翻訳効率化ソリューションの八楽、コニカミノルタや音声認識大手ら大企業3社と資本業務提携——〝翻訳エンジン最適化〟に注力

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左から:八楽の COO 湊幹氏、CEO 坂西優氏、開発リード Jonas Rydenhag 氏

東京を拠点とし、翻訳ソリューションを提供するスタートアップの八楽は5日、コニカミノルタ(東証:4902)、アドバンスド・メディア(東証:3773)、ソニーネットワークコミュニケーションズ(旧称:ソネット)と資本業務提携したことを明らかにした。3社からの調達金額については明らかにされていないが、「シリーズA〜シリーズBラウンドの間(関係者)」程度とのこと。公表されている限りにおいては、同社にとって、2013年5月の約1.1億円の調達以来の外部資金の注入となる。

2009年に設立された八楽は、翻訳最適化エンジンを備えたプラットフォーム「YarakuZen(以前は、WorldJumper として提供されていたものも統合)」を2014年9月に正式ローンチしている。YarakuZen では、翻訳元原稿に頻出する言葉をユーザ単位でデータベース上に蓄積することで、クラウドソーシング翻訳や翻訳者を使った翻訳作業のスピードアップとコストダウンを図ることができる。

今回の業務提携を受けて、コニカミノルタとは、同社が世界5拠点に展開する新規ビジネス開発組織「Business Innovation Center(BIC)」と協働し、両社が持つ得意分野を掛け合わせ、多言語ドキュメントソリューションの開発に着手するとのこと。また、音声認識ソリューション最大手のアドバンスド・メディアとは、音声認識技術と翻訳を掛け合わせたサービスの開発を進める。

ソニーネットワークコミュニケーションズは、個人向け ISP の So-net だけでなく、法人向けの ISP や SI-er 業務にも強みがあり、八楽の潜在的法人顧客からのカスタムメイドなソリューションニーズのプリセールスやインプリを支援する。具体例を挙げると、企業から寄せられる、自社システムと YarakuZen との API 連携や、セキュリティ・コンプライアンス上の理由から八楽のエンジンをオンプレミス環境で使いたい、などのニーズだ。

八楽の COO 湊幹(みなと・つよし)氏によれば、YarakuZen のユーザ業種は現在、IT 企業、メーカー、小売業などが多いとのこと。IT 企業は YarakuZen のような新しいツールの導入に積極的であり、世界展開するメーカーは、海外現地法人とのコミュニケーション、マニュアルや議事録作成などに利用、小売業は日本へのインバウンド関連需要が多いのだという。

CEO の坂西優(さかにし・すぐる)氏は、今回の大手企業との取り組みを通じて最も注力したいことは、「翻訳エンジン最適化(TEO:Translation Engine Optimization)」だと語った。その詳細は明らかにされなかったが、筆者の解釈では、3社との提携を通じて、デジタルテキスト以外のさまざまなフォーマットで翻訳需要を取り込み、翻訳の処理量や分野を圧倒的に拡大することでエンジンが持つ人工知能に磨きをかけ、いずれ人手をほぼかけずに完成度の高い翻訳をアウトプットできるようなしくみを目指しているのではないか、と思われる。

八楽のチームメンバーは現在19名だが、今回の資本業務提携を受けて、エンジニア・営業・マーケティングを強化する必要が生じるため、人材確保にも積極的に取り組みたいとしている。

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