<13日午前10時更新> AUM は CVC ファンドを含む金額であるため表記を一部訂正。CVC ファンドを GP 運用する相手先に農林中央金庫を追加。(赤字部)
グローバル・ブレインは10日、オンラインで年次イベント「Global Brain Alliance Forum 2021(以下、GBAF 2021 と略す)」を開催している。このイベントの中で、代表取締役の百合本安彦氏は、同社の今後の経営戦略について発表した。
2021年の振り返り——120社に200億円を投資実行、投資先4社がIPO、9社がM&Aでイグジット
百合本氏は、GBAF 2018 で組成を発表した7号ファンドに引き続き、400億円規模の8号ファンドと100億円規模の6号&7号フォローファンドを組成中であることを明らかにした。同社が大企業と共同運営する CVC ファンドを除いたと純投資ファンド(1号〜8号ファンド)の AUM(Assets Under Management、運用するファンドの総資金量)は1,706億円で、来年には2,000億円を上回る勢いだ。
2021年にグローバル・ブレインが実施した出資は120社200億円に達し、投資先がイグジットを果たした実績は IPO が4社、M&A が9社に達した(累積では24社、M&A は57社)。
IPO でイグジットを果たしたスタートアップは、スマホ待受画面でニュースを見せる「CashSlide(캐시슬라이드)」を開発する韓国 NBT Partners、フォトシンス、ワンダープラネット、セーフィーだ(昨年の GBAF でも IPO したスタートアップとして NBT Partners の名前が挙げられていた。この時点では IPO 承認後であり、IPO 前だったとみられる。)
M&A では、シンガポール発の特許検索・分析ツール開発スタートアップ Patsnap が Tencent(騰訊)に、またB 向け KYC サービスを提供するオーストリアの RegTech スタートアップ kompany が Moody’s に買収された。今年得られるキャピタルゲインの総和は110億円を超える見込みだという。
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グローバル市場への本格展開
現在、グローバル・ブレインは東京を含め世界に8つの拠点を持っているが、新たにドイツ・ベルリンとインド・バンガロールに拠点を追加開設する。ロンドンについては人員を強化し、中国やインドについては既設の上海拠点と新設されるバンガロール拠点から投資を拡大、また、アフリカについては拠点は置かないものの、イギリス拠点などが中心となって、エジプト、ナイジェリア、ケニア、南アフリカのスタートアップに投資を始める。
百合本氏によれば、グローバル・ブレインの国内シリーズ A カバー率(シリーズ A ラウンド調達した国内スタートアップの、何社に出資参加できているか)は85%程度に達しており、目先の利益を考えれば海外に出る必要はないとしながらも、先頭を切って市場を開拓し、海外市場にチャレンジするスタートアップを支援することに意味があり、世界のユニコーンや時価総額の8割を生み出すアメリカ、ヨーロッパ、中国といった大きな市場に資本を投下することで投資パフォーマンスの最大化を狙う必要性を強調した。
国内では地方創生、CVC 連携の強化
コロナ禍でリモートワークが定着してきたことから、スタートアップハブにとらわれない、自分にとって都合の良い地域で事業を始める起業家が増えている。アメリカでは、シリコンバレーではなくフロリダやテキサスで創業する、といった具合だ。早かれ遅かれ、このトレンドは日本のスタートアップシーンにも訪れることになり、地方創生を加速する一つの材料になるだろう。百合本氏はこの動きに対応する活動の一つとして、京都銀行と協業し関西地域のスタートアップ発掘やオープンイノベーション活性化に貢献すると話した。
グローバル・ブレインでは現在、KDDI、三井不動産、ソニーフィナンシャルグループ、セイコーエプソン、 ヤマトホールディングス、キリンホールディングス、日揮ホールディングス、農林中央金庫の8つの大手事業会社の CVC ファンドをジェネラルパートナーとして運営している。同社では、活発化している世界の CVC ファンドの動きをモニタリングしながら、そうして得られた知見を自社運営の CVC ファンドにも取り込み、LP である事業会社各社のバリュープロポジションを見ながらスタートアップへ協創やシナジーを促したい考えだ。
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