英語ミートアップを開催

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Image credit: Masaru Ikeda

マイクロソフトのスタートアップ向け支援プログラム「Microsoft for Startups」とベンチャーキャピタルの HIRAC FUND は9月26日、「Startup fundraising:how to set your milestone for Pre A/series A fund-raising」と題したミートアップを都内で開催した。第2四半期の最終週という忙しい時期にもかかわらず、おそらく、50人程度の参加者が集まっていたように思う。筆者が実際に言葉を交わした参加者の中には、遠路はるばる沖縄からやってきた女性もいた。

BRIDGE もこれまでミートアップを開催してきたが、日本で英語イベントを開催すると、日本語を話す日本人と、それ以外の言葉を話す外国人が、分かれてミングルしてしまうことが散見される。ミートアップの共同ホストである Yuhong Chen(陳宇鴻)氏によれば、まず、Startup Co-creation、Tokyo Startup Lunch Club、Founder Institute Japan といったコミュニティ経由で参加者を募り、その後に日本人参加者を募るようにしたことで、多様のバランスが取れたようだ。

左から:STRIVE の四方智之氏、DG Daiwa Ventures の野島隆太郎氏、HIRAC FUND の檜山悠太朗氏
Image credit: Masaru Ikeda

イベントの冒頭では、KPMG が先頃公開した、「Q1 ’22 Venture Pulse Report」のグラフが共有された。このレポートでは世界、および、アメリカ単体、南米アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおけるスタートアップへの投資総額、ラウンド毎の投資件数などがグラフ形式でまとめられており、今年に入ってどちらも総じて、減少傾向にあることがわかる。Y Combinator が投資先起業家に忠告していることなどからも、スタートアップにとって資金調達の冬の時代が到来する可能性は否めない。

しかし、日本の現状を見てみると、世界とは少し状況が異なる。ベンチャーエンタープライズセンターINITIAL、for Startups の「STARTUP DB」などがそれぞれ統計を発表しているが、それらによると、2022年上半期では、投資件数が減少傾向にあるが、投資総額は増えているのだ。この事実から、資金調達に成功しているアーリースタートアップは減っている一方、ミドルステージ以降のスタートアップが、1社あたり、以前より多額の調達に成功していることが推測できる。

左から:マイクロソフトの  Yuhong Chen(陳宇鴻)氏、UB Venturres の CHiamin Lai(頼嘉満)氏
Image credit: Masaru Ikeda

投資マネーはリスクの低い方に流れるが、高いリターンの可能性を提示することで、リスクの高いアーリースタートアップにも資金が提供されてきた。たくさんのシーズがたくさん生まれ、そこから、選ばれしものが残っていく多産多死のサイクルを許容する環境こそがスタートアップエコシステムの原動力なのだが、それがそうではなくなって来ているとしたら、是正する必要がある。今回のイベントは、潜在的起業家により起業を促し、現役起業家にはアーリーステージでの資金調達手段の知見を共有することが目的だったようだ。

イベントで話されたキーフレーズをいくつかピックアップしてみた(発言者名は省略)。

  • シードステージは、まずは、創業者が自分がやりたいこと(パッション)を実行するフェーズ。そこから、ユーザバリデーションを経て、何がうまく行って、何がうまく行かないかを見極めるフェーズがプレシリーズ A ラウンド。シリーズ A ラウンドは、ユーザにどれだけ必要としてもらうか、サービスに対して、お金を払ってもらえるかにたどり着いたところから始まる。
  • ラウンドステージの定義は、状況によって大きく異なる。日本とアメリカや中国でも違うし、フィンテックはバリュエーションが他業種とは異なるので、ステージの定義がややトリッキーだ。IoT やハードウェアは時間がかかるので、その条件に合った投資家と話をしてみる必要がある。SaaS は一定のマイルストーンに達すれば、そこから先の成長に比較的メドを立てやすいかもしれない。
  • ブートストラップスタートアップ(投資家から資金調達していないスタートアップ)に関する質問が多く寄せられた。聴衆の何人かは、日本で事業を立ち上げ、一定のユーザトラクションを得て、ブレイクイーブン以上には達しているということかもしれない。ブートストラップスタートアップへの投資に VC は興味あるのかという質問が投げかけられたが、VC から資金を受け入れてスケールしたいと思うか、創業者の考え方次第という回答だった。

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