SXSW 2018 Interactive現地レポート——ドイツのプレゼンス強し、イーロン・マスク兄弟が登場、井口尊仁氏が新製品「Transparent」を披露

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.3.13

本稿は、SXSW 2018(サウスバイサウスウエスト 2018)の取材の一部である。

SXSW Interactive がテキサス州オースティンで始まった。この街に来るのは、もはや帰って来た感さえある(そして、イベント半ばでこの街を後にするときには、後ろ髪を引かれる思いを禁じ得ない)。バンコクで別の仕事があったので、現地入りできたのは SXSW Interactive の2つ目だったのだが、これまでに見聞きできた内容の一部をまとめてみた(文中の日付はすべて現地時間)。

Panasonic House

Sylphid

目抜き通り 6th St. にあるバー Parkside を例年借り切って開かれる Panasonic House では、同社の新規事業「Game Changer Catapult」から、歯に関する製品がいくつか展示されていた。水と二酸化炭素を使った歯をホワイトニングできる「Sylphid」という歯ブラシは、好みのフレーバーのついたカートリッジをセットして使う。化学物質を使っていないので生体にかかる負担が無い。機能としては即効性があることも確認できているが、商品化はまだ少し先のことになりそう。

Sylphid

こちらは同じく、Panasonic が開発しているペットのための IoT 歯ブラシ「Pecoral」。将来的には、Pecoralや他のペット用 IoT デバイスから集めたライフログデータを活用して、消耗品の自動配達、ペット保険の紹介、しつけ教室の紹介など、飼い主やペットに最適な商品やサービスを提供していく予定だという。

Pecoral

Ofo(小黄車)のソーシャルバイクシェアリング?

Ofo(小黄車)の〝動くバー〟

昨年アメリカに進出したバイクシェアリングの Ofo(小黄車)は、移動式のバーを街中で走らせていた。各席を見ると、ペダルがついているがわかる。どうやらペダルを漕ぐと発電され、皆の力でこの車を動かすことができるらしい。Ofo ではこの移動方法をソーシャルバイクシェアリングと呼んでいた。プロモーションとしては最高だが、実用性はよくわからない。

ドイツのプレゼンス

トレードショーに出展されたドイツパビリオン

Austin Convention Center の中で開催されているトレードショーで、今回最も目立っている国はドイツではないだろうか。スタートアップのみならず、ドイツの中小企業のブースが数多くひしめき合う。ダウンタウンにある BARRACUDA というバーは、イベント期間中「GERMAN HAUS」と名を変え、連日朝から夜までドイツのピッチイベントやトークセッションが開催されている。

GERMAN HAUS @ BARRACUDA。ドイツのイベント会場だが、振舞われるのは地元テキサスのビール「ローンスター」

朝の9時台から無料でビールが振舞われているのは、オースティン広しと言えど、ここだけではないだろうか。GERMAN HAUS の最終日には、ドイツではなくオーストリアのスタートアップや政府の企業支援組織 Advantage Austria がイベントを広く模様。もはや、ドイツがオーストリアを侵食している感じ。

日本パビリオン

日本パビリオン

日本のブースも見てみよう。日本パビリオンで、最も目立つ場所にブースを確保するのは電通である。今年は、4つほどのコンセプトプロダクトが展示されていたが、中でも目立っていたのは「Sushi Teleportation」と「Lunavity」だ。

Sushi Teleportation

Sushi Teleportation は食べ物の構成要素を分析し、それをデータベース化し、そのデータを送信することで、場所を問わずに食べたいものが食べられるというコンセプトだ。フードレプリケーターが実現すれば、名店の寿司屋の板前が握った寿司を、科学的に再現することは可能になる。TEX-MEX 料理が幅を利かせるオースティンで、ミシュランの五つ星の寿司屋の寿司が食べられる日も近いかもしれない。

