身近なバーコードが新しい情報のインフラになる−−スキャンするだけで商品情報が閲覧できる「Payke」が築くインバウンド消費のおもてなし

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私たちの身近な存在としてありながら、普通の人にとっては普段なかなか使う機会がないものの一つとして、「バーコード」がある。店舗運営に従事している人であれば、レジでの読み取りなどで慣れ親しんでいるものの、一般的にバーコード自体の認知率の高さと利用度合いのズレは大きい。

しかし、バーコードは製品情報が盛り込まれたデジタルデータの宝庫。そのバーコードを利用し新しい利用価値を見出そうとしているのが「Payke」だ。

Paykeは、スマホアプリで商品に付いているバーコードを読み取るだけで、アプリ上のその商品の商品情報を取得できるサービスだ。企業は、商品ごとの説明情報をPayke上にコンテンツとして掲載することで、商品パッケージやPOPだけでは訴求できない商品情報を届けることができる。さらに、日本語、英語、中国語、韓国語など、各言語に対応して商品ページを作ることができ、ユーザーの使用言 語に合わせた製品情報を届けることができる。

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「例えば、訪日外国人が日本に来た時に、日本語で書かれた商品パッケージを見ても、なんの商品なのか、液体であれば飲んでいいものかどうか、どんな味なのか、食べ物によってはベジタリアンやビーガン、宗教上食べてはいけないモノが入っていないか、などをすべて網羅することができません。かといってすべての言語で説明するほどの余白があるわけではない。そこで、バーコードというあらゆる商品に付いているツールを窓口に、商品情報を届けることができればと考えました」

そう話すのは、代表取締役の古田奎輔氏。もともと沖縄で貿易関係やECのサイトを運営していたことから、パッケージから ではなかなか伝わらない沖縄の商品の良さを外国の人々に伝える手段を模索し、自身が商品の販売元としてバーコードに触れているなかで、流通のインフラとなっているデジタルデータをもとに、スマホ時代の新しい情報インフラになるのでは、と考えたという。

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Paykeを創業した古田氏らは、サービス開発を行うだけでなく テストマーケティングとして、まずは地元沖縄を中心に、沖縄 の特産品に特化して名産品を作っているメーカーにアプローチしてサービスを導入。2015年12月には沖縄県の認定 ベンチャー企業の指定も受け、自治体と連携し沖縄全域での導入を急速に拡大していった。

「このアプリのポイントは、ユーザがアプリをダウンロードするのもいいですが、重要なのは店舗スタッフがアプリを持つだけで誰でも確実に商品説明ができるということです。英語や中国語が話せないスタッフも、バーコードをスキャンして商品画面をお客さんに見せることでお客さんが商品を理解してくれます。また、新人さんの商品知識の教育としてお店にある商品の理解もスムーズにいきます」

いまでは沖縄の特産品を作っているメーカーや小売の8割近くがPaykeを使っており、那覇空港でも外国人との接客ツ ールとしてPaykeが活用されている。また、バーコードをスキャンした履歴もアプリに蓄積されるため、自国に帰国後も気に入った商品を思い出し再購入を促すことができる。もちろん、スキャンデータはPayke内にも蓄積されるため、いつ、どこで、 どういった人が、どのような商品に興味をもったという、通常のPOSデータのような購入データの手前の、商品の興味データが可視化されることによる、さまざまなデータ活用の道筋もある。

「バーコードを読み取るということは、お客にとっては商品に興味を持った証拠。仮にそこから購入に至らなかったなら、何が問題なのかをグロースハックすることもできる。ユーザにとっては商品の詳細情報を得ることで商品の理解を促し、店舗はあらゆる顧客に商品を理解し購買を促進することができる。企業であればあらゆるユーザの興味関心をデータとして把握することで、新しい商品開発にも活かすことができる」

2015年10月ローンチともに、登録商品数は累計で7000を超え、累計スキャン数も2万件を超えているという。現在は、沖縄を中心にすでに100社以上のメーカー各社が商品情報を更新。2016年2月23日に開催された山口・沖縄を含む九州各県のベンチャーが出展する「九州・山口ベンチャーマーケット」では最優秀賞を受賞している。

スキャン見比べ

次に狙うものとして、訪日外国人らが購入するドラッグストア や量販店、インバウンド消費を取り込みたいメーカーや小売店へのアプローチを強めており、す でに2015年11月から東京支社を開設し、大手家電メーカーや 大手製薬会社、大手化粧品会社等の導入も進んでいるという。

ビジネスモデルとして、フリーミアムモデルを採用とともに無料の管理アカウントをメーカーに配布。商品ページのリッチコンテンツ化による有料オプションや自社商品がどういったユーザや場所でスキャンされているかという情報のソートやアナリティクスツールによる課金を考えている。OEMによる機能提供やスキャンデータやデータベースの拡充、APIの公開などの機能も見据えている。

「バーコードがメディアになる時代がきた」と古田氏は話す。これまでただの流通インフラだったバーコードだが、これを一般消費者 が便利に使えるツールにするために、新しい機能と情報データを付加することで新しい経済圏を築く礎となる。これは「枯れた技術の水平思考」による「バージョン2.0」の発想かもしれない。

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