AnyPayは個人間送金の問題に挑戦するーー連続起業家、木村新司氏の新たな挑戦

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2016.8.5

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木村新司氏が現場に帰ってきた。

スマホ時代到来の流れをいち早く捉え、2007年にアドテク企業「アトランティス」を創業。事業売却した数年の後にエンジェル投資家に転身し、その支援先のひとつ「Gunosy」は若手起業家の力を存分に引き出して数年でのマザーズ上場に成功した。

「きむしんさん、次は何をするの?」。

ーー私が1年前、帰国中の彼に尋ねた答え、それがようやくお目見えすることとなった。

AnyPayが向かう先

彼がFacebookで友人にAnyPayのβ版を公開した時、私もすぐにアカウントを作って試してみた。国内で言えばメタップスが提供する無料の決済サービス「Spike」に非常に近い。アカウントを作ればすぐに誰でもモノが売れる、そんな手軽さが受け、1年9カ月で20万アカウントを獲得した同社主力サービスのひとつだ。

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AnyPayのダッシュボード

9月に正式リリースということなのでサービスの詳細や価格などはその時にお伝えするとして、ざっと見た感じではAnyPayはSpikeに比べ、ややスマホに特化している点は異なるものの、そこまで大きな違いは見当たらない。

「なぜ今?」ーーこの疑問を最初に頭に浮かべた人は私だけでないはずだ。インスタントな決済サービスはPayPalをはじめ、開発者寄りのWebPay、PAY.JP、海外勢のStripeにBraintree、SquareやCoineyなどの端末連動とここ数年で飽和気味に膨れ上がっている。

しかし彼が見ている未来像は、どうやらそこではないらしい。彼は私の質問にこんな風に答えてくれた。

「いわゆるアカウントにクレジットカードが紐付いた送金サービスは海外ですごく使うんです。一方で日本やアジア圏ではまだそこまで普及していない。これはあっていいんじゃないかと。スマホで決済のリンクを作ってサービスを提供したり、個人間で売買したり。ここにはまだ不便が残ってるんです」(木村氏)。

少し整理しておこう。スマホ時代の決済サービスは「B2C(事業者向け)」と「C2C(個人間)」に分けると理解しやすい。前述したPaypalなどのサービスは開発者向けや事業者でもすぐ使えるなどの使い勝手で種類が分かれるものの、主にはビジネス向けのサービスで、現在日本で展開してる多くの事業者はここを攻めている。

一方でC2CはビットコインやLINE Payなどの個人間送金や、ヤフーウォレット、メルカリなどのフリマ・オークションで利用される個人間売買送金がそれにあたる。海外勢では各種ビットコインサービス、Paypal傘下のVenmoやWeChat Payなどが個人間送金、Paypalが個人間売買で利用されることが多い。

この辺りの分類はやり始めるとキリがないので本題に戻そう。

木村氏が狙っているのはこの両方なのだ。

個人間送金をもっと便利にしたい

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「まず最初はサービスやチケット、物販あたりから扱っていくつもりです。メルカリのようなC向けというよりはスモールBやビッグC(※個人事業主)あたり。ただ、もうちょっと個人に向かっています」(木村氏)。

彼の考え方はこうだ。最初に個人事業主やスモールビジネス向けに簡易の決済サービスとしてAnyPayを提供し、例えば塾だったり個人レッスンのような現場で使える気軽な「スマホの小さなレジ」を提供する。こうやってアカウントが拡大した後によりC向けの個人間送金のようなサービスを展開する。

彼は話の中でBASEのやり方を評価していた。初期にコマースで利用できるアカウントの範囲を拡大させ、その後にその店舗で使える決済サービス「PAY.JP」を立ち上げた。IDひとつで利用できる店舗が多ければ利用者は自分のIDにクレジットカードを紐付けるメリットが明確になる。この辺りはAmazonのワンクリックが証明してくれている。

AnyPayがメルカリのようにアカウントに決済した資金が貯められるような仕組みになっているのも、その先を見据えてのことなのだそうだ。

国内の個人間送金サービスの課題

海外勢でのスマホ個人間送金サービスで有名なのがVenmoだ。手数料無料で個人間送金できることや、デビットカードとソーシャルセキュリティー番号ですぐに利用が開始できることから、クレジットカードを持てない若年層にも所有が広がった。国内ではLINE Payやビットコイン・ウォレットが個人間送金を実現している。

急成長中の個人間送金サービス「Venmo」、米若者を惹きつける理由とは?

しかし国内でこういった個人間送金サービスを提供しようとすると、出金時の個人認証に手間がかかったりと即時利用というわけにはいかない。ビットコインはそもそも利用できる通貨との換金が必要になるし、AnyPayも国内に限って言えば、この条件は変わらない。

しかし木村氏が現在拠点としているのはシンガポールだ。彼も取材の中の会話で、日本だけを見ているわけではないと話していた。

因みにアジア圏での決済サービスで先行するOmiseは先日、大型調達に成功している。その取材記事にも書いたのだが、アジア圏は欧米に比べて各国での決済インフラの状況が異なる。クレジットカードが使いにくかったり、銀行口座そのものが普及していない国もあるということだった。

AnyPayはまだ始まる前の段階だ。

今ここであれやこれや書いたとしても、すべては机上の空論にしかならないだろうが、視野を広げることでチャンスは見えてくるかもしれない。少なくとも彼との会話で私はそう感じた。

連続起業家の挑戦

木村氏を取材しながら、私は3年前に取材した山田進太郎氏のことを思い出していた。皆が注目する中、世界一周から帰ってきた連続起業家が選んだ次の挑戦は「フリマアプリ」だった。

当時、もうすでにFrilをはじめとするサービスが先行しており、しかも飽和気味な状態だ。もちろんヤフオク!やeBayなどの巨人たちも存在しており、相当なチャレンジだなと思ったのを覚えている。

しかし今、その彼らが立ち上げたメルカリは米国で奮闘している。何度もスタートアップを経験している彼らだからこそ見えている世界があるのだろう。

「お金が動く時に逆向きの対価が動くところ。みんなが困ってる分野をやっていきたい」。

彼の新しい挑戦はこれから始まる。

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