Lunavity

Lunavity は、重力を無効化する(Luna という接頭語がついているところから想像すると、地球の6分の1の重力である月の状態を再現しようということかもしれない)パワードスーツだ。コンピュータ制御の16個のローターによって、驚くほどの跳躍力を手に入れられるというもの。こちらもコンセプト展示なので、実際に商品化された製品を試せるのは、まだ先のことになりそう。

AI SILK

シルクそのものを染色の技法で導電性繊維にする「AI SILK」。着衣そのものがセンサーになるので、医療用電極をつけたときの不快感や炎症の問題が解消できる。そのまま洗濯することもでき、洗濯を繰り返しても機能性がほとんど劣化しないのが特徴。リハビリやエクササイズにおけるバイタルデータ取得などでの用途が期待できる。東北大学工学研究科のバイオロボティクス分野からのスピンオフスタートアップだ。

DOKI DOKI の井口尊仁氏(右)と、Transparent の開発を支援する ISID アメリカの藤森一矢氏(左)

Doki Doki の井口尊仁氏は、SXSW にあわせて新プロダクト「Transparent」を出展した。Doki Doki はかねてから、音声をコミュニケーションの媒介として使う「Ball」を提供しているが、Ball が音声の入力側の表現方法であるとすれば、Transparent は音声の出力側の表現方法と考えればわかりやすいかも。コミュニケーションをする上では、音声でのやりとりが最もストレスがかからずラクだ(事実、こうして文章を書くのは大変で、忙しい物書きは口述筆記に頼ったりする)。

しかし、音声ではディテールやリファレンス情報を伝えることができない。メッセンジャーやメールでのやり取りでは、リファレンス情報として URL を付記することが常態化しつつある昨今、会話の中に同じようなエクスペリエンスを取り込もうというのが Transparent の試みだ。話している言葉を音声認識し、そのコンテキストに見合った情報を画像などのわかりやすい形で画面に表示されるもの。相手が言ったことがわからず、スマートフォンで調べ物をする必要性はへらせられるかもしれない。現在はプロトタイプだが、数ヶ月後にはβ版を試すことができそうだ。

SXSW Accelerator

SXSW ACCELERATOR 表彰式

11日(日)の夜には、パネルセッションなどと並行して、バーティカル別に予選が開かれていた SXSW Accelerator のデモデイと優勝者の表彰が開かれた。イーサネット発明者にして、現在テキサス大学オースティン校でイノベーション分野の教鞭をとる Bob Metcalfe 氏と、彼の妻で、自身も同大学同校で食品分野のイノベーションイニシアティブ「Food+City」のディレクターを務める Robyn Metcalfe 氏がプレゼンターに招かれた。

AR & VR、Health & Wearable、Payment & FinTech、Social & Culture、Enterprise & Smart Data、Entertainment & Content、Hyper-Connected Communities、Security & Privacy、Sports & Performance、Transportation の10部門について、それぞれの優勝者、また、ベストブートストラップ、ベストショー、スピードピッチの優勝者に、それぞれ賞金4,000ドルが送られた。部門別優勝者の詳細については、このページで閲覧することができる。

Elon Musk & Kimbal Musk

左から:Elon Musk、Kimbal Musk
Image credit: SXSW Media

Elon Musk は、10日(土)に開かれたパネルセッションに登壇したが、急遽、11日(日)に参加者の質問に答えるカジュアルなトークセッションが組まれ、お昼過ぎの開演にも関わらず、参加者は朝早くからチケット待ちの長い列を作った。

SpaceX、Tesla、Neuralink など複数の企業の業務の優先順位はどのようにつけているのか、日常は何時間くらい寝ているのか、火星に行けたら何がしたいか、など多様な質問が寄せられた。一連の内容については録画が公開されているので、そちらを参照してほしい。

セッションの最後には、Elon Musk の弟で自身も起業家の Kimbal Musk が登場。映画 Three Amigos(邦題:サボテン・ブラザーズ)の挿入歌 My Little Buttercup を Kimbal が演奏、観客が歌をうたい、それにあわせて Elon が踊るという一幕で会場は大きな拍手と歓声に包まれた。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------