筑波大学発スタートアップのBearTailが、レシート撮影によるクラウド家計簿「Dr. Wallet」を正式リリース

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dr-wallet_logo筑波大学発のスタートアップ BearTail が、レシート撮影によるクラウド家計簿サービス「Dr. Wallet」を正式リリースした。ここ数ヶ月、一部ユーザの参加によるクローズドベータ版として運用していたが、サービスの運用状態が実用ベースに載ったことから、正式リリースに踏み切った。現在は、Android アプリで利用可能だ。

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この分野には非常に多くの競合スタートアップが存在する。特に昨年以降、個人や中小企業の会計を助けてくれるクラウド型の会計支援サービスは、日本だけでも20を超えており、非常にホットな分野だということができるだろう。(英語版関連記事

従来のサービスと比べて、Dr. Wallet の特徴は、敢えてOCRを使わず、レシート内容の人力入力にこだわっているということと、会計分類を自動的に独自エンジンで行ってくれる点だ。人力入力にすることで、レシート内容の入力の正確さを99.98%まで上げられたという。筆者は、日常的にこの種類のサービスを使うことがないため、OCRの場合にレシート内容の正読性がどの程度確保されるかはわからないが、誤入力の心配がほぼ払拭できるという点で、ユーザに安心が与えられることは間違いない。

せっかくの機会なので、BearTail の代表取締役・黒崎賢一氏に頼んで同業他社サービスとの比較表を作ってもらった。予めおことわりしておくが、SD Japan が作成したものではないため、当事者の主観が反映されていることは否定しない。

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ただ、こうしてみるとわかるのは、Dr. Wallet が人力入力という一番コストのかかる運用形態を、ユーザの管理コストがかかる個人ユーザに対して無料で提供する点だ。この運用形態を見ると、SanSan の名刺管理サービス「Eight」を彷彿させる。Eight の場合は、同社の法人向け有償サービス Link Knowledge へのユーザ誘導や、会社やサービスの認知度アップの投資として「Eight」を無料提供している。”Grow first, monetize later” ということだ。

Dr. Wallet がマネタイズする仕掛けは、ビッグデータによるB2B2Cモデルのようだ。ユーザの会計情報を収集することで、ユーザを購買パターンによって分類できる。例えば、あるホテルや美容院などを定期的に利用するユーザに対して、「○○カードで支払うと○○%安くなります」というようなクーポンが提供できる。購買履歴に基づいてユーザをセグメント化して、そのニッチ層に対して、ピンポイントでプロモーションをかけられるという点では、先頃リリースされた Kanmu CLO とも似ている。大半の購買がカードで決済されるアメリカであれば、個人の購買情報のビッグデータはカード会社が手にするのだろうが、現金社会の日本においてはそうではない。ここに Dr. Wallet のようなサービスがサバイブできる余地が残されていると言えるのだろう。

BearTail は今年2月に買い物代行サービス「Amazonガチャ」をリリースしたが、商標権侵害の可能性などを考慮して、5日間でサービス終了を余儀なくされる憂き目にあった。Dr. Wallet では、ユーザ獲得にあたってのネットワーク効果とマネタイズの仕掛けが熟慮されているように思うので、この分野で大きな成功を見せてくれることに期待している。

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