ライドシェア保険から紐解くインシュアテックの今(2/2)

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Directorの皆川朋子氏が共同執筆した。

コラボレーションの必要性

「Insure as a Service」を展開するドイツのELEMENT

(前回からのつづき)ではこういった業界の大きな変化は誰が担うべきなのだろうか。

事例で挙げたBuckleはライドシェアに目をつけ、大手プラットフォームと保険企業も巻き込み事業拡大を目指している。大手はなぜここを総取りできなかったのか。

実は国内でも大手保険会社はすでにシェアリング向けのサービスを展開している。東京海上日動火災保険は2017年にいち早くシェアリング関連の自動車保険の販売を開始している。

他方、オンデマンドのような新しい業態の到来や、査定の自動化などにおけるビッグデータのリアルタイム活用には、従来の保険システムでは対応しきれない場合がほとんどだ。かといって重厚長大な既存システムを大幅に変更するには年単位の時間とコストがかかり、大手は機敏に動けない。例えば「スマホ対応」と言っても、簡単にできるようなものではないのだ。

こういった足回りの問題で単独での展開が難しい場合、やはり候補として挙がるのはコラボレーションの方向性になる。

例えば、グローバル・ブレインが支援するドイツの「ELEMENT」は保険サービスに必要な機能をモジュールのようにして提供する「Insure as a Service」を展開しているのだが、先頃、三井住友海上火災保険と提携したことを公表している。これにより今後、多様化する保険商品の開発を加速させる効果が期待されている。

今後を占うP2P保険

ライドシェア保険をきっかけに、インシュアテックにまつわる領域を説明してきた。最後にP2P保険についても言及しておきたい。

グローバルでは米Lemonade、中国アリババグループの相互宝、日本ではjustInCaseが展開している新しい保険のスキームだ。加入者の誰かが被保険者となった場合、加入者でそのリスクを分担する仕組みで、justInCaseのわりかん保険では、加入者の誰かががんになった時、契約者全員でその保険金を「わりかん」する。

justincaseの提供する「わりかん保険」

「わりかん保険」では、一般的な保険料の毎月・前払いではなく、前月にがんになった人の数で支払う金額がきまる仕組みで、対象者がいなければ保険料を支払う必要はない。今後もP2P保険のように、全く新しい形の保険サービスは増えてくるだろう。

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