在タイ日本大使館、Omise、ABEJAがバンコクで「DX Summit」を開催——日本のスタートアップが、タイ財閥に最新技術を直伝【ゲスト寄稿】

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本稿は、バンコクを拠点に、求人メディアや人事向け SaaS を提供する TalentEx で、広報を務める馬本寛子(まもと・ひろこ)氏による寄稿だ。

TalentEx に関する、これまでの記事はこちらから。


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DX Summit 参加者一同。中央に、在タイ日本大使の佐渡島志郎氏。
Image credit: Hiroko Mamoto

19日、バンコク市内にあるタイ大手デベロッパ Ananda Development 本社オフィスで「DX Summit(Digital Transformation Summit)」が開催された。在タイ日本大使館が主催し、Omise と ABEJA が協力した。DX Summit は、日本政府とタイ財閥各社が連携、日本の革新的スタートアップとタイ財閥の戦略的提携を促す「Open Innovation Columbus(OIC)」という活動の一部だ。

初開催となった DX Summit には、タイ財閥系企業約30社から50名程度、日系企業大手からは約30社から30名程度が参加。また、両国政府関係者、メディアのほか、VC からはグローバル・ブレイン CEO の百合本安彦氏や、KK Fund ゼネラルパートナーの斎藤晃一氏らも参加した。

<参考資料>

OIC は、世界で成功する日本のスタートアップの醸成、ASEAN を牽引する財閥が持つ最先端技術への需要に対しての課題を共に解決していくという目的で開始された。日本政府は両者のパイプ役を務め、マッチングからフォローアップまでのハンズオン、タイでの事業拡大に必要な資金、タイ現地の日本人起業家とのメンタリング制度など支援内容を充実させる。

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ABEJA Singapore 代表の外木直樹氏
Image credit: Hiroko Mamoto

今回の DX Summit は、タイ財閥の担当者にデジタル技術への理解を深めてもらうべく、AI とブロックチェーンがテーマ。ABEJA Singapore 代表の外木直樹氏と、Omise Holdings CEO の長谷川潤氏がスピーカーとしてセミナーに登壇した。

外木氏は、「AIとは何か?」という率直な疑問に対する説明と、従来技術には無い AI の特徴を挙げ、AI がいかに革新的な技術であるかについて熱弁した。また、実際に ABEJA が提供してきた AI を用いた事例を実践的な目線から紹介し、それらも踏まえて今後の AI 技術と市場についての考察を述べた。

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Omise Holdings CEO の長谷川潤氏
Image credit: Hiroko Mamoto

Omise が出すプロダクトの説明を通じて、ブロックチェーンの具体的な使用例が紹介された。長谷川氏は、ブロックチェーン技術の概要と特徴やメリットについて説明し、質疑応答を通じて参加者が理解を深めていた。

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DX Summit の開催を受けて、主催者を代表し、在タイ日本大使の佐渡島志郎氏は次のように語った。

タイ企業の決断のフレキシブルさと日本のスタートアップの技術やスピード感を組み合わせることでポジティブな化学反応が起きることを期待しています。

日本-ASEAN イノベーションサポートネットワーク(JAIS) [1] 会長を務める Omise の長谷川氏は、次のように述べた。

言語の壁・文化の壁・マーケットの壁などを超えていくだけで事業の仕様などが、良くなったりすることはあります。だからこそ、海外でビジネスをする時の痛みがわかる起業家としても、このようなイベントの支援などを通して現地の企業と繋がる場を提供する形でサポートをしていきたいと思っています。

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OIC に先立ち、佐渡島大使(左)がタイ首相府相 Kobsak Pootrakool 氏(右)に協力関係を説明
Image credit: タイ政府首相府

今回のセミナーを経て、タイ財閥各社の担当者もこの取り組みに対して前向きな姿勢を見せていた。

今回のイベントも、今後の取り組みに関しても非常に楽しみです。日本とタイの文化は近いので良い効果がでると期待しています。今日の講演を聞いてこれらの技術を、ロボットの分野でまずは試してみたいです。(タイ金融大手カシコン銀行の First Senior Vice President で、同行 CVC の Beacon Venture Capital で Managing Director を務める Thanapong Na Ranong 氏)

我が社では工業地帯におけるスマートシティの開発をしており、我が社が管理する工業地帯には、多くの日本企業も入っております。AI やブロックチェーン技術を利用して我が社の工業地帯のスマートビジネスの開発を加速させられそうだと思ったので、ぜひ取り入れたいです。(タイ工業用不動産大手 Amata Corporation で Chief Investment Officer を務める Lena Ng 氏)

OIC では、年内にもピッチイベントやタイ財閥と日本のスタートアップとのマッチングを実施する予定だ。


  1. JAIS の傘下には、それぞれ ASEAN 国別に、JTIS(日本−タイ)、JMIS(日本−マレーシア)、JVIS(日本−ベトナム)、JIIS(日本−インドネシア)、JPIS(日本−フィリピン)、JSIS(日本−シンガポール)といった組織がある。最初に組織された JTIS の発足背景については、この記事を参照。

 

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